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女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


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第九十八話 冥王の法廷と、秩序のバグ

ユウマが、次に、目を開けた場所。

そこは、玉座の間、というよりは、巨大な、裁判所の、法廷だった。

どこまでも、高く、そびえ立つ、天井。

壁一面は、床から、天井まで、この世界の、創生以来の、全ての、魂の、記録が、収められた、無限とも思える、書庫になっている。

そして、その、中央の、最も高い、裁判官席のような、場所に。

山のように、積まれた、書類の、向こう側から、一人の、男が、ユウマを、見下ろしていた。

その男は、禍々しい、魔王ではなかった。

ただ、ひたすらに、厳格で、一切の、感情を、感じさせない、黒い、官僚服に、身を包んだ、神経質そうな、男。

彼こそが、この、冥界の、全てを、法と、秩序で、支配する、官僚王、エンマだった。

「―――特級案件、『佐藤 優馬』」

エンマは、手にした、書類から、一切、目を、離さずに、言った。その声は、まるで、機械のように、正確で、冷たかった。

「貴殿が、この世界に、転移して以降、発生した、世界の理の、歪みは、計、58件。その内、A級以上の、大規模な、因果律の、改変は、7件。…昨日、発生した、許可なき、魂の、蘇生行為は、我が、冥界の、創設以来、前例のない、最上級の、秩序違反行為である」

エンマは、そこで、初めて、顔を上げ、その、感情のない、瞳で、ユウマを、射抜いた。

「…弁明を、聞こう」

「べ、弁明って…!」

ユウマは、その、圧倒的な、威圧感に、怯えながらも、必死に、声を、絞り出した。

「俺は、ただ、ガガルさんを、助けたかっただけで…!」

「『助ける』という、個人的な、感情に基づき、世界の、絶対的な、理である、『死』を、覆そうとした。その行為自体が、罪なのだ」

エンマは、淡々と、断罪する。

「…理解できないか? この世界は、法と、規則で、成り立っている。例外は、認められん」

その、あまりにも、冷徹で、あまりにも、非情な、言葉。

ユウマの、心の中で、何かが、ぷつり、と切れた。

恐怖よりも、強い、感情が、込み上げてきた。

「…じゃあ、ガガルさんは、どうなるんですか!」

ユウマは、叫んだ。

「俺の、身代わりになって、死んだのに…! 何百年も、何千年も、ここで、仕分けされるのを、待ってろって言うんですか! そんなの、あんまりじゃないか!」

それは、論理ではない。

ただ、純粋な、友情と、理不尽への、怒り。

魂からの、叫びだった。

ユウマの**『友情という、非合理な感情』。

それが、エンマの『秩序という、絶対的な論理』**と、正面から、衝突した。

【ユウマの『感情(友情)』が、冥界の『論理(秩序)』によって、『システムの、致命的なエラー(バグ)』の概念へと、反転・暴走する】

ピシッ。

最初に、異変に気づいたのは、エンマだった。

彼の、目の前の、完璧な、はずの、書類の上に、一滴の、インクの染みが、現れたのだ。

ザワザワザワ…。

次に、法廷で、機械のように、作業をしていた、無数の、冥界の役人たちが、一斉に、動きを、止めた。

彼らの、のっぺらぼうのような、顔が、わずかに、歪む。

「…なんだ、この、胸が、締め付けられるような、感覚は…」

「…我が、友は、どうして、おるだろうか…」

彼らの、思考回路に、これまで、存在しなかった、『感情』という、未知の、バグが、発生し始めたのだ。

ガラガラガッシャアン!

壁一面の、巨大な書庫が、悲鳴を上げた。

完璧に、整頓されていたはずの、魂の記録が、ひとりでに、棚から、滑り落ち、雪崩を、起こし始めたのだ。

ある、記録には、生前の、功罪の代わりに、『愛』という、一文字だけが、浮かび上がり、

ある、記録は、燃え上がり、そして、その灰から、一輪の、花が、咲いた。

灰色の、世界だったはずの、冥界に、初めて、『色彩』が、生まれた。

「な…!?」

エンマは、自らの、完璧な、法廷が、目の前で、崩壊していく、ありえない光景に、絶句した。

彼の、数万年に及ぶ、統治の中で、初めて、起きた、システムエラー。

その、原因は、ただ、一人。

目の前で、涙を流しながら、友の名を、叫ぶ、少年。

「貴様…!」

エンマの、感情のない、瞳に、初めて、明確な、『焦り』と、『怒り』の、色が、浮かんだ。

「…貴様は、一体、何をした…! 我が、完璧な、秩序を…!」

ユウマは、自分が、また、何か、とんでもないことを、しでかしてしまったことに、気づいていなかった。

彼は、ただ、ガガルのことを、想っていた。

その、たった一つの、純粋な、感情が、死の国の、絶対的な、王の、世界を、根底から、揺るがし始めていた。

ユウマの、友を、救うための、戦いは、図らずも、この、冥界そのものへの、宣戦布告と、なってしまったのだった。

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