ギイム 4
「んちゅ……れろ……はむっ……んぅちゅ…………」
「んんぅ……ん……」
突然の事に驚きながらもステラのキスを受け入れ、必死に耐えるマモン。
「…………」
アルハはそんな二人を少し離れた場所から呆れ顔で見ている。
「ぷはっ……はい、おしまいっ♡」
「ブハッ…!はぁ……はぁ………ビ、ビックリした……」
「うふふ……。マモンちゃん、みたらし団子の味がしましたよ〜?」
「へっ? ああ……来る時に食べていたので……」
「それで、気分はどうだ?」
「あ、……あれ?」
「うふふ……どうやら効果アリみたいですね〜」
「そっか、じゃ、さっさと部屋に行くか」
そう言って歩き出すアルハとステラ。
(苦しくない……それどころか、この建物の中にいた方が心地良いぐらいに……)
「マモン? まだ、調子悪いのか?」
「あ、いえ! 今、行きます」
「ふふ……久しぶりのキスだったのでちょっと張り切っちゃいました!」
「昔から思ってたけど、ああしないと解決できないのか?」
「いいえ〜、体を密着させるだけでも効果はありますよ?」
「じゃあ、やる必要無いな!」
「あー…昔、チューした事、まだ根に持ってるんですか〜?」
「いや、まあ、普通なら、こんな綺麗な女神様からキスされたら、目の前のその幸せ以上にその先の不幸を心配するぐらい嬉しい事なんだろうけど、あの時は身ぐるみ剥がされてパンイチ状態&媚薬効果のあるお香焚いてる部屋での事だったからな、恐怖以外の何物も感じなかったわ」
「どんな状況ですか、それ!?」
たまらずツッコミを入れるマモン。
「ずっと昔、この淫乱女神が俺に一目惚れして既成事実を作ろうとしたって話だよ」
「ゼッちゃんとかは処女神とシてるんですし良いじゃないですか!」
「アイツはそういう神なの。まさか、いくら世界が違うからって処女神とすら襲うとは思わなかったけど……」
「ゼッちゃん?」
「ゼウスっていう女神様の事ですよ〜ぉ。
ギリシャ神話においては寝取ってばっかりのクズな男の神とされてますけど、この世界では少年のような見た目をした女神なんです」
「へぇ〜……」
「アテナたちとのアレもゼウス自体は拒んてたけどな」
「まー、アッくんそっくりの見た目ですからねぇ……同性でも襲いたくなるのも分かります☆」
「本当、アイツには申し訳ない事をしたと今でも後悔してるよ……」
「それで、話を戻しますけど……マモンちゃん、体調はもう問題ありませんか?」
「あ、はい、おかげさまで」
「ふふっ…それは良かったです」
「一体、アタシの体に何をしたんですか?」
「何をしたかと聞かれたら、オーラルセッk…」
「口を通してステラの魂の一片をお前に譲渡したんだよ」
「魂!?」
魂の譲渡。
それは、異能力が存在するこの六大世界においても非常に希少な能力なのである。
「…………」
自分の口から説明したかったのか、ステラは不機嫌そうに頬を膨らませ、ジットりとした目でアルハを睨む。
そんなステラには目もくれず、アルハは続けて説明をする。
「魂の譲渡。
僅かでもその魂を譲り受けた者は、等価交換として自身の肉体と魂の全権限を相手に譲渡しなくてはならない。
だから、お前が今使っているミオの肉体と、お前の魂はお前じゃなくステラの判断で動かす事も可能になるんだ」
「それってつまり、アタシが強欲の力を取り戻しても……」
「は〜い。私の権限が無くちゃ使えませ〜ん☆
そしてお部屋にとうちゃーく!」
「そ、そんなぁ……。
っ……………!」
ハメたな!と言いたげにアルハを睨むマモン。この男、常に女に睨まれる運命にあるのだろう。
「その代わりメリットもあるんですよ〜」
「……メリット?」
半ベソをかきながら反応するマモンを部屋に通し、お茶を用意しながら説明をするステラ。
「魂の譲渡は主従契約の側面もある能力で、例えばマモンちゃんが戦いで傷を負った場合、その半分を私が受け持ったりする事も出来るんですよ?」
「え、どういう事…なんですか?」