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結婚式

そうして、ついに結婚の日がやってきた。

入籍は式の前日に済ませ、その日は式と披露宴である。


今日子はその日まで、実家で過ごしていた。

特に両親に改まった挨拶をするわけでもなく、その日を迎えた。


「いい加減に起きなさい!遅刻しちゃうでしょ!」

朝の弱い今日子は、いつも通りに母に叩き起こされた。

「まだ眠い~。」

特別、前夜に緊張して眠れなかったわけではない。

いつも通りの今日子の朝の風景である。


とりあえず、歯磨き、洗顔、トイレだけを済ませ、車に放り込まれる。

朝食は、父の運転する車の中で、母の作ったおにぎりを食べた。


式場までは車で1時間ほど。

次第に目の覚めてきた今日子は、大好きな90年代のアニソンを聴きながら、のほほんとしていた。


山口百恵の「秋桜」のような場面を多少は想像していたが、現実はこんなものである。


母が叩き起こしてくれたおかげで、何とか時間には間に合った。

花嫁の支度は時間がかかる。

だが、支度に入る直前に、貴司と貴司の両親に会った。

軽く挨拶を交わしたが、貴司の母はこれから黒留袖を着付けてもらわねばならないし、それは今日子の母も一緒だし、慌ただしくそれぞれの支度部屋に入った。


今日子は、まずヘアメイクをしてもらった。

今日子はアイメイクをすると、目がきつく見えすぎてしまうのだが、そこはやはりプロである。

オレンジ色のアイシャドウとブラウンのアイラインで、優し気な目元の印象を作ってくれた。

式は白無垢だが、カツラは使わず、地毛をまとめて、貴司と一緒に選んだかんざしを付けてもらった。

白無垢は、もともとぽっちゃり体形の今日子に、さらに綿を巻き付けて、茶筒体型に補正してもらった。

和装が最も美しく映えるのが、茶筒体型なのだそうだ。


プロの着付師が手早く着せてくれたが、それでもそこそこ時間がかかった。

自分の支度を終えて、退屈した母が覗きに来たが、邪魔なので追い返した。


そうして、支度が終わると、貴司と対面した。

貴司は本番の楽しみにとっておきたいからと、今日子の衣装は見ていなかった。

少し照れながら、「いいじゃん。」と、感想を述べた。

貴司の紋付き袴もなかなか決まっていた。

男の和装は、多少、恰幅の良いほうが、映えるのだ。


そうして、お互いの親族室へ。

そこには、今日子の両親と弟夫婦、叔母夫婦、従妹が来ていた。

弟とは久々の再会だった。

叔母夫婦と従妹も、である。

自分達のために、遠路はるばるやって来てくれた事は、純粋に嬉しく、彼らに礼を言った。


そうして、次は新郎側の親族への挨拶である。

貴司の親族は、正直、覚えきれない程いた。

互いの親族の紹介が終わると、次は親族の記念撮影。

それから、式が始まった。

式を行う神殿の前に、招待客が集まっていた。

今日子の友人達や、職場の院長の姿もあった。


神前式での挙式だったが、この時、ひとつまずい事が起こった。

雅楽の音が、聴覚過敏の症状を持つ今日子には、きつかったのだ。

普通の音楽なら大丈夫なので、雅楽に反応してしまうとは、今日子自身も考えていなかった。

今日子が辛そうなのに貴司も気付いたようだが、なかなか途中で式の流れの変更は難しい。

今日子は、これも試練と思う事にして、式に臨んだ。

お祓いやら三々九度の盃やらで、式は滞りなく終わった。


披露宴会場へ移動する前に、軽く化粧直しをしてもらった。


その間に招待客には、軽く飲み物が振舞われる。

そこに新郎新婦が入場する。


披露宴は純粋に楽しかった。

BGMはもともと今日子が好きな音楽を流したので、雅楽の時のように辛くなる事はなかった。


招待客の祝福を素直に受け、彼らに心から感謝した。


披露宴の途中で、今日子と貴司はお色直しに中座した。

退場する際、今日子は母にエスコートしてもらい、再入場する時は父にエスコートしてもらった。

父にエスコートされ、先に入場している貴司に引き渡される。

これが、なかなか感動の名シーンらしく、随分とシャッターを押す音が響いていた。

ウエディングドレスへのお色直しで、今日子が気にしていたのは、体形である。

ぽっちゃり体形が目立ち過ぎはしないかと。

確かに二の腕の太さまでは誤魔化せなかったが、補正下着のおかげで、何とか見られる姿になった。


ひとつひとつのテーブルをまわり、写真撮影して少しだけおしゃべりした。

本当はもっといろいろ喋りたかったが、そうも言っていられないのが、新郎新婦である。

スナップ写真の撮影は、今日子の弟がやってくれた。

普段、交流の少ない弟だが、式では兄弟として、役割を果たしてくれた。

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