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オルパラ  作者: masami
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<5>

○もう一度、落ち着いて冷静に考えなければならない。

ゆっくり。少しづつでも前に進まねばならない。確実に一歩づつ。

僕には確かな武器がある。言葉。

確実なもの最初で最後のもの、これ以上はないもの。

前へ前へ、道はきっと開かれる。


確かにネズミが部屋へ入って来てしゃべり始めたのには驚いた。

まいった。正直に書いておく。びっくりした。でもそこまで。

なんで直接姿を現さない?なぜ、わざわざ動物を使う?

ドアが開いた。横に開いた。ドアがあるとは思ってもみなかった。

誰か入ってくるそう思ったが、誰も入ってこなかった。かわりにネズミがチョロチョロ。

何の冗談?そいつがしゃべるなんて。

しみかと思ってたがドアの取っ手。触るとあいた。出入り自由。

信じられない。監禁されてる訳ではないらしい。

出ると、牛がいやがった。「案内しますよ」だって?


仕方がなかった。他に何ができる?

俺はネズミに聞いた。いや、ネズミじゃない。ネズミ男にだ。女か?どうでもいい。

ここはどこだ?どうして俺はこんな所にいる?どうなってこうなったんだ?

「やれやれ」。やれやれだと?人間様に向かって、やれやれだって?

ふんづけてやろうか。

全部ちゃんと正確に説明しろ、わかりやすく、簡潔に。何も答えない。

質問には答えず一方的にしゃべり出した。小さい声。自信がないからに決まってる。

最後にこう言う。「早く人間ドックに戻ってはどうですか」

拒否。当たり前だ。

「言葉をもたない。これこそしあわせです」

「お前のしゃべってるそれ、言葉だろうが?」

「ちがいます」

やりきれないとはこのことだ。こいつとしゃべってるってこと自体がおかしい。

なんでこいつの話しを信じなきゃならない?

「そろそろもどりませんか」いまいましい。思い出してもイライラする。

戻るだと?どこへ戻る?ふざけやがって。

人間ドックとやらに入って、夢を見る?望む人生をおくれるだって?

「そこに入ってる奴らは夢を現実だと思ってるのか?」

「ゆめもげんじつもおなじでしょう。じぶんひとりでみる」

言葉一つ一つにいちいち反応していては話が進まない。いらだつばかり。

「そんな所に入ることをみんなが納得するなんて信じられない」

「学校にはいるのとおなじです」

同じ訳がない。教育を受ける権利は、人類の長い歴史経て到達したものなんだ。

同じであるはずがない。

「みんな違う夢を見てるのか?」

「人間の望むものなんてそんなにちがいはありません」

人にはそれぞれ個性がある、人格があり尊厳があり、権利がある。夢がある。

世界にひとつしかない花だ。同じものなんてない。あるはずがない。

「こんなとこに入って生きてるって言えるのか?」

「これがいきるってことです」

思い出してもむかつく。

「俺は会社に行くため電車に乗った、気がつくと砂漠。空から何かが降ってきて、気がつくとここ。

一体どうなってる?何が起こった?」

「電車にのってきがつくとさばくにいた、意味がわからない」

「俺だってわからないよ!」

「あなたにわからないものが、どうしてわたしにわかるんです」

じゃあ、誰がわかってるんだ?天井裏に隠れてる奴か。

「でもわかります」

「何が?」

「電車にのってるあなたをカメラがうつす。砂漠にいるあなたをカメラがうつす。

そのふたつをつなげた映像をあなたがみればいい」

「映画をみた訳じゃない、現実だったんだ!」

「その映像をげんじつだとあなたがおもったんです」

「妻や子供はどうしてる?友人や上司や近所のひとは?俺が死んだと思ってるのか?」

「あなたの頭のなかにしかいません」


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