表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

台風の目

台風の被害は皆さん大丈夫でしたか?

某所での朗読用に自作した「意味がわかると怖い話」です。

「意味がわかると…」の部分を考えながらお読み頂ければ幸いです。


 昨夜は酷い嵐だった。

 予報されたとおり台風は夜中に猛威を奮い、雨戸を叩くような大きな雨音と、唸るような叫ぶような風の音で眠りを妨げた。

 それでも、疲れの溜まっていた私はいつの間にやら寝付けたようで、聞きなれた電子音に目を覚ました時には、時計は午前10時を差していた。

 こんな日に、睡眠薬なしでも眠れたのは自分でも意外だった。


 夫婦の寝室の広いベッドの上で私は目を覚ました。

 眠れたとはいえ、やはり睡眠不足で体がだるく、ベッドから離れがたかった私は、いつもならそこにいるはずの夫の温もりを探すように寝返りを打った。

 この郊外の立派な一軒家は、一昨年夫と色々な事を話し合いながら考えに考えて購入した自慢の我が家だ。

 隣家からは少し距離があるおかげで、騒音に悩む事はなく、こちらも騒音を気にする必要がなく、天気の良い日の夕飯どきには、二階のテラスのテーブルに食事を並べて、音楽をかけながら、夫婦二人でおしゃべりを楽しみながら過ごしたりと、憧れていた夫婦円満な生活を満喫してきた。


 夫はどうしてあんな事をしたのだろう。


 突如胸に溢れてきた虚しさに、ぎゅっと目をつぶる。

 しばらくすると、つぶった瞳から涙がこぼれてきた。

 嗚咽を抑えられず、シーツを握りしめながら、醜く泣きじゃくった。

 ああ、醜い。どうして私はこんなに醜いのだろう。夫婦の美しい愛の時間が、全て醜く歪んだ嘘だらけの時間だったのだという思いが込み上げてくる。

 この家の中で起きていた事は、全て嘘の事のように思われた。

 もう一度眠り、目を覚ませば、ここは一面そこかしこに虫が隠れ住んでいる荒れ野原で、それらの虫に身体中を喰われた私は皮膚のただれた醜女なのだ。


 歪んだ妄想に取り付かれかけた時、また電子音が響いた。

 夫のスマホの着信音だ。

さすがに出なければまずいか。


 夫のスマホを操作して電話に出ると、案の定夫の会社の人間からだった。

 鼻にかかった甘えたような声の女。上司…、ではないのだろうな。

 彼女の話では夫はこの時間になっても出社していなかった。

 私は、夫が体調不良な事、看病にかまけて連絡が遅れた事を詫びて電話を切った。

 夫は本来抜かりのない人だから、一日くらい病欠した所で、会社に迷惑がかかる事はないだろう。いざという時の引き継ぎはしてあるはずだ。

 長く溜め息をついてから、喉の渇きを潤すため、キッチンに行こうとベッドから降りた。


 薄暗いキッチンで適当なグラスに水を汲むと、私は一気に飲み干した。二杯目を汲んで、雨戸が閉めっぱなしなせいでやはり暗いリビングのテーブルへ向かった。

 テーブルとセットの木目の椅子に座る。

 これも二人で相談して買ったのになぁと思う。

 テーブルの真ん中に突き刺さった包丁は昨日のままだ。

 この傷は消そうと思ったら消せるのだろうか? 消せたとして、一度包丁を突き刺したテーブルを夫婦二人で笑顔で囲める日はくるのだろうか。

 どうして私はこんな鬼になってしまったのだろうか?

 夫を許すという選択肢はないのだろうか。

 それとも、もう私が夫に許してもらえないのだろうか?

 包丁がテーブルごと突き刺した写真には、夫と私の知らない女が腕を組む様子が写っていた。

 その回りにも、いくつもの写真が散らばっている。


「これも片付けないとな……」


 ああ、いつ雨戸を開けようか。

 外は静かで、良く晴れているようだけれど。

 込み上げてきた疲れに、私はもう一度、テーブルに伏して目をつぶった。

 いけない、このグラスは……

さて、皆さんはこの話の意味がわかると怖い部分がわかりましたでしょうか?

わかったよ! わかりづらいよ!

どちらの突っ込みもお待ちしております。

解答はまた後程……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ