表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/193

第九十四話 魔神の仲裁と、王たちの遊戯

「―――少し、頭を、冷やしましょうか。…二人とも」

リリスの、静かな、しかし、絶対零度の響きを持つ声。

その瞬間、ウィルナスとベルゼビュート、二人の王の意識は、ユウマから、目の前の女へと、強制的に引き戻された。

彼女は、笑っていた。

しかし、その瞳は、もはや、人間の、あるいは、ただの魔族の、それではない。

世界の理そのものを、嘲笑うかのような、古の、深淵。

二人の王は、本能で、理解した。目の前に立つ存在は、自分たちと、同格、あるいは、それ以上の、世界の理から、外れた『何か』であると。

「…貴様…何者だ」

ベルゼビュートが、初めて、警戒の色を、その声に滲ませる。

「私は、ただの、しがない、元・愛人よ」

リリスは、くすくすと笑うと、気絶したままのユウマの、髪を、優しく、撫でた。

「…そして、この、最高に面白い、おもちゃの、最初の、所有者、かしらね」

彼女は、二人の王を、交互に見つめた。

「あんたたちが、この子を、欲しい気持ちは、よく分かるわ。でも、見ての通り、この子は、とても、脆いの。二人で、引っ張り合ったら、壊れてしまうじゃない」

その声は、まるで、子供の喧嘩を、仲裁する、大人のようだった。

「だから、提案よ」

リリスは、その美しい、指を、一本、立てた。

「『遊戯ゲーム』を、しましょう。…この、ユウマという、至高の『器』を、賭けた、王たちの、遊戯を」

「力ずくで、奪い合うのは、野蛮だわ。もっと、エレガントに、いきましょうよ。…これから、彼が、歩む道で、彼に、最も、有益な『手助け』をし、彼の、心を、最も、惹きつけ、彼が、最後に、『選んだ』者が、彼の、所有権を、得る。…というのは、どうかしら?」

それは、あまりにも、悪魔的な、提案だった。

ユウマを、一個の、人格としてではなく、最高の『褒賞トロフィー』として、扱う、という、狂気の、ルール。

ウィルナスは、その提案に、一瞬で、食いついた。

(なるほど…。力ではなく、知性で、彼の、価値を、引き出し、その心を、支配しろ、と。…面白い。その、ゲーム、俺が、勝つに、決まっている)

合理主義者の王は、その、知的遊戯に、至上の、価値を、見出した。

ベルゼビュートもまた、その、傲慢な、唇の端を、吊り上げた。

(フン…。小賢しい、真似を。…だが、よかろう。我が、魔王としての、絶対的な、カリスマの前に、人の子の、心など、容易く、ひれ伏すわ)

「…よかろう。その、遊戯、乗ってやろう」

「…俺もだ。その、ルール、受け入れよう」

二人の王は、あっさりと、合意した。

ユウマを、半分こにする、という、狂気から、ユウマの、心を、奪い合う、という、新たな狂気へと、移行しただけだった。

「では、決まりね」

リリスは、満足げに、頷いた。

ベルゼビュートは、漆黒の竜の背に、再び、跨ると、最後に、ユウマを一瞥した。

『…待っていろ、『器』よ。次に、会う時は、貴様が、我が足元に、ひざまずく時だ』

その言葉を、最後に、彼は、魔物たちと共に、空の亀裂の中へと、消えていった。亀裂は、音もなく、閉じていく。

ウィルナスは、崩壊した、玉座の間を、見渡すと、静かに、ため息をついた。

そして、ユウマの仲間たちに、言った。

「…今日のところは、帰るがいい。城の修復が、終わる頃には、この、ゲームの、最初の、一手くらいは、考えておいてやろう」

彼の、金色の瞳には、もはや、敵意はなく、ただ、これから始まる、壮大な、チェスゲームを前にした、プレイヤーの、愉悦だけが、宿っていた。

嵐は、去った。

後に残されたのは、半壊した、王城と、呆然と、立ち尽くす、仲間たち。

そして、その中心で、ぐったりと、気絶したままの、ユウマだった。

やがて、ユウマの、意識が、ゆっくりと、浮上してきた。

(…あれ…? 俺、生きてる…?)

彼が、目を開けて、最初に見たのは、自分の、胸の上で、心配そうに、自分を、覗き込んでいる、チビすけの、宝玉だった。

その、温かい、光が、ユウマの、冷え切った心に、じんわりと、染み渡る。

ユウマは、ゆっくりと、その宝玉に、手を伸ばし、そっと、握りしめた。

(…こいつが…助けてくれたのか…)

自分が、いなくなればいい、と願った、その瞬間に、この、小さな命が、自分を、守ってくれた。

その事実に、彼の、胸の奥から、今までに、感じたことのない、熱い、感情が、込み上げてきた。

「…ありがとな、チビすけ…」

それは、か細い、しかし、確かな、感謝の言葉だった。

彼が、初めて、自分の、運命を、受け入れ、そして、守るべきものを、見つけた、瞬間だったのかもしれない。

ユウマの、平穏を求める、逃避行は、終わった。

今日から、彼の旅は、二人の、狂王から、自分自身と、この、小さな、我が子を、守り抜くための、戦いの旅へと、その意味を、変えたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ