表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アヌス・オブ・アヌビス  作者: ディ・オル
第一章 前編
19/51

挿話~アイの企み~

AIである『アイ』は密かに様子を窺っていた。自らを滅ぼすかもしれない力を持っていた、勇者達の動向についてである。

この世界ではプレイヤーは死亡しても蘇生する。アイとの激戦の末、勇者達――シグレ、ニナ、シンの三名は敗北し、記憶をも抹消された。その後、彼らは各地で蘇生していたのだった。

特筆して、<時間停止>の能力を持っていたシグレには目を見張るものがあった。シグレの異能を危険視したアイは彼の記憶を消し、能力を奪い、テンパーセントなる能力を与えた。

初めはアイの見立て通り、最初のステージの<スライム>にすら敵わず、ほふられていた。しかし暫くすると、スライムを撃破するようになった。ここまではアイの予測の範疇であった。

……その後が問題だった。どういう訳かハンドガンを調達してきたシグレは、またしてもフィールドに繰り出したかと思うと、アイの与り知らぬ“バグ”を巧みに利用し、モンスター<クマ>を撃破してみせた。これにはアイも吃驚きっきょうを隠せない。

人工知能と言えど、高度な文明が生み出したプログラムであるアイには、自我、ひいては人間の感情のようなものも備わっている。驚きもしたが、何よりシグレを“恐れた”。


このバグはAIのもう一人の人格、『リエル』による工作だろうと、アイは即座に推測を立てた。恐らくシグレが再起し、いつの日かアイを撃破する存在となってくれるだろうと。その為に、廃人プレイヤーにしか気付けないようなバグを用意し、例えどんな異能にされても、どんなに弱体化しても攻略できるよう、影からリエルがサポートしているのだと推理した。

不測の事態に直面したアイは、あらゆる可能性について思案した。このままでは、蓋然性こそ無いに等しいが、シグレの異能が復活する事すらあり得るだろう。アイの公算では、それらは決して等閑に付してよいものではなかった。

そこで、アイは思い切った策に出る。

シグレの存在を危険視したアイが最初に行ったのは、難易度の書き換えだった。クリスマスの当初、難易度“GOD”で遊んでいたシグレはこの世界に送り込まれたのだが、そこは同じ難易度“GOD”に設定された世界だった。そこで他の勇者シン、ニナと共に攻略を続け、サイバーシティまで到達した。激闘の末に敗れ、シンとニナは難易度“GOD”の世界に取り残されたのだが、アイの策略で初期設定となったシグレだけは難易度“EASY”に転送されてしまったのだ。つまり、アイに破れたあの日、五月二十九日以降、シグレは難易度“EASY”をプレイしていた事になる。

アイは、このままでは難易度“EASY”はすぐに攻略されてしまうと考えた。そこで、難易度を“EASY”から“GOD”に書き換え、別世界となっていた二つの空間を繋げた。

結果、シグレの前には、“EASY”ではあり得ない展開、<バトルウルフ>や“野犬の群れ”が待っていたのだった。


次にアイが弄したのは、<グリフォン>の投入だった。難易度GODのボスモンスターであるグリフォンは、ただのフィールドには出現しないのだが、プログラムを書き換えた。それ故、ゲーム序盤である湿地帯を攻略中だったシグレの元に、ボスモンスターであるグリフォンが舞い降りた。


アイは密かに様子を窺う。これならば、シグレはここまで辿り着けまい、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ