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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
四章 魔剣使徒編
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認識の支配者 7

「エナっ!!」


 怒声を上げ、立ちはだかる志遠。

 しかし、そんな事はつゆ知らず、考える事を放棄したかの如くアリアの元へとひた進んで行くエナ。


「アリア……アリア……」

「ぐっ……」(なんて怪力だ…!)

「エナ」


 エナの進路を妨害されるやいなや、アリア自らがこちらへと近づいてくる。


「聖奥解放《エナ……そこで待っててね?》」


 アリア本人の声に混じって、おぞましい声が聖奥発動を唱える。


「!……。 聖奥解放!」


 たまらず志遠も魔力生成した剣を構え、臨戦態勢を取る。


「見定めろ……グラム」

(魔剣による聖奥、どういった性質かは分からない。

 なら、こっちは……)「切り裂け、白銀の剣!」


 魔剣を逆手に持ち、強襲するアリアに対し、志遠は剣の強度を上げるだけの聖奥で対峙する。


 互いの刃は交じり合い、一撃の重さは互角だった。


「!?」


 魔剣グラムは志遠の剣と衝突した瞬間、切っ先を捻じ曲げる。


(ブラッドブースト!)


 エナの腕を掴み、攻撃を躱そうとブラッドブーストを発動する志遠だったが……。


(うッ…!?)


 僅かな数メートルの距離を動いただけ。 にも関わらず、ブラッドブーストは解除され、彼の身体は唐突に震えを起こす。


(しまっ……た……)


 ブラッドブーストとは自傷により出血し、発動する瞬間強化能力。

 動体視力の向上は無いが、筋力が十倍。 敏捷性に至っては千倍まで上昇する反面、一秒間に全体の4%の血液を消費するため、十二秒が限界とされている。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


 しかし、志遠は海底神殿においてマノ達を救出した際、すでに一度使用していたため血液が足りておらず、刹那の間に解けたのだ。


「うっ!」

「エナ! 大丈夫?」

「ああ。 何かに引っ張られた気がしたんだが……」


 認識改竄により、志遠の事を認識できないエナは、転んだことを訝しげながらも特出して深くは考えなかった。


「きっと疲れているんだよ。

 さ、回復魔法使うから。 立てる?」

「えっ…? あ、ああ…問題無い……」


 エナの手を引き、志遠から距離を開きつつ、再度魔剣を構え、聖奥の発動へと移行するアリア。


「聖奥解放」


 ガサついた声から発せられた言葉でグラムに魔力が注がれていく。


「う…ぐ……」(俺は……ここで終わるのか?

 こんな、ところで……俺は……)


 うつ伏せの状態で志遠は自分の死を悟り、恐怖心を抱く。


「グラム――」


 その顔を見たアリアは顎が垂れ下がり、大きく開いた口の端を上げながら魔剣を


「なあ、アリア」

「!……。 ど、どうしたのエナ?」


 エナの呼び声で、アリアの聖奥は直前で鳴りを潜める。


「君は本当にアリア……で、いいんだよな?」

「私以外に誰だっていうの? エナは可笑しな事を言うな〜」


 あはは! と笑い飛ばすアリア。

 エナ・グォリースは認識改竄により、殆どを正常に判断できない。 眼前にて明らかに異常な身なりをした女性を心配もしなければ、警戒もしないのが何よりの証拠だ。

 だからといって彼女がアリア・フィジュカでは無いのかと問われれば、ここにいるのは間違いなくアリア・フィジュカ本人である。

 故にエナは多少の違和感を抱きつつ、本人であるという事実でうやむやにされていた。


「……そうか。 なら、安心した」

「そう? なら、私もよか――」


 アリアの言葉が途切れる。


(!?……エ、ナ…?)


 志遠が目の当たりにしたのは。


「……あ、れ?」

「安心してくれ、アリア。 すぐに治す」


 柔和に微笑んだエナが、魔剣レーバテインでアリアの両腕を切断する姿だった。


「な、なんで……どうしてこんなこと…!?《ウギャァァァァァァッッ!?!?!?!?!?》」

「なるほど、認識の支配者の力は認識こそ自由に扱えるが記憶は一切の干渉が出来んらしいな」

「私の質問に答えてよ!」

「質問に答えろ……か。

 簡単な事だ、君が俺を治すと言った。 だから認識の改竄下にあると判断し、俺以外の人間が戦闘を避けれるように腕を使えなくした。

 これで満足か?」

「答えになってないよ! だから、どういう……」

「俺の魔剣の能力、君が知らない筈はない」

「……えっ?」

「俺の魔剣、レーバテインは分離させる事で、刀身部分は際限の無い治癒能力を発揮する。

 無駄な魔力を消費せず、生命魔法特有のデメリットの発生も無くな。

 だのに君は、俺を手当てすると言った。

 何故、四魔剣全ての性質を理解している君がそんな事を言ったのか? それは君が…いや、君の認識改竄を行った者が、この魔剣の性質を理解していなかったから……。

 そうだろう? リバイアサン」

『……なぁんだ、もう気付いちゃうなんて。

 つまんないなぁ、団長さんは……』


 城内に聞こえてくるレヴィアタンの声が少し残念そうにする。

 パチンと指を弾く音。


「!……。 アリア……」

「エ……ナ……」

「シオン殿!」


 エナの瞳に、おぞましい姿のアリア・フィジュカと身体から大量の血液が消費により、皮膚の色素が薄れ、痙攣を起こしている志遠の姿が映る。


「見え……るのか……?」

「ああ。 先程、俺が転んだのは……」

「悪い……。 アリア・フィジュカが魔剣の聖奥を使ってきたから躱そうと思ったけど、ムリだった……」

「そうか……。 後は自分に任せてくれ」

『任せる? 団長さん、あなたに副団長さんがどうにかできるの?』

「リバイアサン……いや、レヴィアタンが正式な呼び名だったな。

 レヴィアタンよ、お前は人を甘く見過ぎている。

 自分の悦楽のためだけにその力を使い、遊び巫山戯ていると、今に後悔するぞ」

『甘く見過ぎている、後悔する、ねぇ……』

「聖奥解放……」

「!……」


 腕を切断されたアリアは断面部にグラムの柄を突き刺し、三度聖奥を放とうと構える。


『じゃあ甘くないところを見せてよ。

 そしたら、私も後悔しないよう、本気で潰してあげるから』

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