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女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


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第七十一話 精霊の宴と、魔王軍のラップ

精霊王の一声で、その夜、マザーツリーの根本は、この世のものとは思えないほど、賑やかな宴の会場へと、姿を変えた。

光る苔が、ランタンのように輝き、花のつぼみが、ひとりでに開いては、芳醇な香りの蜜を、泉のように、湧き出させる。木のうろからは、黄金色の、熟成された、果実酒が、こんこんと、溢れ出ていた。

「おおお! なんという、美味! これぞ、神々の酒!」

ガガルは、さっそく、樽ほどもある、木の盃で、果実酒を呷り、上機嫌で、雄叫びを上げていた。

「まあ、この輝き…。飲むのが、もったいないくらいですわ」

アリアは、水晶の杯に注がれた、虹色の蜜を、うっとりと、眺めている。

「うっひょー! これ、マジやばい! 超うめえ!」

アイは、巨大な、焼きキノコにかぶりつきながら、すでに、顔を、真っ赤にしていた。

リリスは、黙って、最も、年代物の酒を、吟味している。

そして、その、カオスな宴の中心で。

ユウマは、一人、木の根に、ぽつんと座り、遠い目をしていた。

(…なんで、俺、宴会に参加してんだろ…)

「どうしたんじゃ、主役殿。顔色が、優れんのう」

いつの間にか、隣に座っていた、精霊王ファーンが、ユウマに、木の杯を、差し出した。

「まあ、飲め。これは、『忘れ草の酒』じゃ。嫌なことを、ちいとだけ、忘れさせてくれる」

ユウマは、促されるまま、その酒を、一口、飲んだ。

すうっと、心の、ささくれが、癒えていくような、優しい味がした。

その時だった。

宴もたけなわ、すっかり、酔いが回った、ガガルが、立ち上がった。

「皆の者、聞けい! 我が主君、ユウマ様の、輝かしき、未来を祝し! このガガルが、我が魔王軍に伝わる、魂の叫びを、披露しようぞ!」

そう言うと、ガガルは、おもろむに、近くにあった、瓢箪のような木の実を、マイクのように握りしめ、膝を、軽く、曲げた。

そして、自らの、巨大な胸を、拳で、ドン、ドン、と叩き、ビートを刻み始める。

「Yo! 聞いてっか、エルフの皆の衆! 我が名はガガル、主君の一番の同志!」

その、あまりにも、唐突な、そして、お世辞にも、上手いとは言えない、ラップに、その場の全員が、ぽかん、と、口を開けた。

ガガルは、お構いなしに、続ける。

そのフロウは、お経のように、単調だった。

「幻獣界生まれ 魔界の育ち! 悪いやつらはだいたい友達!」

「YO! 百の戦場、千の傷! だけど心は、いつも、ユウマ様の、忠実なる、シモベ!」

「我らが主君は、マジで、最強! 異論は、認めん! これが、真理! Check it out!」

ガガルの、魂のラップは、そこで、終わった。

彼は、やり切った顔で、胸を張り、決めポーズをとっている。

シーン、と、静まり返る、宴会場。

最初に、沈黙を破ったのは、アイだった。

彼女は、数秒間、ぷるぷると、震えた後、ついに、堪えきれずに、吹き出した。

「ぷっ…! あ、アハハハハハハ! なに、それ! ラップ!? 古っ! ていうか、クソだせえ! 腹、痛い…!」

その笑い声は、伝染した。

「まあ、ガガルさん…! そ、それは、魔界の、祈りの歌か、何かでしょうか…?」

アリアは、必死に、真顔を、取り繕おうとしているが、その肩は、小刻みに、震えている。

「ふ、ふふ、くくく…。魔王軍の、リリック…。最高じゃない…。お腹、痛い…」

リリスは、もはや、涙を流して、笑い転げていた。

そして、その笑いは、ユウマにも、届いた。

あまりにも、バカバカしくて、あまりにも、平和な光景。

彼は、この異世界に来て、初めて、腹の底から、声を上げて、笑っていた。

「あはははははは!」

その、ユウ-マの、屈託のない、笑い声を聞いて。

仲間たちは、皆、ハッとしたように、ラップを終えたガガルから、ユウマへと、視線を移した。

そして、誰もが、同じことを、思っていた。

((((…守りたい、この笑顔…))))

ガガルは、ラップを披露しながら、涙を流していた。

(おお…! 我が、魂のリリックが、ユウマ様の、お心を、これほどまでに、お慰めしたとは…! ラッパーになって、よかった…!)

こうして、精霊の国の、最後の夜は、一人の男の、壊滅的に、センスのないラップと、仲間たちの、温かい笑い声に、包まれて、更けていった。

ユウマは、まだ、気づいていなかった。

彼の、その、たった一度の、心からの笑顔が、彼の仲間たちの、彼に対する、忠誠心(と、勘違い)を、これまで以上に、強固なものにしてしまったということに。

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