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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
五章 水明世界編
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バアルのイタズラ 4

「僕の……幸せ……。 どうして姉さんがそんな事を?」

「……本気で言ってるのか?」

「? すみません……アルハさんが何を言いたいのかが分かりません……」

「……」


 飯島璃空は自分の体が姉のスペアとして利用されている事を理解していなかった。

 俺が璃空を守ろうと飯島瑠樹を殴り、彼女に触れた時、彼女が人として生きてた時代の記憶を見ることが出来た。 その記憶では……。


「お前は、両親が営む病院で誰にも生きてる事すら知られず、ただ姉貴の代替品となるためだけに生かされていたんだぞ?」

「? そんなの……当たり前じゃないですか?」

「!」


 否、理解はしていた。 が、それをおかしいと認識する事が一度も無かったのだ。


「僕は姉さんの弟だから、姉さんのために全てを捧げます。 それのどこがおかしいんですか?」

「お前……」

「でも、僕の両親の病院だったんですか……」

「……え?」

「あ、いえ……。 僕、お医者さんに生まれた時から家族は姉しかいないと言われて育ったので、両親は亡くなっているとばかり……」

「…………」


 飯島璃空という人間は秘密裏に生かされていた人間だ。

 そして彼が一度目の人生を終えるまで居たのは両親の病院……。 なら、璃空にその話をしたという医者は……。


「あれ? アルハさん、何か見えますよ!」

「えっ?」


 見えてきたのは亀裂。 そこからは光というか熱が発せられて……。


「璃空、横に飛べ!」

「ッ!?」


 俺の言葉から間もなく、亀裂を埋めるように青紫色の炎が噴出される。

 璃空が発見し、俺が熱の正体に気付けたお陰で互いに怪我はしなかったが……。


「この炎って……」

「フェニックスの炎だろうな」


 熱量でいえば、赤陽世界で新支配者を名乗るライレブに対し使用した聖奥、ポイニクスブレイズと同等。

 シャリドで防ぎながら亀裂へ接近する事は可能だが、そこからどうやって外へ出るかまでは思い付かない。

 天上の連中にバレるのを覚悟で神皇の瞳を使おうにも、不安定なこの異空間で神の力を最大限に発動しようものなら、どんな被害が起こることやら……。

 それに今は璃空もいるし、無茶をして迷惑をかけるわけにはいかない……。


「璃空、一応なんだけどさ……」

「はい?」

「たとえば、お前あの炎を相殺というかぶち破るぐらい高威力の聖奥って使えたりする?」

「そうですね……出来なくはないかと」

「あー……やっぱ無…出来んの!?」


 予想外の返答に璃空へと詰め寄る。


「は、はい……水属性なので炎なら相性的には有利だと思いますし……。 ただ、魔力を充填させるのに時間がかかるし、弓矢の聖奥なので直線の相手にしか屠れないので普段はあまり使えないんですけどね……」


 あはは……と、苦笑する璃空。 でも、こちらとしてはありがたい。

 フェニックスは俺達をここから出さないためにバアルが残していった可能性が高い。

 そして、そんな事をしてまで時間稼ぎをするのには別の目的があるからだろう。 どうせ、管理神をあーだこーだしようと画策しているんだろうが。


「発動する魔力は足りてるか?」

「はい、大丈夫です」

「よし、なら、俺があの炎を正面から聖盾魔法で防ぐ。

 その間に璃空は最高威力の聖奥の準備をしてくれ」

「はい!」


 異空間に悪影響を与えないように力をセーブしながら神皇の瞳を使うのはかなり面倒だ。 が、俺が今扱える攻撃型の聖奥にはあの炎を打ち破れる技は一つも無い。

 なので、俺は物凄く頑張らなければならない。


「ッ――――!」


 神皇の瞳を開眼し、亀裂の正面へと立つ。

 瞬間、亀裂からは青紫色の業火が直線上にいる俺を焼き払わんと噴出される。


「シャリド!」


 両手を前に突き出し、光の盾で炎を受け切る。


「ぐっ……ぐぐ…………。 璃空!」

「はい! 聖奥解放……」


 俺の後ろに立った璃空が瑠璃色の剣の形を弓へと変容させていく。


「っ…………」


 瑠璃色の弓を力一杯に引き、魔力の充填を行う。


「……」(まだだ……これじゃ、あの炎の熱量に押し負ける……)

「ぐ…………」


 制限下とはいえ神皇の瞳を開眼し、発動している聖盾魔法が押されてきた……。

 重ねがけをしても、重ねた分の盾はすぐに破壊され誤魔化しにもならない。


「璃空! あと、どれぐらいだ?」

「っ…………」(もう少し……もう少し……)


 あ、無視された、悲しい……!

 はいはい分かりましたとも! 黙って防御しますとも!


「うオォぉぉぉッ!!」


 出来る範囲で魔力を注ぎ込んでいるが、これ以上、神皇の瞳の力を使い続けるのは色々とヤバい……。


「璃空……あと――――」

「おまたせしました……」

「!……」


 あれ、こんな近くにいたっけ?と思ったが、足元を見ると、フェニックスの炎で押し戻されていたらしい。

 璃空が手にしていた弓の節と弦の合間には蒼く美しい魔力が潤沢し……。


「アローレイ……」


 弦から指を離した事で全ての魔力が前方へと押し出される。


「ラピスラズリ……!」


 瑠璃色の弓から放たれた魔力の束はシャリドを粉砕し、更に先にある青紫色の炎を溶かすように鎮圧。

 尚も威力が衰える事なく、亀裂に大きく穴を空けると、それにより異空間は崩壊を始めるのだった。

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