表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/193

第七十六話 戦場の中心と、赤子の指先


野戦病院での、あまりにも不可解で、あまりにも神聖な奇跡。

その噂は、ユウマたちが、本陣に到着するよりも、早く、駆け巡っていた。

彼らが、東部戦線の、本陣キャンプに、足を踏み入れた時、そこに、好奇や、疑いの目は、もはや、存在しなかった。

数千の兵士たちが、作業の手を止め、まるで、凱旋した王を迎えるかのように、道を開ける。そして、泥と、血に汚れた、屈強な男たちが、一人、また一人と、その場に、静かに、膝をついていく。

その、無言の、しかし、絶対的な、敬意の波に、ユウマは、もはや、恐怖よりも、居心地の悪さを、感じていた。

一行は、騎士隊長に導かれ、キャンプで、最も大きい、作戦司令部の、テントへと、通された。

中には、歴戦の、古強者といった風情の、将軍と、その幕僚たちが、広げられた地図を前に、険しい顔で、議論を交わしていた。

「…申し上げます! 大賢者ユウマ様が、ご到着されました!」

騎士隊長の、その声に、幕僚たちが、一斉に、顔を上げる。

そして、その中心に座っていた、白髪混じりの、厳つい顔の、老将軍――東部戦線総司令官、ギデオン将軍が、ゆっくりと、立ち上がった。

彼の目は、値踏みするように、ユウマと、その、あまりにも、異質な、仲間たちを、見据えた。

(…これが、噂の…。ただの、子供ではないか。…だが、あの、宰相閣下と、教会の、両方が、認めた存在…)

その、ギデオン将軍の、懐疑的な空気を、打ち破ったのは、テントに、転がり込んできた、一人の、伝令兵だった。

「ご、ご報告! 先ほど、後方の、野戦病院にて、賢者様が、奇跡を! 数百の、負傷兵が、賢者様が、お与えになった、ただの水で、たちどころに、回復したとの報せが!」

「「「おお…!」」」

テントの中の、幕僚たちから、どよめきが、上がる。

ギデオン将軍の、険しい顔も、驚愕に、目を見開いていた。

「…賢者殿」

将軍の、ユウマに対する、口調が、変わった。

「…よく、お越しくださった。単刀直入に、お伺いしたい。我々は、今、敵の、次なる一手が、読めず、膠着状態に、陥っている」

彼は、地図の上を、指し示した。

「敵の、本隊は、ここ。だが、これは、陽動の、可能性が高い。ヤツらの、真の狙いは、どこか、別の場所から、我らが、本陣を、直接、叩くことにあるはず。…だが、その、場所が、絞りきれん。…賢者殿の、その、神聖なる、慧眼で、何か、見えるものは、ないだろうか?」

それは、もはや、軍議ではない。

神託を、求める、祈りだった。

ユウマは、広げられた、複雑な地図を、見つめていた。

彼には、それが、ただの、線と、記号の、集まりにしか、見えない。

(分かるわけ、ないだろ…!)

その、ユウマの、焦りと、緊張を、感じ取ったのか。

彼の腕の中で、すやすやと、眠っていた、チビすけが、きゅるる、と、寝言のような、声を上げた。

そして、宝玉の中から、小さな、葉っぱの手を、にゅっ、と伸ばすと、地図の上の、ある一点を、ぽすん、と、叩いた。

「(あっ、こら!)」

ユウマは、慌てた。

我が子が、この、国の運命を左右する、重要な地図に、落書き(?)をしようとしている。

彼は、反射的に、チビすけが、叩いた、その場所を、自らの、人差し指で、とん、と、押さえつけた。

「だめだぞ、チビすけ。こんな、大事なものに、触っちゃ…」

シーン。

テントの中が、水を打ったように、静まり返った。

将軍も、幕僚たちも、全員が、ユウマの、その指先が、指し示した、地図の、一点を、凝視していた。

ユウマが、指さしていたのは、戦線から、少し、外れた、名もなき、小さな、森だった。

戦略的には、何の、価値もない、場所。

「…『静寂の森』…だと…?」

幕僚の一人が、訝しげに、呟く。

「なぜ、そのような場所を…」

しかし、総司令官、ギデオンの、表情は、違った。

彼の、歴戦の、戦術眼が、その、ユウマの、神託(と、彼が思い込んだもの)の、真の意味を、捉えていた。

その顔が、みるみるうちに、驚愕から、戦慄へと、変わっていく。

「…そうか…」

将軍は、震える声で、言った。

「…我々は、完全に、裏を、かかれていた…」

彼は、幕僚たちに、叫んだ。

「その森を、抜けられれば、敵の、精鋭騎馬隊は、我が軍の、補給路を、完全に、断ち切ることができる! それだけではない! そのまま、迂回すれば、この、司令部を、背後から、強襲できるのだ! 我らを、一網打尽にする、絶好の、奇襲ルートではないか!」

「「「なっ…!?」」」

「我々は、ありえないと、最初から、そのルートを、考慮に入れていなかった…。あまりにも、大胆すぎる、と…。しかし、賢者殿は、それを見抜かれたのだ。敵の、真の、狙いを…!」

ギデオンは、ユウマに向き直り、その場に、深く、深く、頭を下げた。

「…感謝、申し上げる、大賢者殿。貴方様の、神託がなければ、我々は、今頃、壊滅しておりました」

(え、俺、ただ、チビすけを、止めようと…)

ユウマは、もはや、弁解する、気力もなかった。

ギデオンは、すぐに、顔を上げると、その瞳に、獰猛な、反撃の炎を、宿らせていた。

「全軍に、伝えい! ただちに、我が軍の、最強戦力、グリフォン騎士団を、『静寂の森』へと、差し向けよ!」

彼は、ニヤリと、笑った。

「敵の、罠の、さらに、裏をかき、我々が、罠を、仕掛けてやる! 賢者様が、お示しくださった、この好機、逃す手はないぞ!」

ユウマが、ただ、子供の、いたずらを、止めようとした、その、ささやかな、親心。

それは、この、劣勢だった、大戦の、流れを、完全に、ひっくり返す、起死回生の、一大反攻作戦の、引き金となってしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ