弟曰く
うちの姉ちゃんは、そこらの主婦よりもよほど働きものだ。
母さんが死んでから四年。
一日も欠かすことなく、うちの家事全般を引き受けている。
世間いう、まだまだ気難しい年ごろの女子高生にも関わらず。
当の本人は思春期なんてどこ吹く風で、「タロちゃんは部活でしょ」「お父さんはお仕事頑張っているんだから」と、家事を手伝わそうとしない。
先手必勝で済ませてしまえばいいのだが、俺たち男連中は鈍いもので。
姉ちゃんがさっと片付けてしまってから、なんだか快適だな…という具合に、姉ちゃんの気遣いを察する。
そういうとき、「ごめんありがとう」と言うと。
「ごめんはいいの。それより、今日のお布団気持ちいいよ」
と穏やかに笑って言うのだ。
家庭のことならなんでもござれ、な姉ちゃんだが、中でも飛びぬけているのは料理である。
うちの家事を母さんが引き受けていたときも、思えば姉さんはいつも隣に寄り添っていた。
そんな姉ちゃんだから、母さんの味を受け継いでいるのは勿論のこと。
真面目で素直な性格が幸いして、料理本によった知識を確かなものにしていった。
その上、たまの外食で俺が何気なく美味いと言ったものを覚えて、家で再現するほどの努力家だった。
だから、姉ちゃんの作る料理は、ほっとする家庭的な味からそこらのプロには負けない本格的なものまで幅広い。
姉ちゃんの料理は、最高だった。
「姉ちゃん、今日もおいしいよ」
「本当。世界一だ」
「二人がおいしそうに食べてくれるから、作り甲斐があるよ」
今日も姉ちゃんは、優しく笑う。




