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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
四章 魔剣使徒編
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嫉妬の魔獣 8

 マノが語る!前回のお話!

 いなくなったイオさんを追って、キッチンにある水の張ってある鍋に触れたら吸い込まれて海に転移してた!どゆこと!?

 その中でピンク髪の綺麗な女の人と遭遇!って、この世界の美男美女率高すぎだろ!

 と、思ったらその正体は毛髪を吸収して変身していた人魚だった!

 水中での人魚は、サファイアによる速度上昇最大時のアタシの数倍のスピードで攻撃を仕掛け、それによりエナさんが負傷!削り取った肉片を吸収して今度はエナさんの姿になり、次はアタシを(物理的な意味で)食べる♡とか言い出した!いやん!

 そんな……アタシには(一目惚れだけど)運命の相手がいるっていうのに……。


 本作のヒロインとは思えない解説であった。



「…………」

「……どうした? 逃げるなら我が何もしていない今のうちだぞ?」

「っ……」(こっちが逃げ切れないのを分かってるくせに……!) 

「マノ、俺が囮になる。 だから、君だけでも……」

「お断りします! というか、ケガ人を盾にするとかアタシの流儀に反します!」

「りゅ、流儀って……」

「心配しないでください。 勝つ方法はありませんけど、あの人魚を負かす方法なら一つだけ思いつきました」

「何!?」

「負かす方法か……我の速さに一興を喫していたお前如きがよくも言えたものだ」

「なら、試してみればどうですか?」


 嘲笑を見せるエナの姿をした人魚に、かかってこいと手招きで挑発する。


「後悔するぞ……」


 シュンッ……海中は一切の変化無く、人魚がマノと一寸の距離までに迫る。


(速い…! やはり、防げない!)

(フフ……口先だけだったようだな、紛い物)

「……」


 辛うじて肉眼で追えていたエナとは異なり、接近した事にも気付いていないのか、マノは微動だにしていない。


「マノ――!」


 腕を鋭く尖らせ、彼女の胴を貫かんと攻撃を仕掛ける人魚の行動に気付いたエナが声を荒げるも時既に遅し。

 人魚の腕は華奢な身体を穿ち、その一撃に目を見開き吐血するマノ。


「クッヒヒ……お前の肉は全部……」

「捕まえた」


 発した言葉が口から更に血を滴らせる。


「……終わりにしましょう」

「!?」


 人魚へと真っ直ぐに向けられた視線、その目から放たれる威圧感に辟易した人魚は捕食行動を放棄し、距離を取ろうとする。


「聖奥解放」


 だが、人魚の思考がそう働くよりも先に、少女は両足で人魚の体をガッチリと抱きかかえ自由を奪うのと同時に、魔力を最大限まで高める。


「がッ……!?」


 人魚は退避せんとマノを何度も殴り、引っ掻くなどの攻撃を繰り返すも、魔宝石の加護を自己再生能力に全て振り切っていたため、攻撃により出来た傷は瞬間に再生。

 事実上、人魚の攻撃を完封する。


 その間に魔力が具現化した騎士の化身がマノの背後へと顕現。 マノと同一の動作をする化身は、携えた剣を天へと掲げる。


「グッっ……ガガが!?」


 必死に藻掻くも、マノの馬鹿力は人魚を離さない。


「ナイトオブ……」

「やめろ!! やめてくれマノ!」


 人外の呻き声を上げていた人魚は今の自分に適当な声色、悲痛な表情で助けを乞う。


「セイバー」


 しかし、マノは躊躇うことなく、聖奥による剣戟を振り下ろす。


「やめろォぉぉぉぉぉぉ!! がぎゃ機がガガガ技ゲゲゲゴゴゴ!!!!!」


 水風船が弾けるように、人魚の外皮を引き裂くと中身は水に溶けて消えていった。


「…………」

「っ……」(凄い……。

 最初こそアホっぽい少女だと思っていたが、やはり彼女も悪魔ということか……)

「? エナさん、身体は平気ですか?」

「えっ…あ、ああ……」

「そうですか……よかったです!

 さ、いなくなったイオさんとアリアさん?でしたっけ副団長さん……その人を探しましょう!」


「マノ、それよりも君こそ身体は平気なのか? 自身の聖奥が足に被弾していたが……」

「あ、はい。全然大丈夫ですよ。

 魔宝石の加護を自己再生能力限定で最大にしていたので!」

「そうか……。

 しかし、すごいな。 どうやったらあんな戦術を思いつくんだ?」

「戦術?」

「あの足で取り押さえて逃げれないようにする戦術だよ」

「あー……あれですか? あれは戦術じゃなくて脳筋ですよ?」

「脳筋……あれがか?」

「はい。

 速すぎて攻撃は当たらないし、スピードは当然勝てない。

 防御力を上げても、こっちの魔力が再利用出来なくなるぐらいに消費したらジリ貧で負けちゃう。

 だったら、動きを読むんじゃなくて動きを止める方法を……っていうのをケガ人を盾にする的な話ししてた時に思い付いたんです」

「あの時にか!?」

「はい。 盾って攻撃を受け止めるための物じゃないですか。 それで、ワザと攻撃を受けて一度、距離を詰めればコッチが攻撃を仕掛けるチャンスになるなぁ…って」

「…………」(それを考えるのは簡単であっても、実行して一度で成功させるとは……流石は大罪の悪魔……)

「まあ、これぐらいならエナさんも思い付いてましたよね……あはは……」

「思いつくか以前に、それで失敗するとは思わないのか!? もう少し自分の身を……」

「失敗するかもとは思いましたよ」

「! じゃあ、どうして…」

「そんなの……」


「そんなの、エナさんを助けたいからに決まってるじゃないですか」

「助けたいって……そんな下らない理由で自分の命を…!」

「でも、エナさんはアタシを助けるために、この世界を歪ませてでも時間を戻してくれたじゃないですか」

「! それは、騎士として人命を守ろうと…」

「じゃあ、アタシもそれで」

「それ?」

「アタシも、アタシに優しくしてくれた人を守りたいっていうです」


 したり顔でエヘン!と腰に両手を当てる。


「……ぷっ。 ふふっ……ははっ!」

「えっ? なんかおかしいこと言いました?」

「いや、誇らしげな顔をしているのがあまりにも幼く見えてしまってな……」

「幼くないですぅ! これでも生まれてから数百年は経ってます!」

「ふふふ…分かっているよ」


(勘違いをしていたみたいだ。

 この娘は、悪魔だから強くいられるんじゃない。

 強いからこそ、悪魔であってもこの娘でいられるんだ)

「マノ、ありがとう」

「…………はい!」


 エナから受けた謝意の言葉にマノは屈託の無い笑顔を見せたのだった。


「そういえば、マノ。 大罪の悪魔はもっと昔から存在した気がしたんだが…俺の勘違いだったか?」

「あれ?そうでしたっけー?」

「ははっ…。 では、数百年という事にしておこう」

ご覧いただきありがとうございます。

次回は9月28日18時に投稿予定です。

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