プロローグ
初めて、投稿する作品です。
初心者で、至らない部分も多いかもしれませんが、精一杯がんばります。
「残念でしたね、王子様。
あの研究資料さえみなければ、もう少し生き永らえたかもしれませんのに。」
目の前では、漆黒のローブを纏った父上の弟――つまり、僕の叔父であるメイナードが杖を構え、狙いを定めている。
(くっ、ここまでか。
すみません。父上、母上、シェリー、許してください。)
死の間際だというのに、恐怖よりも家族の顔、思い出。
そして、守ってやることができなかった後悔と自責の念でいっぱいだった。
叔父は実の兄である国王が存在した事実を国王諸共抹消し、自身が王になり替わろうとしていた。
僕はそのことを知ることができたのに、止められなかった。
(誰よりも、強く、たくましい国王である父上。
いつだって深い愛で僕を包み込んでくれた母上。
――そして、僕の可愛い妹のシェリー。
どうか、ご無事で。)
「安心してください。時期にご家族も貴方様のもとへ送ってあげますよ。」
僕は不敵に笑うメイナードをキッと睨んだ。
「そうだ、王子様。最後に何か言い残すことはありませんか?」
「あなたなんかの好きにはさせません!
例え、この命が尽きたとしても必ず――必ず国を、家族を守ってみせます!」
僕はこの国の王子だ!
どんな状況であっても、希望を持て。父上の教えだ。
「ふーん。そうですか。叶うといいですね、その夢。
その勇気を評して最後は貴方様が覗き見た資料に載っていた魔法で葬ってあげますよ。
……では、さようなら。」
メイナードは言い終わるや否や詠唱を始めた。
ロストマジックか。
具体的にどの魔法かはわからないが、まともに食らって生きているようなものではないだろう。
(さすがに、杖を奪われて、手足が拘束された状態じゃあもう逃げられないな。
せめて何か一つでも、手掛かりを残せたなら……。)
僕は苦肉の策でわざと皮膚を傷つけ、血で床を濡らした。
(どうか、気づいて。エルマー。)
僕はメイナードの杖から発せられた白い光を浴び、徐々に視界を失っていった。