璃失選択 1
「姉弟の絆って言ってもどうやって?」
「飯島瑠樹がベルフェゴールに願ったのはお前の幸せだ。
それは裏を返すと、お前が不幸だった事を示している。
だから、その記憶を書き換える」
「なるほど?」
俺の提案に対して端切れの悪い返答をする璃空。
「噛み砕いて言えば、俺の力でお前を飯島瑠樹の記憶の中に飛ばして、お前という存在を消すって事だ」
「それってつまり……」
それはつまり、飯島瑠樹は飯島璃空という弟の記憶が無くなり、弟のためにベルフェゴールに願う必要が無くなるという事。
当然、今、ここにいる彼女がどうなるかは分からないが、現状を打破出来る可能性はある。
「……無理にやれとは言わないが」
「いえ」
「っ……!」
言葉を失った。
「凄く良い方法です!」
なんの迷いも躊躇いもなく、場違いと思えるほどの爽やかな表情で璃空は賛同した。
「……そうか」
「はい! それが成功すれば、この状況も打破できそうです。
でも、どうして記憶に入るのが僕なんです?」
「縁のある人間なら共有している記憶も多く、記憶から異物として弾かれる可能性が低い。
だから、弟であるお前の方が適任なんだ」
「なるほど、今度は完全に理解しました」
「邪奥解放……!」
飯島瑠樹の得物が再びこちらへ向けられる。
「お前が記憶の中に入ってもヤツは動きを止めない。 それどころか突然、目の前から消えればもっと酷くなるはずだ」
「わかりました、時間をかけないよう善処します」
「そうしてくれ。 聖奥解放、メイルジョン」
手のひらに集めた光の魔力を璃空の額に当てる。
「ヤツの邪奥は俺が抑え込む。 だから、璃空はヤツの頭に頭突きする勢いでぶつかってくれ」
「っ……」
俺の言葉に首を縦に振る璃空。
「今度こそ終わらせる……死へと誘う花の雨!」
「聖奥解放……」
彼岸花の形をした緋色の魔力が、こちらを討たんと強襲する。 しかし。
「!?」
聖奥ナイトオブセイバーの力を全て取り込んだ俺の剣は、その一切を斬り伏せる。
「騎士剣成」
「く……ッ! まだ、攻撃は終わってない!!」
飯島瑠樹は続け様にリコリクスレインを繰り出す。
「行くぞ、璃空!」
「はいっ!」
二人同時に飯島瑠樹の懐へと接近する。
「死ね……死ね死ね…………死ね死ね死ね!!!!」
リコリクスレインは発動する度に命中精度が落ち、一撃の威力が上昇している。
周りへの被害を考えると、こんな特攻が正攻法とは言えない。
が……。
「っ!」
既に1メートルも無い間合いに攻撃の手が止まり、後方へと下がろうとする瑠樹。
「はぁァァァ!!」
ゴッ!と短く鈍い音。
瑠樹よりも先に璃空の頭突きが彼女の頭へと直撃したのだ。
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