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女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


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第七十七話 決戦前夜と、賢者の重圧


ギデオン将軍の号令一下、東部戦線の本陣は、にわかに、活気づいた。

それまでの、敗戦続きで、淀んでいた空気が、嘘のようだ。

幕僚たちは、新たな作戦地図を広げ、声を張り上げ、兵士たちは、希望に、目を輝かせながら、来るべき、決戦の準備を、進めている。

その、熱狂の中心に、ユウマは、いた。

彼は、司令部のテントの隅で、ただ、立ち尽くしていた。

将軍や、幕僚たちが、時折、「さすがは、大賢者様!」「この布陣で、ご意見は?」と、キラキラした目で、話しかけてくるが、ユウマには、もはや、頷くことしか、できない。

(俺のせいだ…)

彼の心は、絶望的な、プレッシャーで、押し潰されそうになっていた。

(俺が、適当に、地図を、指さしたせいで…。もし、この作戦が、失敗したら…。ここにいる、みんなが、死ぬんだ…)

それは、彼が、これまで、背負ってきた、どんな勘違いよりも、重く、現実的な、責任だった。

やがて、一行は、将軍が、特別に、用意させた、一番、立派なテントへと、通された。

決戦は、明日。

作戦の、発案者ということになっているである、ユウマは、戦いの前に、休息を取るように、命じられたのだ。

テントの中は、決戦前夜とは思えぬほど、それぞれの、マイペースな空気に、満ちていた。

「フン! 久しぶりに、血が騒ぐわ!」

ガガルは、愛用の戦斧を、布で、楽しそうに、磨き上げている。

「ユウマ様の、神懸かり的な、采配! そして、この俺の、無双の武勇! 勝利は、約束されたも、同然よ!」

「…罪なき血が、これ以上、流れませんように」

アリアは、テントの隅で、静かに、祈りを捧げていた。しかし、その瞳には、賢者が示した、勝利への道を、信じる、強い光が、宿っていた。

「ま、戦争とか、マジ、だるいけどさ」

アイは、弓の、弦の、張りを、確かめながら、言った。

「主サマの、立てた作戦だし。失敗させるとか、マジ、ありえないっしょ。サクッと、終わらせよ」

「ふふふ」

リリスは、一人、ワイングラス(ロデリックが、いつの間にか、荷物に、忍ばせていた)を、傾けながら、地図を、眺めていた。

「古典的だけど、見事な、カウンターアンブッシュ。面白いじゃない。あの『古狐』が、あの世で、悔しがってる顔が、目に浮かぶわ」

仲間たちは、誰も、作戦の成功を、疑っていなかった。

その、絶対的な信頼が、ユウマの、肩に、さらに、重く、のしかかる。

(…逃げたい…)

ユウマは、テントの隅で、体育座りをし、腕の中の、チビすけに、顔を、うずめた。

その、温かい光だけが、彼の、唯一の、救いだった。

その、時だった。

テントの入り口が、静かに、開かれ、ギデオン将軍が、入ってきた。

その顔は、決意に、満ちていた。

「賢者殿。夜分に、すまぬ」

将軍は、ユウマの前に、立つと、静かに、言った。

「部隊の、配置は、完了した。今宵、月の、最も、高き時、敵の、奇襲部隊は、必ずや、『静寂の森』に、現れるであろう」

そして、彼は、ユウマの前に、深く、頭を下げた。

「…そこで、賢者殿に、一つ、お願いが、ある」

「…はい」

ユウマは、か細い声で、答えた。

「貴方様には、戦う、必要はない。ただ…」

将軍は、顔を上げ、地図の、ある一点を、指さした。それは、『静寂の森』を、一望できる、小さな、丘だった。

「…ただ、そこに、立っていて、いただきたいのだ」

「…え?」

「貴方様は、我らが、希望の、象徴。貴方様が、そこに、おられる。ただ、それだけで、兵士たちは、百倍の、力を、発揮できましょう。…貴方様には、この戦の、我らが、旗印と、なっていただきたい!」

旗印。

それはつまり、特等席で、これから、始まる、殺し合いを、見届けろ、ということ。

自分が、引き起こした、作戦の、結果を、その目で、直視しろ、ということ。

ユウマの、顔から、血の気が、引いた。

彼は、あまりの、恐怖と、重圧に、声も出せず、ただ、小さく、こく、こくと、頷くことしか、できなかった。

その、蒼白な、沈黙。

しかし、百戦錬磨の、老将軍の目には、それは、全く、別のものに、映っていた。

(おお…!)

彼の目に、ユウマの姿は、自らの、采配で、多くの、部下たちの、命を、散らすことになる、指揮官の、『覚悟』と、『痛み』を、その、小さな、背中に、一人で、背負い込んでいる、真の、指導者の姿に、見えた。

「…感謝、申し上げる」

ギデオン将軍は、静かに、一礼すると、テントを、後にした。

ユウマは、その場に、へたり込んだ。

もう、後戻りは、できない。

夜が、明ければ、戦いが、始まる。

彼は、ただ、腕の中の、チビすけを、抱きしめる。

(…終わったら、静かな、ところで、暮らそうな…)

その、小さな、小さな、願いだけを、胸に。

ユウマの、人生で、最も、長く、そして、恐ろしい、夜が、始まろうとしていた。

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