今日子の両親
さて、貴司にプロポーズをされた今日子。
一応、付き合い始めた当初から、貴司は「結婚前提」と言っていたので、いずれはこうなるだろうと今日子も思ってはいた。
ここからはしばらく、発達障害とも獣医師とも関わりなく話は進む。
どんな障害があろうと、どんな職業であろうと、結婚する時の手順は特に変わりはしないからだ。
プロポーズの次は親への挨拶だ。
ヘリから降りた今日子は、とりあえずスマホを取り出した。
「もしもし~ママ?今、プロポーズされたんだけど。」
今日は遅くなるという連絡程度だと思っていた貴司は、いきなりの発言に、隣で聞いていて、泡を吹いた。
親への報告はしないわけにはいかないが、何も今すぐするとは思わない。
度肝を抜かれたのは、今日子の母も同じだろう。
「パ、パ、パ、パ、パパ!??今日子、プロポーズされたんだって!!」
という声が漏れ聞こえていた。
ここで、今日子の家族について紹介しておこうかと思う。
今日子の父は60代後半。
ちょっと自信家なちょい悪オヤジ。
自分の事は、出来る男でイケメンだと思っている。
基本的に我儘だが、娘には激甘。
今日子の母は70代前半。
良妻賢母と言って良いかもしれないが、天然ボケ。
我儘で自信家の夫には手を焼いており、娘に対しては超心配性。
また、今日子には3つ下の弟もいる。
自立心旺盛で、18で家を出て以降、ちっとも実家には寄り付かないが、両親は「便りがないのは元気な証拠」と、ほぼ放任している。
息子は放任のわりに、娘に対しては、飛びぬけて過保護。
子供の頃から「どこかおかしいかも?」と思いながら育ててきた娘で、さらに社会に出てからもなかなか自立できなかったわけだからだ。
今日子も両親が過保護なのは自覚していたし、担当のカウンセラーもそれは問題視していたのだが、ある意味、仕方のない事でもあった。
今日子は付き合っている男がいる事は、一応、両親に伝えていた。
というより、過保護な両親は、今日子が出掛ける際は、何処で誰と何をするのか報告しないと、外に出さなかった。
嘘が苦手な今日子が、交際相手を隠しておけるはずもない。
今日子の交際には反対こそしなかったが、両親は恐る恐る見守っていた。
しかし、まさか結婚するとは思っていなかった。
そのうち、男の方が嫌になって逃げるだろうと思っていたのだ。
「と、と、と、とりあえず、今から連れてきなさい!今すぐ連れてきなさい!」
そうして、貴司と今日子の両親の挨拶は、プロポーズのその日のうちに、決行される事となった。




