ニルプス 2
「いつから気付いてた」
金髪碧眼の幼女の姿をした神が問いかける。
「最初っから気付いてる。 つーか、お前のその容姿で気付かないほうが無理だろ。
お前こそ、何でクソガキのフリしてたんだよ」
「幼稚なガキでいれば、兵士どもは手を抜くんだ」
「傍から見ると捨て身のギャグだったぞ」
「やめろ、それ以上何も言うな。 言ったら殺す」
助けに来た相手に対してこの発言……。 間違いなくオーディンである。
月光世界二代目管理神オーディン。
創造主含む第一世代の神の一体であり、二大創神を除けば最も古くに生まれた神である。
普段は力のランクを落とし、人としてニルプス王国の王ルイ・ニルプス・ノイドとして月光世界を見守っていたはずだが……。
「なんで国を挙げてお尋ね者みたいになってるんだ?」
「……貴様が動く十日ほど前のことだ」
オーディンが重い口を開く。
「嫉妬の悪魔レヴィアタンが邪神復活のため、封印の鍵となる王の権限を私から奪わんと襲撃してきたのだ。
私は魔剣の使徒と共にレヴィアタンを影の月光世界に封印する事に成功した。
……だが、レヴィアタンには仲間がいた。 強欲を司る悪魔マモンが……。
私はマモンに不意をつかれ、王の権限を奪われ、今に至るという事だ」
「え、ダサ」
「やめろ」
ダサとは言ったが、相手がレヴィアタンなら仕方がないだろう。
あの悪魔とこの世界は相性が良いし、人としての力しか扱えない今のオーディンもといルイでは封印が限界。 そこから別の悪魔との連戦はほぼ不可能だ。
「じゃあ、扉を隔てた先の玉座の間で踏ん反り返ってるのが」
「強欲の悪魔、マモンだ」
「マモン……か」
「? 妙に歯切れの悪い言い方だな」
「いや、なんか……違う気がしてさ」
「違うだと?」
先程までとは打って変わって年不相応な険しい顔をするルイ。
「なんかさ、色々混じってる感じなんだよ」
「ワケが分からんな。 私には強欲の悪魔としてしか……」
「あっそ。 なら、そういう事にしとくか」
「いい加減だな」
「そんな事考えるよりも国の奪還が優先だと思っただけだ。 ほれ!」
ルイに手を差し伸べる。
「?」
分からずながらも手を差し出すルイ。
「!? これは……」
「近衛の連中は俺が止める。 だからお前は、一発マモンに決めてやれ!
あ、殺すのはダメだからな?」




