誘いの泉 1
今回から森奏世界編ですよろしくオナシャス!
「あの……」
「ここが、ファウヌスの世界か……」
何か言おうとしたが遮られてしまうマノ。
平成十周年のラ○ダーが言いそうな台詞を十代後半の少女と恋人繋ぎをしながら言い放つ銀髪碧眼の自称才色兼備の不審者。
少女は握られている手を見ながら鳥肌を立てている。
それもそのはず、慣れない事をしているせいでカッコつけてはいるのに手汗びっしょりなのである。
「あの、アルハさん……」
「どうした? 手以外も密着させたい…なんてワガママh…」
「いえ、気持ち悪いので離してください」
「……よくないなぁ、そういう発言は……」
「いくら女好きだからって、誰彼構わずセクハラするのは人として見苦しいですよ? あと、手汗がヤバイほど気持ち悪いので離してください」
「……」
アルハ(の精神)に999999のダメージ! アルハは(メンタル面が)死んでしまった!
「あのアルハさん…?」
「…………」
膝をつき、巨木を抱きしめながらしくしくと涙を流すアルハ。 だが、思い出してほしい。 彼はセクハラ紛いの行動をしているという事を。
「あ、あのー……アルハさん?」
「もう、人助けやめようかな……。
こんなに酷い事を言われるなら……愛などいらぬ…救いなどいらぬッッ!」
なんということでしょう、自分のやった事は棚に上げて、自分が言われた事しか語りません。
「あの、すみません……流石に言い過ぎました……。
アルハさんの事は(ボディガードとして)頼りにしてるので元気出してください!」
「……本当に(男として)頼りにしてる? 俺のこと好き?」
「はい! (自己犠牲してくれそうなところとか)大好きです!」
「…………」
目をこすりながら立ち上がるアルハ。 よろめきながらも立とうとする彼をマノは支える。
その姿はまるで、孫娘と介護されるおじいちゃんのようだった。
「……。
クロノスさぁ……もう少し言い方無いわけ? 戦いの中で傷付いた強敵に手を差し伸べる友のようだった……的な?」
「?? 誰と会話しているんですか?」
「ああ、いや……。 ここの会話は気にしなくて大丈夫!」
「?? そう、ですか……」
地の文にツッコむアルハは、傍から見ると何も無いのに大きな声で独り言を呟いているオタクと同じなので、そういう目で見られても仕方ないのである。
(誰のせいだよっ!)
「アルハさん」
「っ! ああ、そうだった。 どうした?」
「この見渡す限り森になっているのが森奏世界なんですよね?」
「イエ〜ス! 森奏世界エリシウム。
エリシウムっていうのはエリュシオンの別称で、文明を発展させるのが常である人間からすれば、原始的な暮らしを強いられるこの世界は死んでるのも同義だからっていう嫌味で付けられたんだ」
「聞かなくても予想できますけど、それ、誰の考えです?」
「フフン……俺!σ(゜∀゜ )オレ!」
「でしょうね。 なんともアルハさんらしい身勝手な考えですし」
「イヤ〜それほどでもぉ〜……(*´∀`*)」
「褒めてないです! 自然と共に生きるのだって素晴らしい事じゃないですか」
「は? 冷暖房完備ネット完備の暗い部屋でポテチ食いながらコーラ飲んで舌打ちしながらネトゲすんのが最強だルルォ!?」
「ネットでだけ偉そうにする典型的なイキリオタクじゃないですか……」
「イキる事は素晴らしいだろ?」
柔らかい低音で囁くように言い放つアルハ。 イケメンと相まって最光だな!
などという地の文で自らのフォローをする自称イケメンで神の不審者。
彼に対してのイケメンは、いけ好かないメンズでイケメンなのだろう。
「言葉としては良い事言ってる感じですけど、意味合いとしては惨め以外の何物でもないですよ……」
「いいじゃんか! 俺みたいな上司いないのに社畜なやつはな、クソニートが憧れなんだよ!」
「もう少し憧れとして相応しいものがあると思うんですけど……」
「えー……正義の味方とか?」
「その先は地獄なのでオススメしません」
「結局ダメじゃん!」
「極端なんですよ! って、こんな会話をするつもりじゃなかった!
アルハさん、アタシの力返してください!」
「ん? ちから?」
「とぼけないでください! 赤陽世界から離れる事が出来たら返してくれる約束じゃないですか!」
「それならもう返した」
「……え?」
アルハは手汗がまだ若干残っている右手を閉じたり開いたりして見せる。
「……え、さっきのって、アルハさんが欲求不満だったから握ってたわけじゃないんですか?」
「……酷くね? 俺ってそんなに欲求不満に見えるの?」
「いや、だって、アルハさんってアタシにもそうですけど、ルイさんやステラさんを見るときイヤらしい目で見てたじゃないですか……」
「……それは、お前ら三人が下着が透けて見えるぐらいの薄着で俺の周りで動いているからだろがァァァァ!!」
「まさかの逆ギレ!? あの暑い中、アルハさんの分も片付けをしてたのに酷くないです!?」
「うるさい! こっちだって男なんだよ! 童貞なんだよ! ムラムラすんだよ!!!」
「うわぁ……清々しいけど最低ですね……」
「フフ……変態紳士…いや、変態神士と呼びたまえ!」
「そうですか」
別に上手くもない言い回しを誇らしげにする不審者に感情を振り分けるのも疲れてきたのか、周辺を散策しだすマノ。 ついでにアルハも散策中。
「何もありませんね」
「だな〜。 どっかに泉があって、そこからおっぱい丸出しの巨乳金髪碧眼美女とか出てこないかな〜」
「そんなエロファンタジーが転がってるわけ……」
「あ、泉あったぁぁぁァァァァ!!!」
「……そりゃ、泉ぐらいなきゃ、この世界の人も生活出来ないですよ」
「ちょ、ちょっとマノ、お前、ここにドボンしろ! してください!」
「はぁ? 絶対イヤです! ていうか、アルハさんが落ちれば良いじゃないですか!
今よりも心も体も性別も変わって、全ての面で美しい人になるんじゃないですか?!」
「俺が入ったら美女とイチャコラおセッセ出来ないだろうが! いい加減にしろ!」
「知りませんよ! ヤりたきゃその辺の野猿とでもヤれば良いじゃないですか!」
お互いに肩を掴み、もみ合いになる二人。
「ふんぐぐぐ……女のくせになんて馬鹿力だ……んぐぐ…!」
「伊達に七つの大罪名乗ってないんですよ……ぐぬぬぅ……!」
一進一退で押し合う二人、だが、二人は気付いていなかった。
水辺の地表が脆くなっていたことを、、、
「ん?」
「あれ?」
二人の視界が傾く。 森奏世界に異常が起きたわけではない。 単に押し合った結果として二人の体が泉へと投げ出されていたのだ。
バシャーン! 泉へと落ちた衝撃により大きな水しぶきが上がる。
「あ、ボボボボボ!」
「んぐ…!」
マノは咄嗟に息を止める。
「マノちゃん! ボボボボボボ!!助っけっボボボボボボ!!」
それとは対象的に、咄嗟にボー○ゃんになるアルハ。
「んぐっ……ん? ぷはっ! なんだ……。 アルハさん」
「ボボボボボボ!!! マノちゃん……ボボ! ルイちゃん……ボボボボボ! クロノスくぅん!ボボボボボボボボボ!!!! ス!テ!ラ! ボボボボボボボボボボボ!!! 死にたくヌァイ!!! ボボボーボボーボボ!!!」
最後だけ鼻毛を使って戦うcv子安○人なキャラの名前を言った気がしたが触れないでおくべきだろう。
「いや、アルハさん立てますから! 水深50センチぐらいでどうやって溺れるんですか!」
「ボボボ! ボ…?」
マノに言われ、しっかりと体を伸ばすと、普通に立てることに気づく。
「さ、行こうか!」
「いや、何を爽やかに無かった事にしてるんですか。 さっきまでマノちゃん助けて言ってたじゃないですか」
「過去は失われるものだ、明日の事を考えようZE!」
「たった今起きたことなんですけど……」




