認識の支配者 11
「アナタは……!」
「イオ……」
「ガ……イ…………ム」
赤黒い服の人物はイオだった。
疲弊しながらも気力だけで意識を保っていた彼女は、再会の安堵からか、その場で倒れて伏してしまう。
「イオさん!」
「イオ! 今、生命魔法を……」
「そんな事したらガイムさんの寿命が縮んじゃいますよ!」
「背に腹は代えられないじゃないっすか!!」
「で、でも……」
マノの意見を頑として通さず、そのまま生命魔法を使うガイム。
重傷だったイオを完治させた事で、ガイムの寿命は数十年ほど削られ、肉体や脳にも影響が……。
「ガイムさん……」
「っ…………」
自分の手や顔のシワ、体のだるさ、視力の低下等。
ガイムは自分の事ながら呆れたようにため息をつく。
「これ、ヤバいっすね」
「…………」
「お嬢さんがしょげないでくださいよ、こっちまで悲しくなっちゃうじゃないっすか。 もっとポジティブに……ね?」
「はい……。
えっと、じゃあ……イオさんが生きてて良かったですね」
「そうっすね。 って、気まず過ぎて読書感想文への返しみたいになってるのにツッコむのは野暮かな?」
「人が心配してるのにボケないでくださいよ……」
「冗談です。 ええ、僕の大切な人が生きててくれて本当に良かったです」
「……」
「ガイムさん」
「?」
「ガイムさんは、ここでイオさんが目を覚ますのを待っててもらえますか。
レヴィさんは、アタシ一人で何とかします」
「……急に何言ってるんすか、お嬢さん。 正気ですか?」
「レヴィさんがアタシに甘いのなら、アタシ以外の人は少ない方が良いかなって……」
「だからってお嬢さんだけを行かせるのは納得いきません」
「でも……!」
「……と、言いたい所なんですけど、正直、今はそう言ってもらいたいと思ってたんで、あまり強く言えないっすね」
「えっ……?」
「僕は魔剣を奪われて、生命魔法を使った代償で普通の武器を使っての戦闘でも足を引っ張るだろうし、今の状態のイオは無理に連れていけない……。
魔剣使徒なんて言われてる奴が、ここ一番って時に邪魔者とか、とんだピエロですね……」
「ガイムさん……」
「お嬢さん。 どうか、団長と副団長をお願いします。
ま、ヤバくなったら、足手まといならないぐらいに僕も手伝うんで」
「……はい!」
「青の魔宝石よ、その力、我が身に宿れ!」
ガイム達を地下の安全地帯に残し、サファイアの力で敏捷性を高め、地上へと一気に駆けて行く。
「……あ、やっと来てくれたんだ、マノちゃん」
「……」
ニルプス城一階、大広間。
蒼と黒の螺旋状のオーラに包まれたレヴィアタンは、ようやく現れたマノを前に、少し右に首を傾げながら頬を綻ばせる。
真剣な眼差しでレヴィアタンの放つオーラを凝視し、歩を進める。
「あ、言い忘れてた。 その辺に守護者くん達の死体があるから歩くときは気をつけてね?」
「……え」
レヴィアタンからの忠告で、マノの視線が足元に向けられる。
「ッ――――!?」
それらはマノのすぐ近くに転がっていた。
上半身と下半身が真っ二つに切断された志遠。
首が斬り落とされたエナ。
剣で何度も目を突き刺し、顔に穴が空いたアリア。
三人の遺体は、どれも無惨なものだった。
「これを……レヴィさんが……」
「私じゃないよ〜。 守護者くんを殺したのは団長さんで、団長さんと副団長さんは自殺だよ?
……ま、ちょっとだけ認識の改竄はしたけどね? ふふっ……」
「!……」
悔恨を感じさせない微笑みに怒りを募らせるマノ。
「そんな怖い顔しないでよ。
ね、マノちゃん! 私、提案があるんだ」
「提案……ですか」
「うん!
マノちゃん、今度こそ本当の目的を達成するために私たちと人類を、神を、六大世界を終わらせない?」
「っ……」
レヴィアタンの提案。 それは、マノに悪魔として自分達と共に世界を滅ぼすというものだった。
「もちろん、断っても良いけど、そうなったら殺す。
だってマノちゃんは元々人間だもん。 人と同じ空気を吸うのがイヤな私がこうやってお誘いするなんて、普段なら天地がひっくり返ってもありえない事なんだよ?」
「じゃあ、どうしてそんな事を……」
「それはねマノちゃん。 私がマノちゃんの事を大好きだからだよ」
「……は?」
唖然とした。
自身の手を汚さずに人を殺めるような悪魔が、普段ならありえない提案をした理由が好意だった。
「そんな理由で、アタシはまだ殺されてないんですか……」
「うん」
「そんな理由が無かったら……」
「うん? ふふっ……」
マノの問いに、笑顔を浮かべる。
「そんな理由が無かったら、すぐに殺してるよ。 だって、人間だもん!
あんな自分達の我だけを通す醜い生き物、生かす価値なんてある?」
「…………。
……どうして」
「?」
「どうしてそこまで人間が憎いんですか?
そんなに創生神の言った、人に仕えるという行為がそこまで嫌だったんですか?」
「……マノちゃんさ、勘違いしてない?」
「……えっ?」
「私、元々は天使じゃないんだよ?」
ご覧いただきありがとうございました!次回は12月4日12時に投稿します。
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