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はじかれ者は復讐しない。  作者: 桜守
復讐しないはじかれ者と復讐したい魔剣
5/5

 はじかれ者と契約

 僕は、頭の中で浮かんできた疑問をそのまま魔剣に聞いてみた。


 「ねえ、魔剣さん。君は僕が国の所為でここに送らて来たことを知ってるの?」

 [そのようなこと、聞いていたからに決まって…あ。]

 「…はぁ、やっぱりね、君さぁ、この迷宮区に干渉できるでしょう。」

 [!……]


 僕の質問に魔剣は答えるのをやめ、黙秘すようだが今更だろ。


 大体、色々おかしいと思っていたんだ。

 まず、ここが迷宮区の最下層の最奥だということに。

 普通に考えてみれば、そんなことはあり得ないはずだ。


 ボスも倒さず先に宝部屋に迷宮区が用意した罠で飛ばされ、その宝部屋には厳重に封印されていた意思を持った魔剣があり、守るべき扉を破壊してまで襲って来たボス(ヒュドラ)

 ゲームとかなら裏技を通り越してもはや致命的なバグだ。

 

 もし、バグで無いとするなら、これらの出来事には第三者の介入があったという可能性が出てくる。


 なら、その第三者は誰か?…僕を罠に無理やり嵌めた騎士?それを命じた国?クラスメート?どれも無いだろう。

 前2つは確実に僕を殺す意思があるけど、やり方が雑というか回りくどすぎるし、こんなにも強力な武器が封印された部屋に送って生き残っていたら意味がない。

 残りのクラスメートには明確な殺意を抱かれているか解らないけど、僕を迷宮区の好きな場所に送る能力なんてものはなかったはずだし送る意味も無いだろう。


 では、誰が?その答えは、目の前に存在するこの魔剣なのだろう。


 この魔剣はさっきの質問に、聞いていたと答えた。これは、僕とあの騎士との話の事だろうが、ここから僕と騎士がいた場所までどのぐらい離れてるか定かではないけど、大声で叫ぼうが中層から最下層の最奥まで聞こえる訳がない。

 つまり、この魔剣は何らかの方法でこの迷宮区に干渉できるのだ。


 だがその干渉力もそこまで大きくないのだろう。

 この迷宮区に大きく干渉できるなら既に自分で封印を解き、自力でこの迷宮区を出て手頃な人間を乗っ取って暴れていただろう。


 それをしないという事は、迷宮区内の音を聞いたり僕みたいに転移トラップで飛ばされた人間をここに引っ張ってくる事ぐらいなのだろう。


 「…まぁ、アレ(ヒュドラ)については僕の軽率さが招いたって事かな。」

 

 例え、ヒュドラが隣の部屋にいる事を知ってたとしてもね。


 [クッ、クッハハハ、なるほど我は汝の事を少し見誤りしていたよ。…迷宮区内の様子では、従順で御意しやすいと思ったのだがなぁハハハ!]

 

 唐突に大声で笑いだした魔剣。

 

 なるほど、どうやらこの魔剣は聞くだけでなく、迷宮区内の様子も見る事が出来たのか。


 [クックク、さて、そこまで分かるならばこれからどうすのだ?]

 「…はぁ、君ほんといい性格だよね。」


 僕は軽いため息を出しながら答える。

 この魔剣は、僕たちがこの迷宮区に入った初日から今まで僕らを、いや迷宮区に入った人間全てを監視していたのだろう。

 そして僕が戦闘能力がなく、クラスメートや騎士から良い様に扱われ、あの騎士の話ぶりから国からも殺される立場になった僕を魔剣が利用しようと考え僕をここに呼び出した。


 助けに来る人間はいない、国からその命を狙われるなんて、魔剣にはかなり都合が良い。

 しかもその事を分かっていて、どうするか。っと聞いてくるのから性格(たち)が悪い。


 [ふむ、汝に案が無いのなら我から一つ提案があるぞ。]

 「…提案?」

 [あぁ、汝は我と正式に契約を交わさないか?]

 「契約…」

 [そうだ、先ほどのモドキを倒す為に貸した力よりも強力な力を汝の命尽きるまで、我が汝に貸そう。そうすれば国の影に怯える事など無くなるぞ!]

 「……」

 

 胡散臭い。

 一度、身体を乗っ取られた身からすれば、この契約とやらの裏に何かしらの意図を感じる。

 もしかすると、まだ僕の身体を諦めていないくて《状態異常完全無効》を掻い潜る何かで乗っ取るつもりか、いざという時に裏切ってみせる可能性もある。

 だけど、自身を守るすべがないの事実、あのヒュドラを倒すほどの力が味方になれば心強いのだけど…


 胡乱な目で魔剣を見ながら考えていると。

 

 [安心してよいぞ。契約が果たされれば我は、汝を勝手に操ることも裏切ることも出ぬからな。]


 と僕の心を読んだかのように自信満々に話す魔剣に僕は。


 「…わかった、契約をしよう。」

 [ほう、随分あっさりと決めるのだな。]

 「まぁ、ここで悩んでいても解決にはならないし、…2度も命を助けてもらっているからね。」

 [2度?]

 「うん、2度ね。」


 2度目はさっきのヒュドラ、1度目はここに呼ばれた事だ。

 もし、僕がここ以外の下層の何処かに飛ばされていたなら確実に魔物の餌食になって死んでいただろう。

 それが、僕を利用する為でも命を救われた事実に変わりないのだから。


 [ふっ、汝は本当に面白いヤツだな!]

 「それはどうも。で、契約だけど僕はどうすればいいのかな?」

 [そうさなぁ、まずは、我に名をつけよ。] 

 「名前?」

 [そうだ、剣になってから我に名が無いからな、我に名が無ければ契約が出来ん。]


 僕は、なるほどねっと呟き魔剣の名前を考え始める。


 なまえ、名前っと何が良いのかなぁ。

 有名な魔剣だと、グラム、レーヴァテインとかで日本だと村正だっけ?…まぁ、そんな感じかな。でもどれもしっくり来ないなぁ。

 う~んと唸りながら辺りを見ながら考えていると、先ほどこの魔剣に真っ二つに斬られたヒュドラの死骸が目に入った。

 何度、見ても物理法則を無視した切れの良さだよな。ん~あっ!そうだ、あの名前が良いんじゃないか。


 [おい、まだ決まらぬのか?]

 「えっと、大丈夫!今、考えついたから。」

 [ほぉ、ならば言ってみよ。]

 「魔剣、ティルフィング…なんてどうかな。」

 

 魔剣ティルフィング、それは鉄や岩を容易に断ち切り、狙た獲物は外さないとされてる伝説の魔剣の名前だ。

 ヒュドラをあんな風に切り裂くのだから、その切れ味はその名に恥じないし持ち主に破滅をもたらす可能性がある所とか考えるとぴったりの名前だと思ったのだけど…

 僕が名前を言ってから一言も発さない魔剣に、ダメだったかと不安を抱き始めた所で。


 [ティルフィング…良い名じゃな!気に入った我はこれより魔剣ティルフィングじゃ]

 

 その喜んだ様子の声を出す魔剣にほっと一安心する。

 

 [では、我の名前が決まったところで契約の続きじゃな、と言っても後は汝の名を告げるだけなのだがな。]

 「えっ、それだけ!もっとこう何か指から血を出したりとかしないの?」

 [血を媒介にして契約を結ぶなど三流のする事、我は一流故に我が認めたならそこで契約なされるのだ!]


 その高い自身はいったいどこから来るのか謎なのだが、それを口にしてごねられても困るので黙って流す事にしよう。


 「それじゃあ僕は津賀野 宗也(つかの そうや)気軽にソウヤでいいよ。」

 [うむ、分かった。ソウヤ汝を我ティルフィングの主と認めここに契約成す。]


 ティルフィングが高らかに宣言すると僕の胸の内側が熱くなり、たしかに何かと繋がった感覚がした。


 [よし、パスがうまく繋がったよじゃな。]

 「パス?」

 [あぁそうじゃ、主と我の間に目に見えぬ道の様なものが出来て、我が力を主たるソウヤが命じれば十全に行使する事ができるのだ。]

 「なるほど。」


 さっきのは、ティルフィングとパスで繋がった感覚なのか。確かに熱くなった場所に意識を集中してみれば見えない何かが伸びてティルフィングと繋がっているような感じがする。


 [ほぉ、すぐにパスを感じるとはな、主は中々良い感覚を持っている。]

 「そうなの?…てかさっきから主って僕のこと?」

 [あぁ、我の主なのだから何の問題もあるまい。っとそんな些細な事は置いて、主よ一つ試したい事があるのだが許可してくれんか?なに、危険な事は一切ないからダメかのう。]


 今後、僕の主呼びが決まった事をさらっと流しながら頼みごとをするティルフィング。

 

 「…僕に害がなければいいよ。」

 [では何の問題もなの。早速…はあっ]


 僕の許可を得ると力を籠める掛け声と共に鍔に収まる紅い宝石が強い光を放つ。

 その余りに強い輝きにほんの一瞬目を閉じてやり過ごし、再び目を開けると目の前には黒いドレスに身を包み、宝石の様な紅い瞳に長い黒髪には紅い髪がラインが入り混じり、まるで精巧な人形のみたいな少女がティルフィングが刺さっていた場所に立っていた。


 「よし、上手くいったのう!」


 少女は笑みを浮かべ呟き、終えると自身の身体に問題は無いか確認するように身体を捻ってみたり、手を開いたり閉じたりして確かめている。

 

 「数百年振りの肉体じゃが問題は無い。がッ、何たることじゃ、我の優美なる姿がこんな幼い姿に変わり果ててしまうとは…くそ忌々しい、ヤツめに必ずこの報いを受けさやる!」 


 目の前に突然現れた少女は、自身の姿が不満なのか一人握り拳を作りここに居ない誰かの姿を思い出しながら怨みの籠った決意を宣言し終えると僕の方を真っ直ぐと見て


 「さぁ、主よさっさとこんな辛気臭い場所(迷宮区)から出て、共に復讐を果たそうではないか!」

 

 と高らかに宣言する少女に先ほどから置いてけぼりの僕の頭がようやく再起動する。


 「えーっと君は、ティルフィングなのか?」

 「もちろんだとも。主よ!幼くはあるがこの気品漂う姿!我、以外の有象無象が真似る事など出来はすまい!」

 「あーなるほど、ティルが残念な人?剣?だって判ったよ。で復讐って何?」

 「ティル?おぉ我の愛称か!いいな!で、復讐か?もちろん、ここを出て地上にいる我を封じた者や主をあざ笑い、始末しようとした国の者全員、皆殺しと地獄の苦しみを…」

 「落ち着いて。とりあえず僕は誰にも復讐なんてしないから!」 


 妙にテンション高いティルフィングを宥めながら僕は話す。

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