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闇に生きる者たち  作者: カビパン
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生きてくためには・・・

軽い話です。

 朝、気持ちの良い朝だ。まだ少し肌寒い春の日差しが心地よい眠気を誘う。

「ふわあ〜、こんな日は,陽に当たりながらゆっくりと・・・・」

再び、ベットに潜り込もうとした俺の耳に・・・・

「やっほーピスト!今日も元気にバカやってるぅ?」

むかつくほどノーテンキな声が、響き渡る。

気持ちの良い朝は、いつもの如くたった一人のアホのせいで、台無しになる。

「もうピストったら〜!」

そう言いながらコリーは、俺の布団をはぎ取る。こいつは平気で人のモン取るからな。

「うるさい、あほコリー・・・俺は起きたばかりなんだ」 

「なんで名前にアホってつけるの〜!私アホじゃないのに〜!」

なんでこいつは、いつもこんな元気なんだ・・・・(+アホなんだ)

「お・ま・え・は!!自分の事を頭がいいと思ってるのか!?」

「だって、私アホじゃないもん♪」

 そう言ってコリーは、俺に向けて日差しよりも眩しい笑顔を突きつける。

その笑顔を見ると、俺はいつも変な気分になってしまう。なんか、ドキドキする。こんな時は、あんまり目を合わせたく無い。きっと心底コリーにむかついている証拠だろう。


 俺の名前はピスト、ピスト・フィレンズ。相棒は、コリー・ブレスレット。

コリーは、こう見えても凄腕の盗賊<シーフ>だ。疾風<はやて>のコリーってゆう、通り名まであるぐらいだ。(盗賊なのに有名人なのも問題だが)

 俺達は、絶滅寸前の種族”ダークネス”の生き残りだ。二人とも親は居ない。ダークネスだから。ただそれだけの理由で、殺された。

 俺達種族は、古の昔より人々に恐れられてきた。人間のような下等種族を超越した選ばれた種族なんだ。それなのに・・・・・・それなのに、何でこんな貧乏生活をしなくちゃならねえんだ。

俺達は、自分達の特殊能力を活かした仕事をしている。はっきり言って、12、3歳のガキがやるような仕事じゃないことは確かだ。

 でも俺は・・・・

       それが、自分の天職だと思っている。


 それは、一通の手紙だった。

差出人は不明、ただターゲットの名前と報酬についてを書いているだけのシンプルな内容だった。


手紙 「嫁のナタリーを殺っておくれ、報酬はビックリするほどの額だよ。とりあえず、前金として半額の100ポソ(円とほぼ同じ単位)払っておくよ。後は頼んだよ」


 手紙の中には、文章の書いた紙と共に一枚のコインが同封されていた。それは、前金だけで今までにない破格の依頼料だった(物価は日本とほぼ同じ)

 俺はその文面だけで、依頼人を近所に住むメーゼル婆さんだと言うことを突き止め、ターゲットはメーゼル婆さん家の嫁、ナタリーだと言うことも調べ上げた。


「そこでおまえにやって貰うことは・・・・」

俺は、久々の黒装束に胸を躍らせながら、相棒のコリーに今回の仕事の作戦を伝えようとしていた。

「言わないで!

分かるよ!相棒だもん♪メーゼル婆ちゃんに一枚五万円のインチキ羽毛布団を売りつければ良いんでショ♪」

相棒のコリーは、柔らかそうな黒髪のショートカットをなびかせながら、その先を言い当てようとした。

「ちがうっちゅうねん!(えせ関西弁)」

でも金さえ入れば別にそれでも良いのかな?いや、ダメだ!もっと仕事にプロ意識を持たなくては!


「婆ちゃんは大事な依頼人だぞ。まずは、ターゲットの情報収集だ」

「そうゆうと、思ってたよ♪じゃあ、あとはこの疾風<はやて>のコリーに任せといて♪」

そう言って、コリーはその場をあとにした。しかし・・・・・・


「たっだいま〜!行って来たよ♪もう、ナタリーさんいい人だからすっごいおもしろかったよ♪」

「ふむ、ナタリーさんは良いひと。と・・・・

俺は、手帳にコリーの調べてきた情報を、ちくいち漏らさず書き込む。

「(カキカキ)って、ナンデヤネン!!あ〜、分かってた事なのに・・・・」

いつまでも、アホ。(フォーエバーあほ)

 落ち込んでばかりはいられない。こんな時こそ、プロとしての心意気を教えてやらなくちゃ!

「とりあえず、俺達の仕事はナタリーさんを殺すことなんだ。よけいな情は仕事の妨げになるぞ」

「こっろしコロシィ♪ナタリーさんを!ほうちょうめったザし〜〜♪」(ポップス)

そんなコリーを見ながら俺はいつものように、思うのだった。

「ダメかも・・・・」


          夜


 今回の仕事を確実にするために俺は、あるアイテムを使うことにした。

「これを使えば、一切の証拠を残さず確実にターゲットのみを殺すことが出来る。その名も・・・・

”楽々暗殺毒入りミカン”だ〜!!(賞味期限切れ)」

俺は、どっから見ても腐ってるとしか思えないミカンをふところから取りだして言った。

「す・・・・すごい!なんて恐ろしいアイテム。それならどんな相手もずたずたのバラバラだね♪早いとこ見切りシール張らなきゃ♪」


「じゃあ、俺がターゲットの目を引きつけておくからその隙に・・・・」

「分かったわ♪その隙に私が婆ちゃんに接触して、そのインチキみかんを売り込むのね♪」

「違う!その隙に”楽々暗殺毒入りミカン”をターゲットのみかんの中に混ぜておくんだ!」

「オッケェ〜、任せといて♪じゃあ3分後に突入ね♪」


          3分後


「夜分恐れ入ります。こちらニコニコ生活エンジョイ企業、キラキラ不動産の者ですがー」

ビシッと、黒装束でキメた完璧な変装だ。ぬかりは一つもない、失敗するわけがない!(売れること間違いなし!)

「きゃあ〜!!」

恐怖におびえる声が、辺りの闇に響き渡った。

「変態〜〜!!」

「な、何を!?俺はただのセールスマンですよ!」

ほうきを持ったターゲットに、ピストが追われていた。

「そんなこと言って、か弱い人妻に、無理矢理あんなことや、こんなことをする気なんだわ〜〜!!きゃ〜!」

シュッ!、ズバ!、バジュィ〜!!

ナタリーのジャブ、アッパー、懐からとりだした小型荷電粒子砲による、目にも止まらぬコンボが決まった。

「(コリー、うまくやれよ・・・・)」

プロの暗殺者は、仕事のためなら自らの犠牲をもいとわない。と、本に書いてあった。


「よし、今のうちに♪」

さすが盗賊。手慣れた感じで、ターゲットの住む家へと侵入した。

「これで良し♪じゃあ、そろそろ逃げよっかなあ〜♪」

暗殺者ルックに身を包んだ二人は、それぞれの任務を無事に遂行しその場から立ち去ったのだった。

一人は、うるさい夜にやたら目立っていたが・・・・・・


 次の日、アジトへと戻ってきた二人は任務の成功を確かめることにした。

「どうだ、うまくいったか?」

ピストは、ぼろぼろの体にむち打って、コリーに聞いた。

「オールオッケェ〜♪ぜ〜んぶ私の思い通りに、事が進んだよ♪」

「それは、心配だな・・・・」

ピストは消え入りそうな声でそう言ったが、呑気なコリーには聞こえてはいなかった。


 次の日、ピストは何とか回復した体を引きずりながらクライアントに依頼料を請求しに行った。

「いよいよだねぇ〜♪」

「いよいよだな」

二人は高鳴る鼓動を抑えつつ、クライアントの待つ家までやってきた。


 (ピンポ〜ン)

「メーゼル婆さ〜ん、居るか〜?」

「は〜い、はい、はい」

そこに現れたのは、若い女だった。

「あれ!?」

ピストは、その女に見覚えがあった。

「あなたは・・・・?」

女は、ピストの顔を見ると何かを思い出すような仕草をした。

「い、いえ!何でもありません。失礼しました」

俺は思い出されないうちにドアを閉め、しばらく呆然としていた。


 ピストが、驚くのも無理のない話だ。なぜなら、殺ったと思っていたターゲットが目の前で元気に応対してくれたのだから。

「な、なんで!?どうして生きていられるんだ。ちゃんと全部、楽々暗殺毒入りみかんにすり替えておいたのか?」

俺は驚愕に顔を引きつらせながらコリーに尋ねる。

「うん♪ピストに言われた通り、みかんを交換しといたけど、そのあとターゲットがそのみかん全部捨ててたよ」

「なんでそれを伝えないんだ!」

俺は叫ぶ。ということはターゲットはみかんを食べてないってことだ。

「また失敗か・・・・」

前向きなコリーとは裏腹に、ピストは落ち込むと底を知らないやつだった。

 二人は毎度のように、正反対の精神状態で家路を辿るのだった・・・・・・


「待ってたよ!ダークネス共」

アジトに帰ったピストを待っていたのは、げっそりとした顔をしたメーゼル婆さんだった。

「ど、どうなさいました?」

気のせいか、ピストの声は震えている。人を超越した種族としての自覚は全く無いようだ。

「あんた達の置いてったみかんを私が食べたのよぅ〜」

「え!あのみかんを?なぜ!?」

「どうだった〜♪」

メーゼルはコリーの質問に表情で答えながら、食べるまでのいきさつを話し始めた。

「変なみかんを嫁が捨てたもんだから、私がけしからんと思い食べたのよ」

「つまり、食い意地が張ってるんだね♪」

コリーのよけいな一言で、メーゼルの額に数本の筋が走った。

「あ、あの依頼取り消す事にしたからのぉ〜。嫁のコンボをみてたら、久々に戦いたくなってきたからね〜」

ピストは、そんな戦闘狂婆さんに戦慄を感じた。

「それと、フッフッフ・・・・」

不気味な笑い声と共に、婆さんの左手からナタリー”コンボ”に優るとも劣らない正体不明の波動拳的な衝撃波が放たれる。

 避けるのが不可能なほどの、当たり判定を持った正体不明の閃光。コリーは瞬間移動のようなスピードで避けきっていたが、ピストには成す術もなく直撃した。

不気味な笑いはしばらくピストの耳から離れることはなかった。


数日後

「これから、どうするか?」

二人は、けっこう深刻な状況になってきた生活費のことを話している。

「ま、いつもの事よね〜♪」

コリーの笑顔は今日もノーテンキだ。

「じゃあ、今夜も生活費稼ぎに行こ♪」


 俺達は人を超越した種族、ダークネスだ・・・・

俺達は暗殺を生業にしている。しかし仕事のほとんどは・・・・・・いや全てがコリーの盗賊スキルに頼りまくった窃盗だ。


「今夜も冷えるぜ」

「なんか、風つよ〜い♪」

ピストは強がりで、コリーはのーてんき。二人はいつも一緒だ。親が殺されたときも、長年住んでいた家が無くなったときも、二人はずっと・・・・これからもずっと一緒にいるだろう。

「あの家なんかよくない♪」


そして今夜も闇に生きる者達は仕事に出かける。


適当に読んで、楽しいなと少しでも思ってもらえればうれしいです。

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