表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界王子の学園生活記  作者: 時計直し太郎
2/4

第一話 トウキョウってどこですか?

「うっ、うーん。」


次に目を覚ましたのは、どこかの民家の屋根瓦の上だった。


「えっ、えっ?どこだここは?メイナードは!?

 ……うわっ!」


ドシン!!


「いてて……。」


どうやら急いで起き上がった拍子に足を滑らせ、屋根から転落してしまったようだ。


(あれっ、でも思ったより痛くないな。……芝が敷かれているのか。)


落ちた場所には緑の背の高い芝が一面に敷かれていて、けっして広いとはいえないような民家の庭のようであった。


「なんだこの音は?

 ……おい!兄ちゃん、大丈夫か!?」


声のする方に目を向けると、僕がいる庭の持ち主であろう男が家から出てくるところだった。


僕は自力で立ち上がり、駆け寄ってきた男に言った。


「僕は大丈夫です。

 ……あの、ここはどこですか?

 スペランツァ王国――ではないですよね?」


周囲を見渡す限り木造の民家のような建物が連なっているが、王国では基本的に石造りの建物ばかりが建っている。

北部の森林地帯には足を運んだことがないからわからないが、こんなに民家が密集しているような場所ではないはずだ。


すると、その男――中年で無精ひげを生やし、タバコを加えた男はキョトンとしながら答えた。


「ここ?ここはトウキョウのオオタクだ。

 スペなんちゃら王国?さあ?聞いたことあるような、ないような。

 まあ、あったとしても俺は地理が苦手だからわからないな。

 ヨーロッパ圏とかじゃないのか。」


トウキョウ、オオタク、ヨーロッパ……。

聞いたことのない地名ばかりだ。

一体ここはどこなんだ。


「それはそうと、さっきすごい音がしたんだが……。

 あっ、ケガしてるじゃないか!」


そう言われて、改めて自分の身体を見ると、右腕にちょっとした切り傷のようなものができていて、血がでていた。


「これぐらい、気にしないでください。

 すぐに治しますから。」


僕は、血の出ている腕を抑えて、初級回復魔法をかけた。

回復魔法は得意ではないが、この程度ならどうにでもなる。


「ほら、もう治りましたから。

 お気遣いいただきありがとうございます。」


そういいながら、男の方に視線を向けると、男は目を丸くして、口をあんぐり開けていた。

さっきまで口に加えていたタバコは地面に落ち、芝に火が燃え移ってしまっていた。


「ちょっと、大丈夫なんですか!芝が燃えちゃってますよ!」


僕が呼び掛けても、男は心ここにあらずという感じで聞いていない。


「水の精霊よ!我がレオン=スペランツァの名において慈雨をもたらせ!

 アクア・グレース!」


僕は、まだ茫然と突っ立っている男を横目に、水魔法で消火した。


(ふうー。何とか消火はできたものの、メイナードに杖を奪われっぱなしだから、大きな魔法を行使できないな。

 今回はまだ、燃え広がってなかったからよかったけど。)


「あっ、あの、兄ちゃん?……」


「はい?」


男は眼下の散り散りになった芝には目もくれず、なぜか動揺しつつも僕を見据えて言った。


「に、兄ちゃんって、もしかして、ま、魔法使えるのか?」

 

おかしな質問をするものだと思いながら、


「はい。もちろんで……うっ!」

 

僕は答え終わらないうちに男に口を押えられ、そのまま家の中へと引きずられていった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ