アメジスト 3
「っと……なんとか到着。
未代さんたちは……いた!」
レヴィアタンを退け、ニルプス城へと戻ったマノは、自身が装着する魔宝石の腕輪を志遠達の亡骸へと翳していた。
(ガイムさんはさっき触れたし、イオさんも眠ってる時に合わせたから問題無い……よね? あとは……)「聖奥解放」
右手を空に掲げ、左手を志遠達へと伸ばす。
「天より地を照らす輝き、一切の邪悪を祓う、清浄の光芒となれ!」
右手には冷たい色の光が集まり、マノの体を巡って左手から志遠達の肉体へと送り込まれる。
(……本当に言ってたとおりになった)
「お嬢さん!」
「っ! ガイムさん、イオさん……」
「大丈夫ですか、マノ様!」
「はい、アタシは……」
「? ッ……!」
「まさか……そんな……」
地下から遅れてやってきたガイムとイオは、そこで起きたであろう惨状に息を呑む。
「団長が……副団長が…………!!」
二人の遺体へと駆け寄り、膝をつくイオ。
「これを全部、あの悪魔が?」
「すみません……。 アタシが来た時には、もうみんな……」
「でも、どうにかなるんですよね!?」
涙を拭い、イオが問いかける。
「はい。 アタシの見立てが間違っていなければ、きっと……」
「へぇ〜……どうにかなるって、どうやって?」
「『!?』」
ニルプス城正門に見える人影。
おぞましさを醸し出す螺旋状のオーラを放ちながら彼女は佇んでいた。
「レヴィさん……」
「あの人……聖域でガイムが一緒にいた人だよね?」
「なんで気付けなかったんだ……って、ツッコミはすんなよ?」
「しない。 団長たちがやられるぐらいだから、ガイムじゃ騙されてもしょうがないし」
「……それはそれでちょっと落ち込む納得の仕方なんですけど」
「ふふっ……。 そこの二人は相変わらず仲が良いね」
「やっぱりフリだったんですね」
「もちろん。 最初の聖奥は凄い威力でビックリしたけど、あのぐらいなら硬化魔法でどうとでもなる。
それに、先に紫の魔宝石を使うフリをしたのはマノちゃんだから、お互い様でしょ?」
レヴィアタンは柔らかな笑顔で答える。
「……笑顔、引きつってますよ?」
「!……」
「アタシに騙されたのが相当悔しかったんですね」
「……マノちゃん、どうしてそんなイジワルな事を言うのかな?
私はマノちゃんを私のモノにしたいだけなのに……」
「その言葉の前後に全人類の殲滅と世界滅亡って言葉が無ければ、別にそれでも良かったです。
でも、今のアナタは人類の……ひいてはアタシの敵です。
だから、その願いに応える事は出来ません」
「……ソイツらがいるから?」
「えっ……?」
「そっか! ソイツらがいるから、マノちゃんは自分を圧し殺して、良いヒトのフリをしてるんだね!」
「? 意味が分かりません……アタシは――――」
「そっかそっかー! じゃあ、気を使わせちゃう悪い人間は、殺さないとね!」
手元に数十センチの亜空間を生み出し、そこから魔剣を取り出す。
「あれは……!」
「ガイムの魔剣……それにレーバテインまで!」
「やっぱり継承していたんですね……」
「ふふっ……。 邪奥解放……」
抜刀術の構えをするレヴィアタンが、直線上にマノ達を見据える。
「ガイム、あの構えって……」
「団長の魔剣聖奥……。
お嬢さん、ここは僕達に任せて逃げてください!」
「何言ってるんですか! 二人共、怪我してるし、武器だって……」
その直後だった。
「邪奥解放……」
「えっ……」
抜刀術の構えはそのままに、二本手にしていた筈の魔剣は一本だけになり、その魔剣はティルフィングでもレーバテインでもない魔剣へと形容を変えていた。
「ガイム、今、魔剣が……」
「一つになった……!?」
薄汚れた黄色い剣が目にした者の恐怖心を煽る。
「本来の半分の威力、魔力無効化、必中……。
原典よりは性能的に劣るけど、殺すには十分過ぎるかな……」
新たな魔剣の登場に、ただ立ち尽くす三人。
「……………。
……………。
……………! 二人共、下がってください!
聖奥解放!」
ハッと我に返ったマノが真紅色に染まる騎士の化身を顕現させる。
「黄昏の剣よ、世界に終焉を……ラグナロク」
「紅宝聖剣!」
先制して放たれた赤い騎士の剣撃が、発動直前の抜刀術を弾き、レヴィアタンを退ける。
…………退けていたはずだった。
「ゲホッ……ゲホッゲホッ……。
な……何が…………」
次に意識が戻った時、マノは自分が倒れ伏す事に戸惑いながら周辺を見渡していた。
「!……。 ガイムさん! イオさん!」
マノのすぐ後ろには、ガイム、イオの両名も先程以上の傷を負い、倒れている。
「なんで……」
「これが、北欧魔剣の本来の姿」
「ッ!」
前方では薄汚れた黄色い剣を手にするレヴィアタンが佇む。
「どうして魔剣が四本だったのか、答えは簡単。 一本では強すぎて人の手には余る代物だったから。 だから、力を分散するために四本に分けた。
じゃあ、どうして魔剣を作り出したオーディン自らが手にしていなかったか……」
そこまで言い、刀身に頬を寄せる。
「手にできる訳が無い。
この剣は、オーディンを殺すためにオーディン自身が作り出した剣だもん」
ご覧いただきありがとうございました!次回投稿日は12月16日12時です。
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