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女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


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第七十四話 帰還の喝采と、戦場への招待状


「大賢者、ユウマ様! お、お戻りになられたのですね!」

若い兵士の、その絶叫は、希望の狼煙だった。

「賢者様!?」

「おお、本物だ!」

「我々を、お見捨てになったのではなかったのだな!」

酒場にいた、希望を失いかけていた人々が、一斉に、ユウマの元へと、殺到した。

熱狂と、信仰の渦。

ユウマは、デジャヴにも似た、この光景に、もはや、驚くことすらなかった。ただ、静かに、また始まったか、と、遠い目をしていた。

「皆様、お静まりに!」

その混沌を、制したのは、アリアの、凛とした声だった。

「賢者様は、長き瞑想の旅路より、お戻りになられたばかり。お身体に、触れてはなりませぬ!」

天使としての、威厳を、かすかに滲ませた、その声に、民衆は、ハッと、我に返り、ユウマへの道を、開けた。

その時、酒場の外から、鎧の擦れる音と共に、屈強な騎士たちが、なだれ込んできた。村の入り口にいた、部隊の者たちだった。

「賢者様! ご無事でしたか!」

隊長らしき男が、ユウマの前に、恭しく、ひざまずく。

「この度の、ご帰還、心より、お慶び申し上げます! さあ、こちらへ! 安全な場所を!」

こうして、ユウマ一行は、またしても、兵士たちに、護衛される形で、酒場の、一番、立派な個室へと、通された。

ユウマの、ささやかな、情報収集の時間は、完全に、終わりを告げた。

「…して、賢者様」

個室に入るなり、騎士隊長は、それまでの、喜びの表情を一変させ、厳しい、そして、懇願するような、目で、ユウマに、訴えかけた。

「…戦況は、芳しくありませぬ」

彼の言葉は、重かった。

「ベルフェゴール侯爵は、隣国、ヴァルトリア帝国の支援を取り付け、今や、その軍勢は、我が王国軍を、数で、圧倒しております。東の防衛線は、崩壊寸前…。兵士たちの、士気も、限界にございます」

隊長は、悔しそうに、拳を握りしめた。

「敵は、こう、吹聴しております。『王国が見出した賢者は、偽物であった』『彼は、国を見捨て、逃げ出したのだ』と…。貴方様の、ご不在が、兵たちの、心を、蝕んでおります」

ユウマは、何も、言えなかった。

そのプロパガンダは、ある意味、真実だったからだ。

騎士隊長は、ユウマの前に、深く、深く、頭を下げた。

「賢者ユウマ様! どうか、我らと、共にご同行を! 貴方様が、ただ、そこに、おられるだけでよいのです! 貴方様の、ご帰還こそが、兵たちの、何よりの、希望の光となりましょう! どうか、東の、最前線キャンプへ!」

戦場へ、行け。

あまりにも、直接的で、あまりにも、恐ろしい、招待状。

ユウマの、思考が、真っ白になった。

(戦場…? 俺が? 冗談じゃない! 死ぬ! 絶対に、死ぬ!)

彼の心は、『恐怖』と、『拒絶』で、埋め尽くされた。

しかし、度重なる、現実からの、逃避と、絶望は、彼の表情から、感情を、奪い去っていた。

彼の顔は、まるで、能面のように、静まり返っている。

その、あまりにも、静かで、落ち着き払った、ユウマの姿。

それを見た、騎士隊長と、その部下たちの、絶望に満ちた心に、『概念誘導』が、発動した。

【ユウマの『思考停止(無表情)』が、兵士たちの『救いへの渇望』によって、『戦況を憂う、不動の覚悟』の概念へと、増幅・昇華される】

兵士たちの目には、ユウマの姿が、神々しく、映っていた。

(おお…! 我々の、苦境を知り、そのお顔に、深い、憂いを、浮かべておられる…!)

(しかし、その瞳の奥には、一切の、揺らぎがない! すでに、この状況を、打開する、策を、見出しておられるのだ!)

ユウマから、放たれる(と、彼らが思い込んでいる)、不動のオーラが、兵士たちの、ささくれだった心を、癒し、再び、闘志の炎を、灯していく。

その、完璧な、空気の中、ユウマの仲間たちが、口を開いた。

「フン! ようやく、我が主君の、真の、舞台が、整ったようだな!」と、ガガル。

「ええ。賢者様。苦しむ人々がいる場所こそ、貴方様がおられるべき、場所ですわ」と、アリア。

「戦争とか、マジ、だるいけど。主サマが行くなら、しゃーないか」と、アイ。

「ふふ。最高の、ショーの、始まりね」と、リリス。

全員が、賛成。

外堀も、内堀も、完全に、埋められた。

ユウマは、もはや、抵抗する気力もなく、ただ、こくり、と、小さく、頷くことしか、できなかった。

その、あまりにも、静かで、しかし、重々しい、肯定。

それを見た、騎士隊長は、感涙に、むせびながら、叫んだ。

「おお…! おお、賢者様! ご決断、感謝いたします! これで、この戦、勝てますぞ!」

こうして、ユウマの、次なる目的地は、彼が、この世で、最も、行きたくない場所――戦争の、最前線へと、決定した。

彼の、平穏を求める旅は、ついに、死と、隣り合わせの、ステージへと、駒を、進めてしまったのだった。

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