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アヌス・オブ・アヌビス  作者: ディ・オル
第一章 前編
23/51

VSグリフォン②

「グリフォンが出現するトリガーがあるんだと思う」


解答を促すルーシアを引き止め、俺は安全を確認してから思案してみる。

前回グリフォンが出現した時を想起してみよう。最初に正面のモンスターと遭遇し、退却しようとしたらバトルウルフが来ていた。すると、天候が激変し、大雨や雷光と共にグリフォンが登場した。

今、頭上を見上げてみても、グリフォンが現れるエフェクトは視認できない。――何かがグリフォン出現のカギになっているのだ。つまり、何か条件を満たしてしまうとグリフォンが出現する仕組みとなっている。

ゲームとはプログラムだ。この世界がゲームの中なのか、現実世界なのかは置いておいて、アヌビスゲートを踏襲しているのは間違いない。であるならば、この世界にもプログラムが走っている筈だ。


「えっと。つまり、あのゴリラと交戦が開始するとグリフォンが出てくるって訳?」


「理解が早くて助かる。正確に言うとあのゴリラとのエンカウントが条件になっているかどうかは分からない。だがその可能性は高い、という事だな」


正面のモンスターとの接触か、バトルウルフの出現。このどちらかがトリガーとなり、グリフォンが出現する。或いは一定以上の時間経過か。

……いや、それは無いか。時間経過が条件だったら、もう現われていても良い頃合だ。

何故、こんな事を気にしているかと言うと、戦闘が開始すると俺の異能<テンパーセント>が発動してしまうからだ。そうすると逃げ遅れてしまう。グリフォンが出現したら最初に衝撃波の攻撃が来る。それは、広範囲にダメージを与える技だから、遠くまで逃げて回避しなければならない。尤も、ジャンプしてもかわせるが、俺のジャンプ力はこの異能のお陰で十分の一だ。グリフォンが出現する前に、安全な場所まで俺は移動していなければならない。その後、グリフォンと戦闘中のルーシアと合流する。そうしたら、グリフォンの背後からこっそり回りこんで懐にダイブする、というシナリオなのだ。


「じゃあ、シグレさんだけ湿地帯から森まで戻るの? だったら最初から着いて来なくても良かったんじゃ……。アタシ独りだけ先に戦闘開始して、後からシグレさんが来る、とか」


「それも考えたんだが……」


ルーシアの提案は確かに正しい。ちょっと可哀想だがルーシアだけ戦渦に放り込んで、俺は後から合流すれば良い。それでグリフォンを倒せば良い。だがこの案は却下だった。

……と言うのも、まずバトルウルフが出現するポイントが正確に把握できていない事。もし森へと戻っている途中でバトルウルフと遭遇した場合、俺はたちまち殺されてしまうだろう。

第二に、グリフォン出現の条件の問題があった。先ほどは雑魚モンスターとのエンカウントが条件だと言ったが、もしかしたら別の、他の何かがトリガーになっている可能性が考えられた。例えば“男性プレイヤーがモンスターと接触した時”や、まさか……あり得ないとは思うが“初心者プレイヤーが雑魚モンスターと接触した時”など。何がしかの限定条件がある可能性も考えられた。何故そんな推測に及んだかと言うと――

――だって、通常のゲームで考えてみて欲しい。初心者にラスボス級モンスターをぶつけるなんて、製作会社はどうかしているだろ? 悪意しか感じられない。逆に言うと、“悪意を感じる”のだ。偶然かもしれないが「俺という人間を排除する為にグリフォンを用意しました」という、狡猾ささえ感じずには居られないのだ。


「じゃあ、どうするの?」


「俺がゴリラを倒す。それで確実にグリフォンが出る条件は満たされる……と思われる」


「た、倒せるの? その弱さで?」


「失礼な! なんとかする! ……ゴリラ達を倒したら、俺はそのまま行ける所まで走り抜ける。走り抜けて、グリフォンの衝撃波をかわす」


打倒ゴリラを告げると、ルーシアは苦々しい顔をしていた。だが、こうするしか無いのだ。グリフォンの近くに居たら俺はダメージを受けて死んでしまうので、前方か後方に一度退避するしかない。だが、後方からは強敵が迫ってくる。だとしたら俺は前へ進むしか無いだろう。


「成程ね。その代わりアタシはここに居残って、バトルウルフを撃破しながらグリフォンの相手をするって訳ね?」


上等じゃない! ――とルーシアは付け加えた。勝気な笑みを浮かべて、ショットガンを肩へと担いでみせた。

ともあれ、これで作戦開始だ。最弱になってしまった俺だが、見せてやろうじゃないか。世界ランカーの力って奴をさ。

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