家事と仕事
新婚生活が始まった。
今日子の出勤は午後からなので、午前中は家事に精を出した。
炊事洗濯掃除。
独身時代、家事を嫌っていた今日子であるが、それは所謂‘食わず嫌い’であった。
実際にやってみると、家事は楽しかった。
一昔前に流行った「部屋とワイシャツと私」の世界。
朝はどんどんに早起きするようになり、部屋中の磨ける所はすべて磨いた。
だが、貴司は予想していた。
「これはすぐに破綻するな」と。
その予想通り、その生活が続けられたのは、2ヶ月程度であった。
ある日突然、今日子は動けなくなった。
仕事も家事も全く手につかず、ひたすらに眠い。
仕事は2週間休みをもらった。
そして、とりあえず眠った。
しかし、この事態を予想していたのは、貴司だけではなかった。
担当のカウンセラーも、両親も、職場の院長ですら、結婚後、一度は「落ちる」と予想していたのだ。
休みがすんなりともらえたのも、そのためである。
今日子は無駄に頑固なところがあった。
周りがいくら止めても、やりたいと思った事はやってしまうのだ。
それを理解した上での周囲の対応だった。
しかし、そこから2週間で立て直すのは、至難の業であった。
実際には、充分と言える程には回復しなかった。
だが、それ以上、休みをもらうのは、いくら何でも難しい。
職場復帰したものの、仕事はかなりきつかった。
また、家事は全くできなくなった。
貴司は文句も言わずに、ほとんどすべての家事を引き受けた。
「俺なら、家事は負担に感じない。一人暮らしが長かったから。」
貴司はそう言ってくれたが、申し訳なかった。
そして、仕事がきついと感じれば感じるほど
「専業主婦でも、食っていけない事はないんだぞ。」
という貴司の言葉に揺れた。
実際、今日子の給料は家計に入れていなかった。
そっくりそのまま貯金していたのである。
今日子の給料をあてにしない生活をする。
それでいて、今日子の仕事を応援する。
その2つを貴司は両立させていた。
だが、今日子は悩んでいた。
獣医師としても、主婦としても、自分はあまりに中途半端に感じていたのだ。




