表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/193

第八十六話 覇王の試練と、賢者の気絶

「―――よく来たな、『世界の器』よ」

「…思ったより、早かったな」

「俺が、王だ」

ウィルナス王の、その言葉には、絶対的な自信と、そして、目の前の惨状に対する、わずかな呆れが、滲んでいた。

玉座の間は、天井に大穴が開き、粉塵が舞い、およそ、人間界の頂点に立つ、覇王の謁見の間とは思えぬ、カオスな有様だった。

「…ご、ごほんっ!」

ユウマは、粉塵を吸い込み、激しくむせながら、なんとか、四つん這いの姿勢から、立ち上がろうとした。しかし、三分間の、暴風旅行は、彼の三半規管を、完全に、破壊していた。世界が、まだ、ぐるぐると回っている。

「全員、下がれ」

ウィルナス王が、静かに、しかし、有無を言わせぬ声で、命じた。

抜刀しかけていた、白銀の騎士たち、そして、悲鳴を上げていた、大臣たちが、その一言で、凍りついたように動きを止め、一礼すると、足早に、玉座の間から、退出していく。

あっという間に、巨大な広間に残されたのは、ユウマ一行と、玉座に座る、ウィルナス王、ただ一人となった。

王の、金色の瞳が、まず、天井の穴から、ひょっこり、顔を覗かせている、シルフィードを、射抜いた。

「風の精霊か。余は、貴様を、呼んだ覚えはないが?」

「ふん! あんたに、呼ばれる筋合いなんて、ないわよ!」

シルフィードは、王の覇気にも、臆することなく、言い返した。

「あたしは、あたしのライバルが、心配で、来ただけ! …もう、用は済んだから、帰るわよ!」

彼女は、ユウマを一瞥すると、「…変な男に、負けるんじゃないわよ」と、小さな声で、悪態をつき、再び、風と共に、天井の穴から、消えていった。

嵐のような、精霊が去り、再び、静寂が訪れる。

ウィルナス王は、やれやれ、と首を振ると、その視線を、ようやく、立ち上がった、ユウマたちへと、戻した。

「さて」

王は、玉座の上で、頬杖をついた。

「噂は、色々と、聞いている。森の病を、癒し、戦を、終わらせた、聖者。魔族と、天使を、従える、賢者。世界の理を、書き換える、『器』…」

彼の、金色の瞳が、値踏みするように、細められる。

「…だが、言葉は、所詮、言葉だ。この目で、見るまでは、信じられん」

王は、立ち上がった。

そして、ゆっくりと、玉座から、降りてくると、ユウマの、目の前に、立った。

その、圧倒的な、威圧感に、ユウマは、後ずさりしそうになる。

「見せてみろ」

王は、静かに、しかし、絶対的な、命令として、言った。

「貴様の、その『力』とやらを。この、俺に」

それは、あまりにも、無慈悲で、あまりにも、絶望的な、要求だった。

ユウマに、見せられるような、力など、何一つ、ない。

あるのは、勘違いと、偶然と、そして、仲間たちの、勝手な、活躍だけだ。

(力…? 無理だ…! 何も、できない…!)

ユウマの、頭の中が、真っ白になった。

シルフィードの、無茶苦茶な、飛行で、揺さぶられ続けた、身体。

そして、この、人間界の、覇王と、対峙する、極度の、緊張。

彼の、心と、身体の、許容量は、完全に、限界を、超えていた。

「どうした? できないのか?」

ウィルナスが、冷徹に、問い詰める。

その、最後の一言が、引き金だった。

ユウマの、視界が、ぐにゃり、と歪む。

「……あ…」

ぷつん。

彼の、意識の糸が、切れた。

ユウマは、ウィルナス王の、目の前で、何の、前触れもなく、白目を剥くと、そのまま、糸の切れた、人形のように、ばたり、と、後ろへ、倒れた。

―――彼は、気絶したのだ。

「「「ユウマ様(主サマ)!!」」」

仲間たちの、悲鳴が、響く。

ウィルナスは、目の前で、突然、倒れた、少年に、一瞬、呆気に取られた。

(…気絶…だと…? この、俺を前にして、緊張のあまり…?)

くだらない、と、彼が、嘲笑しようとした、その、瞬間。

ゴオオオオオオオオッ!!

気絶した、ユウマの身体から、何の、魔力の輝きも、オーラも、伴わない、ただ、純粋な、『圧力』の、津波が、爆発的に、放たれた!

【ユウマの『完全な意識の喪失(気絶)』が、ウィルナス王の『力の開示要求』によって、『無意識の、全能力解放』の概念へと、反転・昇華される】

それは、音もなく、色もなく、しかし、空間そのものを、捻じ曲げるかのような、絶対的な、存在感の、奔流だった。

玉座の間の、壁に、亀裂が走り、天井から、さらに、瓦礫が、降り注ぐ。

ウィルナス王でさえ、その、未知の、圧力の前に、思わず、一歩、後ずさっていた。

彼の、背後の、玉座が、ミシミシと、軋む音を、立てている。

そして、数秒後。

その、圧倒的な、圧力は、まるで、何も、なかったかのように、すうっ、と、消え去った。

後に残されたのは、静寂と、床に、大の字で、気絶している、ユウマの、無防備な、寝顔だけ。

「……………」

ウィルナスは、言葉を、失っていた。

(…なんだ、今のは…)

彼は、ユウマが、気絶したふりを、しているのだと、一瞬、思った。

だが、違う。あの、圧力は、本物だ。

そして、その、圧力の、あまりの、規格外さに、彼の、魂は、震えていた。

(…試練に、対し、力で、応えるのではなく。自らの、意識を、断ち切ることで、その、存在の、『重さ』そのものを、世界に、解き放った、というのか…)

(…そして、その、力を、見せつけた後、完全に、無防備な、姿を、晒すことで、『俺は、お前に、敵意はない』と、示している…?)

それは、あまりにも、高度で、あまりにも、傲岸不遜な、王と、王の、対話。

ウィルナスは、ユウマの、その、常軌を逸した、答えに、生まれて初めて、敗北感にも、似た、感情を、味わっていた。

彼は、床に、転がる、少年を、見下ろした。

その、金色の、瞳には、もはや、侮りの色は、なかった。

ただ、計り知れない、巨大な、謎と、そして、獰猛なまでの、好奇心が、炎のように、宿っていた。

「…面白い」

ウィルナスは、静かに、呟いた。

「…面白いじゃないか、『世界の器』よ」

ユウマは、ただ、気絶しただけだった。

しかし、その、人生で、最も、情けない、失態は、この、人間界の、最も、傲慢な、覇王の、心を、完全に、鷲掴みにしてしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ