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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
五章 水明世界編
135/175

水明世界アヴネミテゼア

 街の活気に華を添えるように聴こえる小波の音。

 燦然とした陽の光を受け、海は青く染まり、全てのモノへ潮風を運ぶ。


「うわぁ……!」


 水明世界アヴネミテゼア。

 全てが海の上に造られた世界である。


「見てくださいみなさん!

 町が海に浮かんでますよ!! 何ですかこれ!?どういう理屈ですか!?」

「この世界は海と共に生きる世界だからな、どこに行っても海がある。 んでもって、この世界の管理神の加護により、赤子の頃から無意識的に水に浮けるし、七歳までには泳げるようになる」

「アドザム、そこまで海に突出した加護があるという事は、この世界の管理神は海に関連した神なのか?」

「お、志遠きゅん正解〜。 創生神クロノスが言うには、新世界……由利が元いた世界ではメソポタミア神話の女神とされるティアマトを抜擢したらしい」

「へぇ〜……。 クロノス様が選ぶって事は、相当凄い女神様なんですね〜」

「そりゃ第一世代の神だからな」

「あ、そういえばカグヤさんも第一世代って言ってましたけど、その世代って何なんです?」

「あー……そういや、ちゃんと説明してなかったな……」


 キョロキョロと辺りを見回すアルハ。 少しして「あ!」と何かを発見する。


「とりあえず宿に入ってからにしようぜ〜。 由利をベッドで寝かせたいし、飯も食いたいし」

「そうですね! アタシ、みたらし団子関連のご飯が食べたいです!」

「みたらし団子関連の料理ってなんだよ……普通にみたらし団子食えよ」

「未代さんもそれで良いですか?」

「っ……」


 マノからの問いかけに首を縦に振り肯定の意を示す志遠。


「お前、イエスマンにも程があるだろ。 何でこんな種族渋滞女に忠誠誓ってんだよ……」

「失礼な! アタシと未代さんは運命で惹かれた仲なんです……」

「運命ねぇ……名字呼びなのに?」

「ぐっ……! わ、分かりましたよ!名前呼びにしますよ!」


 重箱の隅をつつくような発言に過剰な反応を見せたマノは、深呼吸をし、下手くそな作り笑顔の準備をする。


「し、志遠さ〜ん…………あれ?」


 横にいたはずの志遠は、というか由利を抱きかかえたアルハもいそいそと宿屋へと向かっていた。


「おい!男連中っ!!」

「志遠、見たら負けだ」

「分かっている」

「ちょっと待ってくださいよぉ〜っ!」


 数百メートル先の宿屋へと到着した四人は、フロントで身分証明書を見せ、空き部屋の確認をしてもらうことに。


「はぁ……はぁ……歩くの早っ……。

 何でこういう時ばっかり……仲良さげ…………なんですか……」

「おおっとぉ!? マノ、なんか疲れてる?」

「はぁ……誰の…………はぁ……せいですか……」

「あ、呼ばれてるみたいだからちょっと由利置いとくな〜」


 マノ達の側のソファに由利を横にし、忙しなく動くアルハ。


「ったくもぉ〜……。

 志遠さんも酷いですよ……。 どうしてアルハさんと共謀したんです?」

「……何となく」


 マノは、何となくという理由で、運命の相手(笑)から、距離を置かれた!


「…………」


 ズゥーーーンと、顔を伏せ、露骨に落ち込んでいると、部屋の鍵を手にしたアルハが三人の元へとやって来た。


「ほいっ! 志遠きゅん持ってプリーズ!」

「…………」


 アルハから渡された部屋の鍵を無言で受け取る志遠。


「マノも部屋の鍵を……って、何落ち込んでんだ?」

「……アルハさんのせいですよ」

「ふ~ん……ま、いいや。

 とりあえず202号室へ向かうぞ〜」


 階段を上がり、202号室の前にて。


「じゃあ、志遠。 その鍵使って開けてくれ」

「……」


 首を縦に振り肯定の意を示す志遠。

 鍵は球体型で、外側からは扉に接触させる事で開閉するシステムとなっている。


 ガチャ……。

 鍵の音がしたのと同時にドアノブを捻れるようになる。


「おお……ハイテクですね!」

「いや、魔法干渉の鍵ってザル警備だと思うけどなぁ……」

「……」


 中へ入ると、玄関近くにバスユニット、奥にベッドが二つと大きな窓。 よく見る簡素な部屋であることがうかがえる。


「なんか……普通ですね」

「普通が一番じゃね?」

「神なのに庶民的な意見だな」

「ベッドが二つってことは、最年少の由利さんは一つ使ってもらって、アタシと志遠さんが同じベッド……ムフフ……。

 で、アルハさんが床――――」

「待ていっ!」

「どうしたんです?」

「え、なんで?

 なんで俺だけ床なの?」

「アルハさんは床でよくないです?」

「よくないです」

「だって、ベッド二つしかないですし……」

「いやいや、俺も由利と一緒のベッドで寝れば――――」

「事案です」

「何でだよ! 言っとくがな、いくら節操無しだからって子供に手を出すような事はしねぇよ!」

「あ、そうなんですね」

「そうなんです」

「じゃ、床で」

「あれぇ〜? 話通じてなかったぜッ!

 ほい、これ」


 自分の頭をペシッと叩きながら、アルハはフロントにて渡しそびれた物をマノへと差し出す。


「あれ? 部屋の鍵、もう一個あるんですか?」

「そ。 202は俺と志遠、こっちの201がマノと由利の部屋」

「な〜んだ、ちゃんと考えてたんですね」

「そりゃそうだわ流石に気にするだろ」

「じゃあ、201の方で作戦会議をします?」

「そうしよー!」


 一行は201号室へと移り、ベッドに由利を寝かせると、今後の方針について考える。


「よし、まずは酒場だな!」

「転移して早々お酒飲むとか……世界救う気あるんですか?」

「ちげーよ! ほら、よくあるだろ?

 酒場には色んな情報が……」

「酔っぱらいなんてホラ吹きの集まりじゃないですか」

「うわっ……酒飲みの敵!」

「マノ、確かに酒を飲む人が真実を言っているとは限らないが、だからといって嘘を言っているだけじゃないと思う」

「……志遠さんがそう言うなら、行くことを許可します」

「ちぇっ! まーた志遠優先の考えかよッ!ケッ!」

「アルハさんだけだと、本当にお酒飲むだけ飲んで帰ってきそうだからです」

「なにィ!?」

「ふんっ!」

「ほんっと可愛げないなぁ……」

「アドザム、酒場には俺とお前の二人で行く。 良いか?」

「おう! 志遠きゅんと二人っきりでデートなんて嬉しいねぇ……!」

「……茶化すな。

 マノ、黒井に何かあったり、それ以外でも町に異変があったら通信魔法ですぐに呼んでくれ」

「了解です!」


 こうして、情報収集をアルハと志遠。留守番をマノと由利の二人が務める事となり、アルハ達は宿屋から少し距離のある酒場まで足を運ぶ事となった。

第五章は【罪に願いを 新世界の先駆者】2周年となる2023年2月14日に投稿させてもらいました!

海と共に生きる世界で繰り広げられる物語、是非ご覧いただければと思います。

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