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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
四章 魔剣使徒編
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アメジスト 5

「…………」(たしか俺は、エナ・グォリースに背後から……)

「未代さん! それに、皆さんもちゃんと生きてますね」

「生き返りましたけど、本当にやるなんてお嬢さんヤバすぎでしょ」

「ガイム、どういう事ですか?」

「あ、なんかガッとしてグッて感じで……」

「私が説明するからガイムは黙ってて……。

 えっとですね、マノ様が魔宝石の腕輪の加護を使って、死んでしまった私たち全員を生き返らせてくれたみたいです。

 私もガイムから話を聞いただけなので、仕組みはよく理解してないんですけど」

「成程……大体理解した。 紫の魔宝石の力か」

「なんでエナは今の話だけで使った魔宝石まで分かるんですか……」

「その魔宝石だけが少し発光しているからな」(そして、無傷で完全な復活をしているところを見ると、これは生と死を逆転……)

「なんで……」

「っ……」


 マノ以外の全員を殺害し、優越感に浸っていたレヴィアタンが苛立ちを顕にする。


「なんで! いつ、その力を!」

「ニルプス城の地下最深部に向かっている途中です。

 その時は力が解放されただけで扱うことは出来ませんでした。 でも、レヴィさんが言った……」


『ねえ、マノちゃん。

 マノちゃんはこの世界に来てからさ、神様にお祈りした事ある?』


「あの言葉で、今のアタシが祈りを捧げることで、いつも以上の力が出せるんじゃないかと思ったんです」

「あー……私がヒントをあげちゃってたんだね……。

 でも、すごいよ! よく、全員が死ぬまで使わなかったね」

「そうですね。 未代さんたちが殺されたのを知った時、すぐにでも生き返らせたかった。

 でも、そんな事をすればレヴィさんは復活できなくなるまで殺しに来る。

 だから全員が死んだ時に使ったんです」

「ふふっ……そっかそっかぁ……」


 レヴィアタンが笑みを浮かべながら自らの人差し指で頭をつく。


「でも、ざーんねんっ。 何度生き返っても、認識改竄しちゃえば、また殺し合うだけだもん」

「…………なら、やってみたらどうです?」

「『!?』」


 マノからの思いがけない返しに、その場にいた全員が動揺する。


「何を言っているんだマノ! そんな挑発をしてレヴィアタンが――――」

「認識改竄」


 エナの言葉を遮り、レヴィアタンが有効な相手に認識改竄を発動する。


「ふふっ……。 じゃ、また殺し合いのはじまりはじまり〜」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 誰も動かない。

 誰も何が起きたか理解していない。


 否、誰も何も起きていないのだ。


「あ、れ? おか……しいな……?

 ほらほら、さっきみたいに殺し合いを――――」

「ラドジェルブ」

「えっ?」

「掲げた片方の手から太陽や月の光を吸収し、もう片方の手で闇の力や病を浄化する光芒を放つ聖奥のことです。

 アタシ以外の五人は、その聖奥を受けたことで、認識改竄の影響を受けなくなっているんですよ」

「そんな聖奥が……。 で、でもっ!

 この世界は光と影が反転している月光世界の裏側。 太陽どころか月なんて……」

「反転しているから見えないだけで、ちゃんとありますよ月。

 その証拠に……」


 マノが右手を天に掲げ、左手で光の柱を放出する。


「ほら、こうやってラドジェルブの光芒が出ているじゃないですか」

「…………」


 呆然とするレヴィアタン。


「え、マジっすか!?」


 唯一、ある程度の事情を理解していたのに驚く人物一名。


「え、ガイムさん知らないのにアタシの作戦に乗ったんですか!?」

「僕どころか、お嬢さん以外の全員が知らないっすよ!」

「え……。

 で、でも、流石にエナさんは……」


 肯定を求めるように横目でエナに視線を送るマノだったが、エナは首を横に振る。


「俺もそこまでは知りえなかった。

 マノよ、君はどうやってこんな情報を……」

「えっ、あ、えっと……それは……」

「邪奥解放……」


 レヴィアタンは手にした魔剣を用いて、邪奥を発動する。


「! 皆さん、アタシから少し離れた場所に一箇所になって集まってください!」

「それは構わないが、一体何をするつもりなのだ?」

「考えなくて平気です」


 自信ありげな表情のマノに促された五人は、言われるがまま集まり、一つの塊を形成する。


(マノちゃん、この状況で何をするつもり?

 ……ううん。 今、やるべきなのは考える事じゃない。

 今、殺るべきなのは……)「人間を根絶やしにする事……!

 四魔剣よ、一つとなりて、世界を滅ぼせッ!!

 神討魔剣(ラグナロク)!!!!」


 淀んだ黄色い魔力が防御回避不能な斬撃となり全方位からマノ達へと押し寄せる。


「マズい……! 四魔剣が完全な一刀となった結果、この世界そのものが刃の一部と化している!!」

「ハハハッ! 博識だね団長さん。

 でも、もう遅い。 防御も回避も出来ないこの魔剣の前じゃ貴方達に出来る事なんて――――」

「"紫の魔宝石よ、我が定めし場を反転せよ"」


 瞬間、志遠達と志遠達が立つ地面から紫の光が放たれ、五人は消失。 代わりにその場所には色の異なる地面が現れた。


(!? 消えた……ううん。 この世界から私とマノちゃん以外の魔力も消えた?!

 紫の魔宝石を使ったのは分かっている。 でもどうやってあの五人を……どういう理屈で回避させれたの……)


 マノのとった妙案により、五人は神討魔剣からの被害を免れる。

 ただ、当のマノ本人は紫の魔宝石でその場から逃げようともせず、甘んじて受けるつもりでいようとする。


「神討魔剣!!」


 しかし、その時。 同等以上の速度で放たれた同等の力がマノに接触するよりも先にもう一つの大きな力と衝突し、それを相殺する。


「っ…………」


 ギュッと目を伏せ、死ぬ事を覚悟したマノは言葉が出なかった。


 自分に迫っていた邪奥を打ち払ったのは、その邪奥を放ったレヴィアタン本人だったからだ。


「はぁ……はぁ……」


 そしてレヴィアタンはというと、神を殺すための力を何度も使うのは苦だったのか、辛そうに息が溢れていた。

ご覧いただきありがとうございました!次回投稿日は12月22日21時です。

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