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新居 始という女に出会ったけどそんなことはあんまり関係なく世界は回っていくのかもしれない

つい先日「依頼なんて一回しか来たことがない」と言っていたはずなのだが、なんの因果か俺が入部してすぐに二例目が起こったようだ。


「・・・・・・ん?」


 ふと、疑問に思う。


「依頼主の人はいないんですか?」


 葵がそれに応える。


「ええ、わたくしたちがこの部屋に入った時には白雪さんがこの封書を持って待っていたんですの」


 それに賛同するように、亜莉沙が言う。


「うん、概ねその通りだよ。そして、わたしが帰ってきた時にはこれがこの机に置いてあった」


「つまり、密室に投書した、と?」


 亜莉沙が視線を封書からこちらに移して、言う。


「いや、今日鍵かけるの忘れてたからぶっちゃけ誰でも入れたんだよね~」


「おおいっ!?」


 密室投書から始まる一連の事件、そんな流れを期待した自分が馬鹿らしかった。


「ちなみに署名は、」


「もちろんありませんわ」


「ですよね~。なんでそこ書かなかったんだよ」


「それに関しては、やはりこれ(・・)が原因かと思われますわ」


「これ?」


 葵が部室の外に出ていって、廊下から立て札を持ってくる。


「これですわ。・・・・・・『依頼求む。記名、無記名は問わない。出来れば簡単なヤツでお願いしますm(_ _)m』」


 随分と傲岸不遜な探偵もどきだった。


「自分から依頼求めておきながら簡単なヤツとか選り好みすんなよ!? ・・・・・・これを書いたのは?」


「白雪さんですわ」


「ですよね~」


 そりゃそうか。


「む~。わたしがいつもこんなことばっかしてるみたいで心外だなあ」


「まさにその通りだと思うんですが」


「まさにその通りだと思うのですけれど」


 俺と葵が同時にツッコむ。


「まあ、峯崎先輩の言う通り今回は白雪先輩がこんなものを書くのがいけなかったと思・・・・・・いやまてよ、どうせこんな、なんか不思議感出そうとするヤツが名前なんて書くわけがないか」


「そうそう、その通りだよヒイラギ君」


「別に先輩を擁護した訳じゃありません」


「ひどっ!? ・・・・・・カスミちゃーん、後輩の男の子がいじめる~!!」


「いたんですか藤さん!?」


 全然気が付かなかった。っていうかてっきり送り迎えだけかと。


「いえ、たった今到着したところです。葵に呼ばれたため」


「なんでまた?」


「わたくしを呼び捨てなのはスルーなのですね・・・・・・」


「なんでも、知恵を貸してくれ、とか」


「わたくしはスルーなのですね・・・・・・」


「あ、でも詳細は葵にメールで送らせましたので、状況は把握しております」


「それはありがたいです。では早速なんですが・・・・・・いや待てよ、この状況はどうしようもなくね!?」


「ええ、この文面だけではどうしようもありませんね」


「じゃあ、どうしたらいいんでしょう?」


 すると、藤さんはいい笑顔で言った。


「とりあえず、丙さん、校内三周、行ってきてくだしあ」


「スパルタ!? っていうかまたネットスラング!?」


「藤はモードに入ると性格とか口調とかが変わるのですわ・・・・・・」


「そうだったんですか」


「情報が必要な時だけは反応するのですね、つまりわたくしは都合のいい女・・・・・・」


 なにやら間違った方向へ自己完結していらっしゃった。


「いえ別にそんなつもりでは決して、ええ、はい」


「まあいいですわ。・・・・・・藤、それは情報は走って集めてこい、ということですわね?」


「その通りです」


「情報って、この便せんに書いてある、異変ってヤツですか?」


「それ以外にはありませんわ。・・・・・・では丙さん、行ってらっしゃい」


「行ってらっしゃーい」


「行ってらっしゃいませ、丙様」


「もう既に送迎ムード!? はあ、行きますよ。行けばいいんでしょ行けば」


「その通りですわ。さっさと行きなさい。そして情報だけ教えなさい」


「へいへい」


「へいは一回」


「へい。・・・・・・ってへいでいいんかいっ!? ・・・・・・このくだり前もやったような」


「ごちゃごちゃ言ってないで早く行きなさい」


「はーい」


 と言って部室を出、校舎をぶらぶらとしてみたものの、そう簡単になにか異変が見つかる訳もなく。


「疲れた・・・・・・」


 食堂で一休みすることにした。


「ジュースジュース、っと」


 財布を尻ポケットから取りだそうとするも、


「あれ? ない!?」


 俺の財布はすっかり姿を消してしまっていた。


 俺は急いで今来た道を引き返す。


「・・・・・・あった」


 俺の財布はクラブ棟の正面玄関の落とし物ボックスに届けられていた。中身を確認してみても特に以上はみられーーん?


「なんだこれは」


 小銭入れの中になにやら一枚の紙切れが入っていた。無論、俺はそんなものを入れた記憶はない。


 「少々範囲を狭くしようか。クラブ棟の中だ」


「これは、」


 ・・・・・・どういうことなのだろうか? いや、それの示す意味は明確だ。異変はクラブ棟の中で起きていて、それをわざわざ指摘してくるということは犯人は俺の様子を観察していて、しかも多分短気。もしかしたら俺の財布が落ちたのも偶然ではないかもしれない。だがもしそうだとしたら、どんなトリックで・・・・・・?


「まずは部室に戻って相談するか」


 一人で考えていても埒があかないので、俺はとりあえず部室に戻ることにした。




◇◆◇◆◇




「・・・・・・という事なんですよ」


 俺が事情を説明すると葵が、


「つまり、」


「はい」


「・・・・・・つまり貴方は上級生の命令(パシリ)をサボって食堂で一休みしようと考えていたのですね!? 重罪です。グラウンド五十周の刑に処します」


 ・・・・・・なん、だと・・・・・・!?


「異議ありっ!!」


「異議を認めま・・・・・・せんっ!!」


「なんだと!? てかなぜ溜めたし!?」


「と、まあ冗談は置いておいて、」


「普段冗談みたいな行動ばかりしている白雪さんに止められるとは思いませんでしたわ」


 葵が半ば驚いたような口調で言う。


「いや、わたしも真面目にやるときは、や・・・・・・ふふっ」


「せめて嘘でも最後まで言い切ってください!?」


「いや、思い出し笑い」


「このタイミングで!? ・・・・・・逆に気になるんですけど。・・・・・・逆に」


「なぜ二回言ったんですの・・・・・・」


「お嬢様、これはツッコミ待ちです、ツッコんだら負けです」


「なんの勝ち負けですの・・・・・・」


「まあ嘘なんだけど」


「結局ただ笑っただけかよ!?」


 今日も亜莉沙は平常運転だった。


「話が逸れるどころか大気圏を突破しましたわね・・・・・・」


「実はその原因は先輩なんですけどね」


「(スルー)で? 貴方がするべき事はなんですか?」


「スルーかよ・・・・・・。するべき事? まさか、この疲れた体にクラブ棟を走り回れと?」


 すると葵は、人間に契約を持ちかける悪魔のごとき形相で言い放った。


「ええ、その通りですわ」


「鬼!!」


「ええ、その通りですわ」


「悪魔!!」


「ええ、その通りですわ」


「ドM!!」


「ええ、その通・・・・・・りじゃありませんわよ!! 誰がドMですの!?」


「アオイちゃん」


「峯崎先輩」


「お嬢様」


 三人が同時にツッコんだ。


「わたくしはドMではありませんわ!!」


 葵が全力で叫ぶ。


「というか、貴方は早くクラブ棟を走り回りに行きなさい!!」


「なんか目的ずれてるし・・・・・・」


「早く!!」


「へいへい」


「へいは一回!!」


「へい・・・・・・ってこのくだりもういいわ!!」


「つべこべ言っていないで早くお行きなさい」


「はーい」


 結局、俺は一人でクラブ棟を歩き回る。誰が走れるか。疲れたし。


「・・・・・・ん?」


 のんびりと歩いて、エレベーターを探す。


 ・・・・・・見つからない。


「なんで天井の表示見ながら探しても見つからないんだよっ!?」


 思わず一人廊下で叫ぶと、


「本当にそうだよねー。なんか迷路に入っちゃったみたい」


 横から声が聞こえた。


「うわっ!? 誰・・・・・・ですか?」


「タメ語でいいよー。っていうか、同じクラスね。一応」


 いきなり現れたそいつは女子生徒で、どうやらクラスメートらしい(本人談)。


 割と長めでしかもくせっ毛金の髪を、リボンで側頭部で2箇所結んでいる。アレだ、『緋弾のアリア』の理子だ。いや俺は一体(ry


 目はぱっちりと大きく、メイクでもしているのかまつげがくっきりと長い。頬はほんのりと紅く、唇はぷるぷると淡いピンクに輝いている。目線を下に遣るとそこに映るのは二つの小振りなメロン。小振りながらも中身は外から見ただけでもその高級さが伝わってくる。更に下に目を遣ると、そこにはすらりと伸びた長い足。細いながらも健康的な適度のラインを保つそれは、同時に瑞々しさも兼ね備えていた。


「いや、流石に入学して早々クラスの面子すらまだ覚え終わってないっていうか」


 俺がそう返答すると少女は、


「それもそうだねー。じゃあ、自己紹介から。わたしは新居(にい) (はる)。152cmで体重は」


「わあー言わんでいい言わんでいい」


「あれ? 聞きたくない?」


「お前、女子なんだからもうちょっと恥じらえよ・・・・・・」


「先生、女子だから、っていうのは差別発言だと思いまーす。撤回してくださーい」


「むしろ気遣ったつもりなんんだが・・・・・・。っていうか先生じゃねえ」


「問題なのは受け手がどう思ったか、だと思いまーす」


「語尾うぜえ!! そして意外と正論だからそれもまたうぜえ!!」


「女の子にうぜえとか言うのはどうかと思いまーす」


「すいませんでしたー!!」


 いつの間にか平謝りしている俺だった。


「・・・・・・話を最初に戻してもいいかな?」


「敬語ー」


「話を最初に戻してもいいですかな?」


「もっと敬意を込めてー」


「おい」


「んー?」


「なんでもない・・・・・・」


 どうやらこの新居 始、天然のようである。


 しかも重度の。


「まあいいや。なあ、このビル天井の案内表示見ててもエレベーターにたどり着かないんだけど」


「ボクもそう思うよー」


「だよな? これって一体・・・・・・」


 俺がそう呟くとハルは、


「ボクは結構前から歩いてるんだけどね、なんか同じところをぐるぐる回ってるみたいなのー」


「何度もか?」


「うんー」


 そこで俺はふと思い当たる。


「これが異変ってやつなのか?」


「異変ってなにー?」


 ハルがそう尋ねてくるも、


「いや、なんでもないよ」


 一応誤魔化しておく。べ、別に説明が面倒なんじゃないんだからねっ! そ、そうだ、これは義務、守秘義務なんだよ!! 仕事中はその仕事の内容を喋っちゃいけないんだよ!! だから話さないんだよ!! よし、理論武装完了。


「俺は元の部室に帰るよ。新居は左手戦法でも使って道を探してくれ。俺はちょっと用事が出来ちまった」


「うん、わかったー。じゃあまた明日ー」


「おう、また明日」


 そう言ってハルと別れる。今まで来た道はなんとなく覚えている。ちなみにここで補足しておくが、部室に来れているのは階段を使っているからで、今回迷ったのは10階まで楽しようと思ってエレベーターを探していたからである。階段なら場所はわかるので、悪しからず。


 部室の前にたどり着き、ドアをノックする。


「開いていますわよ」


 葵のその声を聞いてドアを開ける。


「・・・・・・それで? なにか戦果は得られたんですの?」


 俺はそして、気持ちドヤ顔で口を開いた。


「実はですね、――――」

ようやく更新できました。


べ、別にいきあたりばったりだったからいろいろ悩んでたんじゃ、ないんだからねっ!!


「異変」の内容を考えてなかった訳じゃないんだからねっ!!

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