第一話
ん...んん...?
やけにぞうぞうしい。
そこら中から動物や鳥のの鳴き声がしてきやがる。
くそ、頼むから寝かせてくれ...
枕に顔を埋めようとしたが、硬い、ざらざらとした木の感触が伝わってくる。
んん...?くそ、
俺はベットからでも落ちたのか?子供じゃあるまいし。
状態を起こし、ベッドに上がろうとする。
だがそこにベッドはなく、替わりに等間隔で並んでいる金属の棒があるだけだ。
???
一瞬、思考が追いつかない。
が、視界の端にメニュー画面があることからここはゲーム内だと分かる。
あ、ああ、コンソールつけっぱなしで寝てたのか。
だが、この状態はなんなんだ?
俺はまるで檻の中に入れられているようじゃないか。
VRMMO ≪ヴァーチャルリアリティーオンラインゲーム≫
そして、その代表作とも言われるソフト、囚われた迷宮(chaptive rabyrinth)は、ゲーム業界屈指の自由度を誇る
かくゆう俺もその自由度に魅了された1人であり、今やもうヘビーユーザーの域を越えているといっても過言ではない。
まぁいい。
明日に備えて早く寝なければ...
俺は手馴れた動きでメニュー画面を呼び出す
すると目の前にどでかいかたつむりが表示された。
おれ自身の種族であるジャイアントマイマイ、通称かたつむりだ。
この種族は背中、投擲武器以外の装備が一切つけられず、このゲームにおいてネタ枠中のネタ枠としても知られている種族だが、全ステータスがほぼカンストしているため、装備合わせ、性能は全種族のなかでもトップクラスだろう。
そしてその隣にはシステムコマンドの数々。
その中で一番下のログアウトボタンを押そうとするが、そこには何もない。
おいおい、こんなときにバグかよ、クソ運営が。
悪態をつきつつGMに連絡する。
だが、いくら待っても一向に繋がる気配はない。
辺りを見渡すと、俺と同じようにモンスターが檻入れられている。
さっきからうるさかったのはこいつらだ。
プレイヤー、ではないよな?
このゲームではほぼどんな種族でもなれるが、その場合キャラクターの上にユーザー名が出るようになっている。
ユーザー名がないということはNPCだ。
しかもさっきは気づかなかったが、外は見えないがどうやら何かで運ばれているようだ。
とりあえず、外に出てみるか。
俺は斜め上方向に体当たりを繰り出した。
基本、攻撃で影響を与えられないのは、自分のレベルマイナス50以上、又はクエスト関係オブジェクトのみだ。
だが、レベル950以上のオブジェクトとなると、伝説級以上となるので、壊れないことはまずない。
だが、威力が予想以上に威力が大きく、俺は勢い余って外へと投げ出された。
うおぉっ!
2,3回地面を跳ねたあと、ようやく姿勢を直すことができた。
辺りは、草原だった。
見渡す限りの大地。そして透き通るような大空。
これは、ゲームでもよくみる光景だ。だが、何かが決定的に違う。
このゲーム、こんなにグラフィックよかったか?
そう、このゲーム、囚われた迷宮(chaptive rabyrinth)は世界屈指の自由度を誇る替わりにグラフィックや、その他映像面で他のゲームに一歩劣っているところがあった。
だが今はどうか。
空はどこまでも見渡せそうで、大地は草の一本一本まで精密に見ることができる。
しかも、草花の香りまでしてくるという始末だ。
大型アップデートでも入ったのか?
そうだとしたらこのバグも頷けないこともない。
そうこう考えているうちに俺がさっきまで乗っていたであろう馬車の周りにいる乗馬している騎士らしき奴らがこちらに向かってきた。
「チッ、脱走かよ。めんどくせぇ。」
「おい、あんま傷つけんなよ。大事な商品だからな。」
「わーってるよ。」
三人の騎手の内、一人がめんどくさそうに剣を向けてくる。
試しに俺はそいつの一人を[鑑定]してみた。
スロウ シドガー
NPC│(ノンプレイヤーキャラクター)│
LV.25 職業:騎士LV 10 調教師LV15
HP200/200
アーミーホース
NPC│(ノンプレイヤーキャラクター)│
LV.20 職業:なし
HP500/500
なるほど、少しレベルが低過ぎるがこいつらは典型的な雑魚敵だろう。
これは何かのイベントだろうか?
手始めに魔法を使ってみる
簡易魔法発動≪グラビティボールLV7≫
このゲームの魔法は発動するレベルによって威力が変わり、そして自分のレベルがある程度に達すると、そのレベル帯で取得できる魔法よりも二段階以上下のレベルの魔法はMP消費無しで発動することができる。が、この効果で発動する魔法は大型モンスターや対プレイヤー戦には使えず、雑魚殲滅用にしか使えないのだが。
そして≪グラビティボール≫は、半径5メートル以内にいる敵を殲滅でき、殺せずとも行動遅延効果を与えることができるので、俺の最も愛用している魔法だ。
今、敵にはレベル20台が3体。攻撃を受けると同時にダメージエフェクトと共に消えるだろう。
だが、そんな生易しいものではなかった。
パンッ
発動した瞬間、辺りにその音が鳴り響いた。
辺りには、赤い雨が降り注ぐ。
次に見た瞬間、騎士のいた辺りには大量の血が広がっていた。
その中心部にはよく見なければわからないほどの、肉と金属の混ざりあった物体が落ちている。
いや、
いやいや、
なんだこれ。なんだこれ。
アップデートだとしてもこれはやりすぎだろ。
しかもこのゲームには年齢はなかったはずだ。
下手すりゃ訴訟もんだぞ、これ。
「ひ、ひえぇ...」
今の光景を見ていたであろう馬車の騎手のおっさんも腰を抜かしている。
まぁそうだろう。
逃げ出したと思ったモンスターに護衛が近づいたらいきなりぺしゃんこになったんだから。
いや待て、これがNPCの反応なのか?
あの三人の騎士、そしてこの騎手のおっさん。あまりにもリアル過ぎる。
とてもシステムで組まれている反応とは思えない。
まさか、な。
最近のライトノベルじゃあるまいし。
一瞬、異世界転成というワードが頭をよぎるがすぐに振り払う。
今はそんな下らないことを考えている場合ではない。
とにかく他のプレイヤーを探そう。
得たいの知れない焦りが込み上げる。
早く見つけなければ。
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この日、奇妙な出来事があった。
それは、1人のドライバーが警察に出頭したことだ。
人を引いた、と。
奇妙なのはここからだ。
警察がその車を調べたところ、血痕、皮膚の断片など様々な証拠が検出された。だが、肝心な死体がない。
データにも該当人物はいない。
そして、あろうことか防犯カメラにも写っていない。
この事は、新聞の地方欄に乗ったが、やがて皆忘れた。
処女作です。
ご意見、質問などありましたらよろしくお願いしますm(_ _)m