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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
二章 赤陽世界編
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傲慢に巣食うモノ 1

 星明が展開した聖奥結界が消えていく。

 彼の意識が失われ、空間を維持し続ける事が困難になったためであろう。

 完全に消えると、アルハ達は天照城の一室へと移っていた。


「あれ? アタシ達、空に浮かんでいた霧みたいなところに飛び込んで行きましたよね? 何で部屋の中に……」

「ああ、それは……」

「そんなの簡単ですよっ」


 アルハの言葉を遮るようにステラは二人の間からひょっこりと顔を出す。


「うわぁ!」

「おお!?」


 驚く二人など気にも止めずにアルハの両手を包み込むように握りしめるステラ。 否、握り潰す程度に力を込めるステラ。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!」

「それは、アッくんと私の愛の力なんです…!」

「愛の力……」

「その愛の力って、(物理)が最後に付いてるだろ!」

「流石アッくん! やっぱり私達、運命の赤い糸で繋がってるんですね!」

「え、何が、どうしてやっぱり!? ゴメン、やっぱりの使い方間違えてると思うんだ。 だから、このおテテを離してくれ…よ……んぐぅ〜〜〜ッっ!!」


 しかし、オテテは離れません。


「も〜うっ! 照れなくていいんですよ?」

「あはっ☆ これの…ぐっ…どこが…んぐぐ…照れてんのかなぁ?」

「あの、アルハさん……。 それで、星明さんはどうしましょうか?」

「ぐぐぅ……え? 星明? う〜ん……エピリスへの耐性もそろそろ付くだろうし、その前にラドジェルブで浄化からの傲慢の力を封印しとくか。

 って事だから……ステラちゃん、手を離してくれないかな〜?」

「え〜……アッくん前もそれで逃げたじゃないですか〜ぁ。

 だから嫌です」

「俺とこの赤陽世界の平和、どっちが大事なんだよ……」

「もちろんアッくんです!」

(創造神はお前を管理神にした事を後悔するよ……)「俺を大事にしてくれるのは嬉しいけど、せっかく一緒になれるのにギイムで幸せな家庭を築けないのは悲しいなぁ……なんて……」


 その場しのぎで喜びそうな言葉を並べるアルハ。 とは…いえ、相手は神。 そんな都合の良い言葉に引っ掛かるほど、、、


「アッくん…! そこまで考えていてくれたんですね!」


 引っ掛かったようだ。


 ステラが手を離すと、アルハは部屋で意識を失い倒れている星明の手に触れ、目を閉じる。


「っ……」


 数秒後に瞼を開くと、アルハの瞳は黄金色に染まっていた。


「…………」

「…………」


 その一連の行動を静かに見ていたマノとステラだったが、アルハの瞳の色が変わりはじめてからマノがソワソワとしだす。


「どうしたんですか?」


 小さな声でステラが問う。


「えっと……アルハさんのあの目の色って……」

「ああ……あれはアッくんが本気(マジ)パワーで能力を使っている時にああいう瞳の色合いになるんですよ」

「まじぱわー……」


「…………っ! 二人とも離れろっ!」

「っ…!」

「離れる…って……?」


 ブンッ。

 風を切る音の直前、ステラに押し倒されたマノ。 横目に見えた光景には鮮血が舞っていた。


「あっ……ステラさん!?」

「うっ……」

「ステラっ!」


 マノを庇ったステラは腕の肉を削ぎ落とされ、白い塊が露出している。

 駆け寄ったアルハは急いで回復魔法を使おうとする。


「ダメです……」

「っ…」


 しかし、ステラはアルハの手を払い、それを拒絶する。


「アッくん……。 いくら貴方でも、この短期間でそんなに回復魔法を使ってしまったら体への弊害が起きかねません……。

 私には構わず、傲慢の悪魔を……」

「その通りだ、異邦の者よ」

「っ! テメェ……久導星明じゃないな」


 喉が擦り減ったような声でアルハを人外認定をする星明。

 その目は虚ろで、毛髪や指の先端部分は触手のようにウネウネと動いている。


「マノ、ステラを連れて出来るだけここから離れろ」

「は、はい……」(ど、どうして……ステラさんが……)

「理由は簡単だ、今の星明には神格があるってだけだよ」

「……え?」

「ステラを負傷させた理由だろ? んな事に頭使ってないで早く行け」

「は、はい!」


 ステラを抱え、天照城下町へと飛行するマノ。 だが、彼女は不思議に思ったに違いない。


(アルハさん、どうしてアタシの考えてること分かったんだろ……)



 ステラとマノが去り、天照城に残ったアルハと星明は、互いに臨戦態勢を取る。

 星明は天照城に聖奥結界の霧を再度発動し、アルハは魔力で生成した二つの剣を手にしている。


「クックックッ………良いのか異邦者?」

「あ? 何がだよ」


 右手の剣を肩に担ぎながら訊ねる。


「お前一人では時間稼ぎをする者がいない状況で勝算があると思っているのか?」

「ああ、そういうことか。

 安心しろ、オレの女に手を出したヤツには手加減なんてしない」

「手加減なんてしない。 か……クックックッ……。

 だが、加減が無くとも、支配者たる我には到底及びはせん……」

「支配者……やっぱクトゥルーか。 まあ、昨日のベルゼブブの偽物を見たときから予想はしてたけど……」(ちょっと面倒だな…)


 こちらが動かず様子見をしているのを理解してか、クトゥルー神話の支配者は一向に攻撃を仕掛けない。


「クックックッ……」

「さっきからクックックってうっせぇなぁ……。 え、クトゥルーだから? だとしたら安直過ぎてセンス無いぞ?」

「…………」

「………」(あ、黙っちゃった)


 どうやら星明に取り憑いているクトゥルー神話の支配者は、こちらの発言が不快に感じたのか笑うのをやめてしまったらしい。

 これって人権侵害でイジメになっちゃう? そこまでの事はした覚えが無くてよ!?


「何故だ……」

「……?」


 脈絡の無い問答に首を傾げる。


「何故に我が眼前の異邦者は我が笑声にて狂わぬのかと問うている」

「……あー、そういやクトゥルーの神って、人間が見たら精神崩壊するんだっけ? わー、怖い!」

「ふざけるな。 異邦者、キサマ何者だ?」

「精神崩壊しないなら人間以上って事なんじゃないか? あ、オレからもしつもーん。

 お前、旧支配者じゃないな」

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