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偽典ハムレット(二次創作ラノベ)  作者: 月山青雲
後編 復讐のハムレット
19/28

狂乱

 翌朝。

 夜明けの柔らかな陽光が海沿いの屋敷に降り注ぎ、窓の隙間から入る冷たい風がカーテンを揺らした。

 オフィーリアは、いつものように目を覚まし、着替え、黒剣を帯びて、寝室を出た。

 すると、庭園の方から何やら声が聞こえてきた。騒ぎが起きているようだ。


「おやめ下さい、ハムレット様!」

 

 侍女のひとりが叫んでいた。

 見ると、庭木の太い枝に縄を掛け、今まさに首を吊らんとする隻腕王子の姿があった。

 屋敷から侍女たちが飛び出し、たちまち王子は取り押さえられ、自殺は未遂に終わった。

 庭の芝生に座して放心しているハムレット。首に巻かれた縄が解かれてゆく。


 オフィーリアはその傍らに駆け寄ると、拳を固め、王子を殴りつけた。


「ハムレット、自殺を図るとは何事か!」


 憤怒の表情で怒鳴りながら、何度も顔を殴打した。血しぶきが飛ぶ。


「貴様を生かし、逃すために、我らがどれほど苦心したと思っているのだ!」


「お、お嬢様!」


 侍女たちが慌ててオフィーリアを押さえて制止した。

 呆然とするハムレット。腫れた顔で地面を見つめている。


「貴様には、これから為すべきことがあるのだ。いつまで塞ぎ込んでいるつもりか!」


 侍女たちを撥ね除け、さらに殴打を加えようとするオフィーリア。

 その時、黒装束を纏ったカールが屋根の上から飛び降りてきた。


「お嬢様、おやめ下され!」


 王子の前に素早く立ちふさがるカール。


「邪魔をするな! このような軟弱者、もはや生かしてはおけぬ!」


 オフィーリアは腰間の剣を抜いた。

 鞘から放たれた黒塗りの刃を見るや、ハムレットは震え上がり、傍らに居る侍女に抱き付いた。

 

「貴様!」


 オフィーリアはますます激昂した。


「なりませぬ! なりませぬ!」


 カールは両手を広げ、声を張り上げた。


「どけ、どかぬか!」


「殿下を斬りたくば、まずはこの老骨めをお斬り下されい!」


 老翁の必死の懇願に、オフィーリアは溜め息をつき、剣を納めた。

 そして、侍女の陰で震える王子を一睨みすると、屋敷の門から出て、砂浜の方へ向かって早足で去っていった。


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