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両親への挨拶②

今日子の両親への挨拶は、とりあえず済んだ。

次は貴司の両親へ挨拶しなければならない。


貴司は遠方の出身で、両親は郷里にいた。

新幹線か飛行機を使わねば、辿り着けない場所である。


だが、貴司は付き合っている女性がいる事は、両親に話していた。

そして、その相手が発達障害を持つという事も、知らせてあった。


貴司の両親の反応は「発達障害?なんだそれ?」というものだったらしい。

無理もない。

あまり知られた障害ではないのだから。


しかし、それから貴司の両親は、発達障害について、秘かに勉強していた。

もしかして、そういう女性が、息子の嫁になるかもしれない。

それが期待だったのか不安だったのかは、今日子には知るすべはないが、貴司が「結婚したい女性がいる」と言った時には、発達障害についてそれ相応の知識は、両親の中にあった。


貴司はまず自分の実家に今日子を連れて行こうとしたが、少々問題が起きた。

今日子の精神状態には波があり、波が沈んだ状態の時に、知らない場所への長距離旅行は難しかったのだ。


だが、「それなら、こちらから会いに行こう。」と、貴司の両親の側が、遠路はるばるやって来てくれた。

そして、今日子の自宅近くのホテルのレストランで、今日子と貴司、そしてそれぞれの両親とのお食事会になった。


「こちらが今日子さん。動物病院に勤めている獣医さんだよ。」

貴司はそう両親に紹介した。

「今日子と申します。よろしくお願いします。」

初対面の人間と打ち解ける事が難しい今日子ではあるが、何とか頑張って挨拶した。

「本来、こちらからお伺いすべきところ、ご足労いただいて申し訳ありません。」

今日子の父・登志夫は、そう言って貴司の両親に頭を下げた。

「いえいえ、そんな事は気にしなくて良いんです。今日子さんにお会いするのが楽しみで、ここまでやって来ました。」


食事会は終始和やかなムードであった。


貴司の両親に対する今日子のイメージは、「優しそうなおじさんとおばさん」というものだった。

「今度、今日子さんの体調の良い時でいいから、うちに遊びにいらっしゃい。」

と言われ、素直に「はい」と答えた。

この時初めて、今日子は貴司の生まれ育った場所を見てみたいという気持ちになっていた。


その数ヶ月後、今度は今日子の方が、貴司に連れられて、貴司の実家を訪ねた。

貴司の両親を「優しい人」と認識した今日子は、彼らに会う事に対して、緊張はなかった。


ただ、台所仕事は手伝った方が良いのか、しない方が良いのか、今日子にはわからなかった。

その場の雰囲気で、察して動く事ができないのだ。

そんな今日子の特性を予め理解していた貴司の両親は、「これは運んでくれる?」「今は座っていてほしいな。」などと、具体的な指示を出してくれた。

これは今日子にとって、ありがたかった。


「私は周りに気を配って、察して動くのは苦手なんです。ご迷惑おかけするかもしれませんが、何かお気付きの事があれば、遠慮なく言ってください。それが一番助かるんです。」

今日子も自分の特性を説明した。

「今日子さんは、もううちの娘と思っているから、遠慮はしないわ。それじゃ、洗い物も手伝ってもらえる?」


「気が利かない嫁」を貴司の両親はそれでも受け入れ、歓迎した。

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