ダイイングメッセージ
――まさかアイツが犯人だったとは。
昨夜、ワシの屋敷で起こった不可解な連続密室殺人が、アイツの仕業であったとは。
早く。一刻も早く、皆にこの事実を伝えねばならぬ。
だが、それは果たせそうにもなかった。
なぜなら、ワシもまた犯人の魔手にかかり、腹からおびただしい血を流しながら、自らの寝室で倒れているからだ。
……ぐう。目がかすむ。
体も動かない。
もはやこれまでか……。
諦めかけたその時であった。
死の足音近づくワシの脳裏にまさしく閃光の如く閃くものがあった。
そうだダイイングメッセージを残せばよいのだ。
だが、犯人の名前をそのまま書くような短絡的なものではダメだ。気づいた犯人に隠ぺいされてしまう可能性がある。
難しすぎるのもいけない。伝わらなければ、意味などまったくないのだ。
知的で、適度に難しくて、誰かが解読した時に、「あ、そういう事かー。あのジイさんやるなー」とワシの評価が上がる感じの……ああ、意識が朦朧としてきた……。
いかん。まだ死ぬわけにはいかぬ。メッセージを残していない。
何かないのか。インテリジェンス溢れるロジックの素晴らしいアイデアが。
ダイイングメッセージを……メッセージを……
突然、けたたましい音とともに扉が破られた。
「大丈夫ですか! 警察です!」
「旦那さま! 犯人は自首しましたぞ!」
「おじい様! ご無事? まさか、あの人が犯人だったなんて意外な展開ね! トリックも全部明かされたわ!」
メッセージを……
「やや! 旦那さまからすごい血が!」
「きゃあ! おじい様しっかりして!」
「今救急車を呼びました!」
メッセージを……まだアイデアが浮かんでない……。
◆ ◆ ◆
「こないだお前が担当した事件のジイさん、息を吹き返したんだってな」
「ああ。即死でもおかしくない出血量だったんだが、ダイイングメッセージのアイデアが考え付かず、死んでも死に切れなかったらしい」
「それで八時間も持ちこたえたのか。執念だな」
――終
拙作『Mrボマー』と同時期に書いた作品です。
こちらもとくに思い入れがありませんね。




