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アヌス・オブ・アヌビス  作者: ディ・オル
第一章 前編
28/51

帰還

一章はひとまずここで終わります!

グリフォンを討伐した二人は、シンジュクへと戻った。もう時間も良い頃合で、酒場からは楽しげな声が聞こえてきた。道中、シグレはグリフォンの羽根の有用性を説き、軽率に使わないようルーシアに言い聞かせた。

激戦を繰り広げた二人は精根尽きていた事もあり、シンジュクへ来るなり別れ、互いに休息を取る事になった。


シンジュクでも少し高級な宿を借りて、ひと風呂浴びた後だ。ルーシアは酒場へと来ていた。今日あった出来事を誰かに話さずには居られなかったからだ。

「グリフォンを倒した」と得意げに自慢するルーシアだったが、始めは信じる者は皆無だった。グリフォンとルーシアではレベルの差があり過ぎたからである。法螺吹きエルフだ、と一蹴する者まで居た。


「難易度“GOD”だろう? 北のプレイヤータウン、サッポロっつったか。そこに居るニナっていう奴なら出来るかもしんねえけどよォ。中級者には無理もムリムリ」


「おめぇ、『ムリムリ』って。何だかウンコしている音みてぇだなぁ!」


「「「わはははははは!!」」」


ちょくちょく下ネタを挟んでくる事にも腹が立ったが、聞く耳を持たない酔いどれオヤジ達には流石に参っていた。しかし自らは短気だ、という自覚があった為、グッと堪えて必死に弁解する。そして、オヤジ達はルーシアが入手したグリフォンの鉤爪を見て、ようやく信じるのだった。


「一緒に戦ったのって、あの駆け出しの冒険者か?」


ルーシアは大きめの円卓に座して、複数人と語り合っていた。酒も入りご機嫌になったルーシアに、隣の中年男性が問いかけた。

ルーシアが肯定すると、皆一様に信じられないといった様相だった。


「なんか、チートとかバグでも使ったんじゃねぇか?」


「……ん、そういやシグレって。もしかしてあのSHIGUREか? ランキングにいつも入っている、あの」


「“世界ランカー”のか? いやいや! それにしてはレベルや装備がお粗末すぎるだろう!」


次々に口を開く一同。バグを使ったのは事実であり、本人も世界ランカーだと豪語していたのをルーシアは思い出していた。

ルーシア自身、“SHIGURE”という世界ランカーの事は知っていた。ランキングでは常に上位に組み込み、プレイヤーバトルでは無敗。「アヌビスゲートで日本と言ったら、シグレ」とまで言われる程の存在だったからだ。

しかし、一緒に冒険した男がその“シグレ”と同一人物なのかどうか、ルーシアには分からなかった。証拠も無い。その為、黙っておこうと思った。




シグレはシンジュクに戻った後、武器屋で装備品を調えていた。現在のレベルに合った武器と防具を見繕う為である。その際、入手したグリフォンメイルは売り払っておいたので、潤沢な資金を得られる事になった。結果、装備は磐石とも言って良さそうである。

満足したシグレはその後、夕食を済ませ、宿屋を借りた。明日はドラゴンを倒すのだ、と昔の記憶を想起しつつ、寝転がりながらアイテムボックスを開いた。そして、何気なく今日獲得したグリフォンの羽根を取り出す。


《どこへ飛びますか?》


・シンジュク

・オキナワ

・サッポロ

…………

……


「どういう事だ……ッ」


ここ五ヶ月の記憶は無い。しかし、やはり以前からずっとこのゲームをプレイしていた事は確かなようだった。

マップ画面を開くと、グリフォンの羽根はこのシンジュク以外、各地を点々と指し示した。




第一章<了>

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