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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
五章 水明世界編
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幕間 第一世代の神

 俺、由利、璃空の三人は一度腰を落ち着けるために二階へと上がった。

 そして、マノが布団で身をくるめている隣のベッドに寝かされている酒場の店主の事情も含め、由利から事のあらましを聞いた。


「やっぱりいたのか、あの二人」

「うん……。 クロユリさんが守ってくれたおかげで私はなんともなかったんだけど、店長さんがセーラー服の女の人に……」

(姉さんが……)


 由利の言っている相手が飯島瑠樹である事を悟った璃空の表情が陰る。


「……なるほどな。 で、リリラクブが言うには半身が別にあると……」

「うん。 アルハさんに聞けば分かるって言ってたんだけど……」


 なんという雑さ加減……。 まあ、でも……。


「そうだな、大体分かった」

「ほんと!?」

「おう。 だから、もう由利が心配する必要は無い」

「それで、この店長は何者なんだ?

 俺が見つけた時には息が止まっていた。 なのに、少し時間経ってから再度確認をしたら、僅かに息を吹き替えしていた。

 これは、明らかに普通の人間じゃないはずだ」


 志遠が疑問に思っていた事を投げかける。


「ざっくり解説するなら、このオカマスターは管理神の半身だ」

「管理神だと?」

「ルイさんやステラさんと同じってこと?」

「そうだ。

 ただ、決定的な違いとして、オカマスターには神の力が一切無い。

 ルイや俺は人間態でもランクを落としたグングニルとか神皇の瞳みたいな神の異能力を使えるけど、オカマスターは正真正銘の人間。 異能力は一切備えていない」

「だけど、それじゃ息を吹き返すのは尚更おかしい」

「そこが特殊なんだよ。

 オカマスターの半身設定は力を分断するためとかじゃなく、管理神が自身を不完全な状態にしたかったからなんだ」

「不完全な……」

「状態……?」


 頭の上に?マークを浮かべる志遠と由利。


「水明世界の管理神は第一世代の神だからスゲェ強いし、特別な力がある」

「そういえば水明世界に来てすぐの時にもそんな事を言ってたな。 何なんだ、第一世代って」

「第一世代ってのは、創造神自身を含めた最初期から存在した神の事だ。

 アフラ・マズダ・スプリウム、グラン・クロノス、オーディン、ゼウス、ルナ、ティアマト、イザナギ、イザナミ、シヴァ、ラーの十神が第一世代とされてるな」

「異なる神話で語られる神が一堂に会しているのか」

「神様が一つの神話だけしか登場しちゃいけないなんてのは人間の勝手な憶測だろ? ましてや、そんな事を言うと、創造神がアフラ・マズダ単体なのも可笑しな話になる」

「それもそうか……」


 渋々納得する志遠。 彼の元いた世界とは神の在り方がかなり異なっているから当然といえば当然だろう。


「……話を戻すぞ。

 特別な力ってのは六大世界を管理したり、邪神の封印を担ったりする力の事な。 んで、今はその邪神の封印を解くために悪魔連中が管理神を狙っている。

 普通だったら神に劣る堕天使がどうやって管理神を害するんだって思うだろうが、今のアイツらは違う」

「支配者の権能か……」

「そ、これは神々も予想外だった。

 まさか悪魔の後ろ盾に封印されてるはずのアザトゥスがいたなんて……予想外が過ぎる。

 権能を得た悪魔達は、月光世界、赤陽世界、森奏世界の封印を次々と破っていき、残りの封印は半分まで減った。

 神々の戒律というクソみたいな決まり事のせいで、人間態として戦ったオーディン以外は神ではない者を危害を与えられないしな」

「そうか……。

 だから、水明の管理神は自らの半身を造りあげ、自分を不完全な存在にしたのか」

「さっすがしおんきゅん! 境界の守護者と言われてるだけあって理解力がタカシくん!

 ま、ティアマトの考えとしては凄く良かった。 が、正直、相手が悪い」

「どうして? ティアマト様が人間の状態なんだよね?

 悪魔さん相手でも……」

「そ。 人間の状態だから悪魔だろうが過度な干渉もモーマンタイだ。

 でも、俺が悪いって言ってるのはベルフェゴールじゃない」

「バアルとかいう悪魔の事か」

「イエ〜ス。

 俺の記憶において、バアルという悪魔は確かに存在した。 でも、あんな見た目じゃなかったし、アイツが町中に出した黒霧が俺のラドジェルブで浄化しきれなかった。

 それに、最も違和感を覚えたのはマノだ」


 俺の言葉でビクッ!と体を震わせると、顔だけを出し、こちらを見るマノ。


「ア……アタシですか?」

「璃空の話によると、お前はバアルを追って、その後にビビリ散らしてんだろ?」

「…………はい」


 気まずそうに視線を逸らす。


「この世界で最も強い悪魔が大罪。 そして、それを抑制できるのが美徳の聖者だ。

 俺の考えが間違いじゃなければ、マノは純潔の聖者に該当するはずだ」

「じゅんけつ?」

「汚れの無いって事だな。 だからこそ、色欲の悪魔アスモデウスはマノの容姿に惹かれ、マノの肉体を奪った。

 ま、これは追々話すとして、ここで理解してほしいのは悪魔の中で最強なのが大罪持ちの悪魔で、マノはソイツらの異能力にすら耐性を持ってる事だ」

「……あれ? アルハさん、でも、マノさんはバアルさんに……」

「だな。 だから、そういう事だ。

 バアルと名乗っているあの悪魔は神なんだよ」

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