はじかれ者の始まり
突然だけど僕たちは異世界に召喚された。
それは唐突に起こった。
朝のホームルーム前の先生が来る少し前に突然、教室の床にアニメや漫画でよく見る魔法陣みたいな幾何学模様が浮かび上がり、光を激しく放ちながら教室にいたクラスの全員を飲み込んだ。
いつの間にか失っていた意識を取り戻し目を開けるとそこは、僕たちがいた教室ではなく大理石の様な床に綺麗な上端が敷かれ石で作られた壁に色鮮やかなステンドグラスがはめられた窓、まるで海外映画の中世期時代のセットみたいな大部屋の真ん中にいて、辺りには他のクラスメートがまだ意識が戻らないのか寝ていて白いローブを頭からすっぽり被った人たちが僕たちを中心に取り囲んでいる。
これは某小説サイトでよく見るパターンのヤツか盛大なドッキリのどちらかなど考えていたら、僕以外も目を覚ました生徒が出始めて「ここはどこだよ。」「ちょ、なにこれドッキリ?」「はぁ、なんだよコレ」「オイオイ、まさか。」と口々に喋りだし辺りが騒がしくなり始めた時、正面の扉が開き甲冑鎧を着た人たちが何人か入って来てその後に豪華な服を着た3名ほど中に入って来た。
3名の内2人が若い女性で姉妹なのか顔立ちがよく似ていて残るもう1人は頭に王冠を乗せた壮年の男性。まあ多分、見た目の感じから男の人が王様で僕たちと年齢が近そうな残りの2人が王様の娘のお姫様だろう。
王様が前に出てきて「異界の勇者、英雄の皆、ようこそ我れらが世界へ」とまるでファンタジー系ライトノベルのテンプレの如く僕たちに言い放った。
◆
異世界“ラスティア”、その西に存在する“イリアス大陸”は今大いなる危機が迫っている。
イリアス大陸の東に海を越え存在する異形の者たちが蔓延る“ベルガナ大陸”に一際力を持った種族がおり、その種族は魔族と呼ばれその魔族を統べる王……魔王がいた。
強大な力を持つ魔王は突如としてベルガナ大陸にほど近いイリアス大陸にある港町を武力を用いて襲い占拠した。
この出来事から魔王のイリアス大陸への侵略行為が始まり、今も所々で争いが起きているだが魔王並びにその配下の魔族は強靭で卓越した魔法の使い手が多く対抗するイリアス大陸の人々はその力の前に度々敗北を喫していた。
このままでは魔王によってイリアス大陸は支配され、この地に住む民は虐殺され奴隷となってしまう。この現状を変え世界を救うべくイリアス大陸、三大国家の一つである“ルーベェリア聖王国”が女神の信託とその力を借りて異なる世界より魔王を討つ者を召喚したのだ。
こうして何所にでもいる高校2年の一クラスが異世界へと召喚され今ルーベェリア聖王国の王城、広く豪華な装飾が施された謁見の間に集められていた。
そして僕たちは王様自らの説明を受けたけど、特殊な訓練も卓越した身体能力を持っている訳でもない極々普通の高校生の集団に言われても困るし荷が重すぎる。だが王様は異世界召喚された僕らは基礎能力がこちらの世界の人よりも高く、更に女神様から特別な力と呼ばれている能力を貰っているそうだ。
そんな僕らは鍛え抜かれた屈強な精鋭騎士たちを僅かな時間の訓練で容易く圧倒する事が出来て、《ギフト》の能力次第で軽く地形を変える程のものが存在するらしい。でも、僕らの命が危険な事に変わりないしそこまでしてこの世界を救う理由もない。
「突然連れて来られてそんなこと言われても困ります!。俺たちを元の世界に帰らして下さい。!!」
黒縁メガネを掛けたいかにもまじめそうな男子生徒…たしかクラス委員長をしていた人だ。がもっともな事を言うと他からもそうだ!帰せよ!、お願いします。私達を帰して下さい家族も心配しますから!などの声が端々から上がったが。
「すまないが、今はそれが出来ない。魔王めが女神様の力を封じ込めていて最早、信託は下らない召喚、送還もできぬのだ。」
どこか悲痛な面持ちで僕らに告げる王様の重みのある言葉に何の反論も上げるどころか声すら失い茫然に成り辺りは静まり返った。
魔王を倒さなければ元の世界に帰る事は出来ないし、魔王を倒さないと僕たちもこの世界と共に征服されるか殺されるだろう。こんなネット小説でお約束な展開が僕たちは召喚されて初めての出来事だった。
◇
ここで唐突だけど僕、津賀野 宗也について少し話をしよう。
と言っても特にこれといって凄いの能力を持っている訳でも顔立ちやスタイルが良い訳でもない。むしろ、身長は平均よりも少し下で顔も童顔で何処にでもいる普通の高校2年の男子生徒。そして友人が一人もいないボッチ学生だ。
普通は自分の事をボッチであるなんて胸を張って言う事じゃないのは理解しているんだけど、僕はあえて胸を張って言いたいし友人なんて必要なかった。
それは決して僕がコミュニケーション能力が低く他人と喋る事が出来ないとかではなく、愛想よく空気を読み話をする事も可能だけども僕はそれらを最低限にしか行わず、物心が付いた頃からほぼ喋らなし無愛想なままに今まで過ごしてきた。
その結果、いじめや悪感情を抱かられるまでいかなけどクラスでは浮いた存在だったの確かだ。これが異世界に来る前の僕なり評価でも周りから見てもそうなのだろう。
ただそれは異世界に来て悪い方に転換していった。
何故そうなって行ったのかそれは静まり返った中、王様が僕らの能力調べたいと言い始め僕の能力が解ってから変わり始めた。
僕らはこの世界の情報も生活するための経済力もなく、現状では元の世界にも帰れないと言われ反抗する気力すら削がれて、元の世界に帰りたいなら魔王を倒すしかないそんな状況で。
「まずは、《ギフト》能力やいろいろな適性を調べ各々に合った訓練をしてもらいたい。」と王様が僕らに言うと部屋に四角い蒼い半透明でまるで水晶みたいな石を運び入れた。
僕らの目の前に置かれた石は、この上に手を置き【オープン】と唱えればその人のギフト能力と能力値が解るのだそうで試しにと石を持って来てくれた白いローブを被った人が実演してくれるとゲームとかでよく見るステータス画面ぽい物が空中に映し出された。
「おお、すげぇ」「マジかよ、どうなってんだ」「なんかゲームみたいだな」「クフフこれで俺の時代が」初めて目にするファンタジーものに先ほどの暗い雰囲気を忘れてみんな少し興奮しながら、王様に促され恐る恐る一人ずつに石に触れて能力を確かめて行く。
クラスの皆が石に触れる度にに空中に能力が投影されていく。レベルやVITとかMPなどのRPGゲームみたいな各種能力値は先ほど試しにやってくれた人より高いか同じ位ただみんな当然ながらレベル1の状態でさっきの人のレベルは15でみんなと同じぐらいか少し低い能力値だから王様が言っていた通り僕ら確かにこの世界では普通の人と比べれば強くなるだろう。
しかも《ギフト》の能力が更にすごくって基本《異世界語》というの持っていて《身体能力倍化》とか《魔法威力増加》等の威力を増してくたり《結界魔法》や《影魔法》とかこの世界でも珍し魔法を使えるようになり《剣の達人》、《槍の達人》も少し武器の扱いを受けるだけで達人の域まで扱えるそんな戦闘に秀でている《ギフト》が多い人で4も持っていたりするのだから先ほどから王様や僕らの周りにいる人達は驚きざわめいているし、その様子を見てクラスの人達も表情が明るいしガッツポーズしている人もいた。
「次の方、前へ。」
僕の番までまってきたらしい。少し緊張気味に前に進み一呼吸したのちに僕は、
「【オープン】」と唱えた。
石が軽く輝きそして他の人達と同じ様に僕の能力も空中に映し出された。
「え?」
僕はその映し出された文字に驚きそれが声に出て体は動きを止める。
「なんじゃと、能力値は一般人並み、いやそれより低い。女神様からのギフトも大したこともない。こんなダメな異界人は初めてじゃ!」
記録をつけていた白髪の法衣をきたおじいさんが僕の能力を見て大声で酷評してきた。
それもそのはず、前まで能力を見たクラスの人達は大体の能力値が100前後なのに僕の能力値が平均10前後しかなく低いその上も《異世界語》と戦闘能力がない《ギフト》の2つだけだった。
「うわ、低っく」「お荷物かよ」「ないわぁ」等々クラスからも酷い声が上がり、憐れみ蔑みが入り混じった視線を周りから浴びる。
「はじかれ者か。」
そう、王様が呟きに近い声なのにクラスの皆や僕にもその声は届いた。どう意味で王様が呟いたか解らないけど、僕が一人何かが悪い意味で違うという事を理解した。
そこから僕は逃げるように鑑定を終えた人たちのいる所の端っこの方にすごすごと歩いていく。
「ん、おおお!なんと素晴らしい!」
突然、後ろから先ほどの記録をつけているおじさんから称賛の声が上がっていた。
その声にお退き振り向くとそこにはクラスの人気者の男子生徒が照れるように頭をかいている。周りのクラスの人達も「おいおい!マジか」「なんだよあれ」「チートかよ」等とどよめいている。僕も空中に映し出していたものを見る。
そこに映し出された数値がどれも平均7,800前後とかなり高くしかも《ギフト》が10個程もあり《剣の達人》とかじゃなく《剣聖》とかで前に出たものよりもワンランク上の《ギフト》がでていた。
「うむ、どうやら其方が勇者の役目を担っているのやもしれぬな。其方、名を何と申す。」
「え?あっ、はいユウト、神之木 勇翔です。」
急な王様からの声掛けで緊張したのか声が少し上擦っていたけどしっかりと王様を見ながら答える男子生徒に頭を小さく頷く様に縦に振り。
「ユウトよ、其方の力を余にいや、国のため世界の為に使ってはくれぬか。」
そう言うと王様は真っ直ぐ男子生徒を見る。その男子生徒も何か考えているのか目を閉じて、少しの間を置き再び目を開くと
「まだ、俺に何ができるか解らないけど……助ける力があるのなら、俺やります!」
しっかりとした口調で男子生徒は王様に応えると、どこからかパチパチと拍手の音が鳴り響き、周りの人たちもそれにつられて拍手しだし「いいぞ!よく言った!」「キャァ神之木君カッコイイ」「神之木に負けてられないな」と彼を褒め称えている。
正直僕は、なんでこんなにいい雰囲気になっているのか解らない。これから起こるかもしれない事に僕は不安を覚えながら照れながらも笑顔で周りに手を振る彼を眺めていた。