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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
四章 魔剣使徒編
133/175

月光世界初代管理神

「誰って……さっきまでマノちゃんの体に憑依していた月光世界の元管理神だよ?」

「ルナ……それが、カグヤさんの本当の名前……」

「ルナ。

 月光世界の元管理神であり、創神を除いた第一世代三番目に誕生した神であり、天上の戒律を破って封印された神。

 そういえばマノちゃんはルナの事をカグヤさんって呼んでるね。 あれはどうして?」

「あっ、それはですね……。

 アタシがガイムさんを助けるためにニルプス城の地下を歩いていた途中で、真っ暗闇なのにピカッ!と周りを明るくさせているこの白い弓を見つけて……」

「白い弓……そっか、ルナは創造神に封印された時、弓に姿を変えられていたんだね」

「封印、ですか? 人間に肩入れしすぎて天上の神様に殺されたって聞きましたけど……」

「あの創造神様の事だから、殺すのを惜しんで影の世界に封印しておくだけにしたんだと思う」

「なるほど……。 あ、話戻しますね。

 それで、暗闇すら明るくするから……」

「夜を輝かせる……って、事で輝夜(かぐや)の弓と命名したって感じかな?」

「はい! って、言わないでくださいよ!」

「ふふっ……ごめん、つい……。

 でも、マノちゃんが管理してるなら問題は無いかな。

 さっきもマノちゃんお得意のキツい一言で弓の中に引っ込んじゃったしね」

「あ、あれはカグヤさんがレヴィさんに酷い事をしてたから言ったのであって、アタシ毒舌キャラではないですからね!?」

「ええ〜? 私にも散々言ってたのに?」

「うッ……すみません……」

「ふふっ……うそうそゴメンね?」

「…………」


 頬を膨らませて、不機嫌そうにレヴィアタンを見やる。


「あ、怒っちゃった?」

「怒ってないです……。

 なんか、さっきの怖い感じが一気に無くなって温度差激しいなとは思ってますけど」

「私は基本温厚だよ?」

「温厚な人があんな殺害方法思いつきます!?」


 その後も話に花を咲かせる二人だったが。


「それじゃ……」


 やがてレヴィアタンは終わりを告げるように会話を断つ。


「あっ……もう、行っちゃうんですね……」

「うん……。

 私がマノちゃんと一緒にいたら、他の人が気まずくなっちゃうだろうし、私はまだ人間を信用できない」

「レヴィさん……」

「もしかしたら、また人を悲しませたり苦しませる事をするかもしれない。

 私は、また悪に身を染めてもマノちゃんの事だけは好きでいるかもしれない。 けど、マノちゃんは私の事をまだ好きでいられるかな」

「当然です!」

「っ! 即答だね」

「はい! それにさっきも言いましたよ。

 そうなったら今以上に強くなって誰も悲しまず、レヴィさんが罪を重ねないよう、なんか色々頑張る!って。

 その誰かには、レヴィさんも含まれてるんですからね?」


 マノの言葉がレヴィアタンの気持ちを穏やかにさせ、それと心の奥底に残り続けていた元管理神の言葉がフラッシュバックする。


「……私は、有ったらいけない命なのに?」


 卑屈な質問を投げかける。

 自分を慕っているのなら傷付けないような返答をすると分かっていて。


「好きだから失いたくない……じゃ、ダメですか?」

「っ…………」


 心の奥がジワリと熱くなる。


「好きだから、生きていてほしい。

 好きだから、また一緒にいたい。

 好きだから、罪を重ねないでほしい。

 好きだから――――んむっ!?」


 真っ直ぐに向けられる好意が、唇を重ね、言葉を遮るという行動をレヴィアタンにさせる。


「…………」

「それ以上言わないで」

「……」

「それ以上好きなんて言われたら、本気でマノちゃんの全部が欲しくなっちゃう。

 本気でマノちゃんを私だけのモノにしたいと思っちゃう」

「……良いですよ」

「えっ」

「アタシがレヴィさんだけのモノになって、それでレヴィさんがもう悪い事をしないと約束してくれるなら、アタシはそれでも良いです」


 落ち着いた表情と口調でレヴィアタンの思いを受け入れるマノ。


「…………。

 ……敵わないなぁ、マノちゃんには」


 頬を少し赤らめ、視線をそらすレヴィアタン。


「普段はちょっとおバカさんなのに、どうしてこういう時だけはカッコつけちゃうのかな……」

「えへへ……自分でもわかりません……」

「まさかとは思うけど、私以外の女の子にもそういう事言ってるわけじゃないよね?」

「まさか! 言わないですよこんなこと……んっ……」


 レヴィアタンがまた唇を重ねる。


「なら、よろしい!

 私以外の誰かにカッコつけをしたら、私、嫉妬でその人に酷い事しちゃうかもだからね?

 カッコいいマノちゃんは、私だけのものだから」

「独占欲が凄い……。

 レヴィさんって、ホントは強欲の罪なんじゃ……」

「ふふっ。 どうだろうね〜?」


 レヴィアタンはイタズラな笑みを浮かべると、マノに背を向け、転移魔法を発動する。


「またね、私だけの王子様(おひめさま)

「はい、また」


 別れの挨拶として手を軽く振った彼女は、次に何処へ行くとも告げず、影の月光世界から完全にいなくなった。


「……アルハさんとかルイさんに逃がしたなんてバレたら怒られるだろうなぁ」

「…………ほう。 覚悟は出来ているらしいな」

「……………………」


 マノの全身から冷や汗が流れているのは、この勇ましくも幼い声の主が原因だろう。


「あ…………」


 右隣へ視線が行く。


「やあ」


 いつから居たのかは分からない。 が、ある程度の事情を理解しているであろう金髪碧眼の幼女な王が腕を組み、そこに佇んでいた。


「すんませんでしたぁぁぁ!!」


 ダイナミック土下座タイムに突入するマノ。

 勢いよく伏せた頭は地面にめり込んでいたが、その土下座フォームは美そのものだ。

 呆れて物が言えないルイはマノと視線を合わせようと胡座で座り込む。


「マノ」

「はい!すみませんっ!!」

「まだ、何も言ってない」

「で、でも、怒ってますよね……?」

「怒り以上に呆れているから安心しろ」

(ホッ……)「そ、そうですか……」

「後でしっかり怒ってやる」

「ヒッ……!」

「まあ、冗談はさておき……。

 マノ、よくやってくれた」

「へ……?

 ア、アタシ、レヴィさんを逃しちゃったんですよ? なのによくやったって……」

「君は私の部下を全員救った事にだ」

「あー……。 ま、まあ、当然の事ですけどね!」


 と、言ってはいるが、鼻は高くして誇らしそうにするマノ。


「それに、あの様子からして、レヴィアタンはもう自らの鬱憤を晴らすために誰かの命を奪うような事はしないだろう」

「えっ、どうしてです?」

「君に嫌われたくないからだ」

「あー…………? どうしてレヴィさんは、アタシに嫌われたくないんでしょうか?」

「……君は本気で言ってるのか?」

「???」

「はぁ〜……。

 まあ、いいさ。 とにかく、一度、月光世界へ向かう。

 掴まれ、マノ」

「あ、はい!」


 マノが自分の体に触れた事を確認したルイは、足元に一瞬で魔法陣を作り出す。


「転移、月光世界ニルプス城」


 魔法陣の線から湧き出た魔力の光が二人を包み込み、肉体を別世界へと飛ばす。


「着いたぞ」

「早っ!! アタシ、あの魔法陣の光を体に受けてから三秒も経ってないですよ!?」

「まさか、境界の守護者のような道を介して数十分ほどの時間を要するとでも思ったのか?

 忘れているようなら教えておくが、私は創神を除けば最も古い神だ。 これぐらいの事、朝飯前だ」

「すごい…………。 不意打ちでアタシに負けた人とは思えないです……」

「…………」(コイツは後でマジで殴ろう)


 ーーーーーーーーーー


『殺さないの? あたしは殺したのに』


 自ら死を望んだはずの人間が恨み言をもらす。


『ころさないんだ〜……。 アタシの力をあげたのに』


 自ら力を与えたはずの悪魔が恨み言をもらす。


『殺さないんだね。 (あたし)の志遠くんを奪ったのに』


 自ら融合を果たしたはずの人形が恨み言をもらす。



 何者にもなれない彼女の(ナカ)で。

ご覧いただきありがとうございました!次回投稿日は12月31日12時です。

よければブクマやイイねを押してもらえると嬉しいです!

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