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モブキャラ風紀委員会の1日。

作者: BHc

どうも、初めまして、権兵衛です。

ノリで書いたものなので、登場人物達の変(?)な発言に関しては、御不快になられる読者様もおられるかもしれません。お読みになられる際は、ご注意下さい。

薄暗い大広間の、その中央にて。

円卓状に並んだ椅子の中で、一際大きいーーーー


ーーーー簡素な木の椅子に座った1人の男が、口を開いた。


「......さて、諸君。始めようかーーーー第1回モブ会議を」


     ◆ーーーー◇


ーーーー時には主人公にヒントをくれ、時にはかませ役として主人公になぶられ、時には日がな一日中村の名前のみを呟いている存在。

それが”モブ”である。

決して、それ以上でも、それ以下でも無いのだ。

だが、しかし。


「......何なのだ、最近のモブキャラどもはッ!! 実は世界最強だっただの、ハーレム生活を送ってるだの......ッ!!」


苦々しい、といった感じで話していた男が、そこで、堪えきれないように歯をギリッと鳴らして、大声で叫ぶ。


「挙げ句の果てに、主人公に取って代わる、だとぉッ!? 何なのだそれはッ!! 最早モブなどでは無いではないかッ!! ふざけるなッ!!」

「まぁまぁ、落ち着いて下さいよゲンさん。それが最近の流行りなんですから、仕方ないじゃないですか。モブキャラだった主人公が、異世界に行った途端に強大な力を得て活躍する。うんうん。作者や読者の願望が強く現れていて、とても興味深い設定じゃないですか」

「黙れ、村人Aッ!! それのどこにモブ要素があるんだッ!? ただのよくある異世界転移ものではないかッ!!」


”ゲンさん”と呼ばれた大男と、”村人A”と呼ばれた優男の論戦に割って入ったのは、先ほど”会議”の開催を宣言した男だ。


「あー......双方、静粛に。話が脱線しているよ。これじゃあ、な●う作品に偏った視点で文句を言ってるだけだ。君達は徒に他の世界の”(小説家)”との論争を引き起こしたいのかい? ......そうじゃないだろう。僕達がすべきなのは、モブ達を在るべき姿へと戻す、ただそれだけの筈だ。違うかい?」


男の発言に、”ゲンさん”と”村人A”は黙りこむ。

それを見た男は、話を続けた。


「さて、話を戻そうか。......では、今回の議題”モブキャラをモブキャラらしく”だがーーーー僕に、一つ案が有る。 その案とはーーーー」


おおおおっ、と沸き立つ円卓の人々を見渡しながら、男は、昂然と言った。


「ーーーー『”モブキャラ”に該当する人々から、顔を無くす事』だ!」



     ◆ーーーー◇



「”顔を無くす”、という言い方には少々語弊が有るな。正しくは、『顔を構成する目や鼻などの部位を削ぎ落とす』という事だ。......諸君は漫画を読んだことが有るか? あれらに描かれているモブキャラ達は、その殆どが顔を描かれていない。僕はそこから、この『顔を無くす』という案を閃いた訳だ」


そう説明する男に、一人の女が手を挙げて質問する。


「あの、質問なんですけど。顔を無くすって、具体的にどするんですか?」

「良い質問だ、道具屋の看板娘。それに関してはーーーーおい、かませ犬BとC、アイツ(・・・)を連れてきてくれ」

「了解でさぁ!」

「ラジャーっす、議長(リーダー)!」


”議長”に命令され、二人のならず者らしき男達が退出して行くのを尻目に、”議長”は”道具屋の看板娘”に向き直る。


「さて、先ほどの質問だが......私が最初に考えたのは、モブキャラ達の顔を物理的に削る、というものだった。しかし、この方法には、重大な問題が有るんだ。それはーーーー顔が削れたモブキャラは、本当にモブキャラなのか? という問題だ」

「成る程。確かに、顔が削れた人が居たら、何か過去に重大なエピソードがあったのかと思ってしまいますね」


”村人A”が納得したように頷き、それに”議長”が頷き返す。


「そうだ。当然、そんなことを思われるモブキャラはモブキャラではない。よってーーーー」

「「議長(リーダー)、連れてきましたぜ!」」

「ーーーーコイツ(・・・)を使おうと思う」


広間に戻った二人のかませ犬が連れてきた一人の男を指差し、”議長”は言う。


「この男はな、とある世界でーーーー」

「おい、お前達! ここはどこだ!? 何故僕はこんな所に居る!? ......クソっ、僕にはこんな所で油を売っている時間など無いのに......早く邪神の一柱【ティーリエーニ】を倒さないと、シャルの命が......ッ!!」

「ーーーーとまぁ、こんな風に主人公ーーーー世界を救う”勇者”として絶賛活動中だ」

「成る程。それで、この”勇者”を使う、とは?」

「ああ、それなんだけどね。この”勇者”の能力(チート)がーーーー」

「おい、無視するなっ! クソっ、この能力(ちから)は余り使いたくなかったんだけどなーーーー【禁忌魔法・世界改変】ッ!! ......ふっ、これで君達の存在は、世界から抹消されーーーー」

「ーーーーっと、こうやって、世界を変える事が出来るんだよ。どう? なかなかのチートでしょ、この”勇者”の能力。これを使って、世界自体を弄ってモブキャラの顔を無くそう、って事」

「なっ、何者なんだ、お前達はっ!? この僕の能力が効かないなんて......!? 邪神......或いは、まさか冥界神かッ!?」


”村人A”と”議長”の何事も無かったかのような問答に、堪えきれず叫びだす”勇者”。

その声に、”かませ犬B”が煩わしそうに答える。


「ったく、邪神だの冥界神だの、頭沸いてんのかてめぇは? ......いいか、ここはモブキャラのモブキャラによるモブキャラの為の空間だぜ。それに、てめぇみたいな明らかにモブキャラじゃない奴なんかが干渉出来る訳ねぇだろ? ちったぁ常識考えろや」

「え......? は......? え、僕がおかしいの? 何、何なの、これ......夢? 夢だよな? いや、夢に違いないだろ。あはは、こんな変な夢見るなんて、本当僕、頭沸いてるよなぁ......あははは」

「まぁ、話はそれくらいにしておいて。早速始めようか。”勇者”よ、世界を『モブキャラに顔が無い世界』に改変してくれ」

「あははは、『モブキャラに顔が無い世界』? ばっかじゃないの? あははは。夢でこんなこと考えるなんて、本当ばっかじゃないの、僕? あははは。......【禁忌魔法・世界改変】っと。あー、これでモブキャラに顔が無くなった。あははは」


何故か壊れ始めた”勇者”に、”議長”がこれ幸いと命令する。

その、本来世界を救う役割である勇者なら絶対拒否するであろう筈の内容を、夢だから~、と二つ返事で承諾してしまった”勇者”の能力が振るわれ、そしてーーーー



ーーーー世界は、【改変】された。



ーーーー『モブキャラに顔が無い世界』へと。


「......よし、かませ犬B・C、【改変】された世界の様子を見てきてくれ。”勇者”の能力がきちんと反映されているかの確認だ」

「了解でさぁ!」

「ラジャーっす、議長(リーダー)!」


再び退出していく二人を見送って、”議長”は一息吐いた。


「ふぅ......全ては、『モブ達を在るべき姿へと戻す』為とはいえ、中々大変だな......」

「何弱音吐いてるんですか、”議長”さん!」

「そうだぜッ!? 俺達がついてるんだ、何も心配することはねぇッ!!」

「そうですよ!」

「”議長”殿のお蔭で、我らは目標に近づいていけてるのじゃしな」


「”村人A”、”ゲン”、みんな......うん、ありがとう。みんなの気持ち、伝わったよ。ーーーーこれからも、『モブ達を在るべき姿へと戻す』為、我ら『モブキャラ』で協力し、励んでいこう!」

「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」」」」


”議長”の誓いに同調するように、広間中から雄叫びが上がる。

彼らの顔は、一様に輝いていた。何故なら、皆の【悲願】ーーーー『モブ達を在るべき姿へと戻す』ーーーーの達成を、夢見ているから。自分と同じ夢を追い求める仲間が居るから。

その固い結束力は、これからどんな障害に阻まれようと、全て乗り越えて行けるだろうーーーー


議長(リーダー)、大変でっせ! モブキャラ達の顔が無いから、このままだと息出来なくて死んじまいます!」

「なんだと!? 顔が無くても息とか出来るようにしてなかったのか!? おい、”勇者”! ”勇者”!」

「あは、あははは、あははははは、あははは」


ーーーー乗り越えていけるだろう。多分。

書き終わってから気付いたことです。

......これ、登場人物モブってない気がする。

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