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女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


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第五十七話 賢者の育児と、初めてのミルク

「こ、子供…?」


ユウマは、腕の中に収まった、温かい宝玉を、ただ、呆然と見つめていた。

宝玉の中では、小さな緑色の芽が、まるで、健やかな赤子のように、穏やかな光を放っている。


(冗談じゃない…冗談じゃないぞ…!)


「こ、こんなの、子供なんかじゃない! ただの石だ!」

ユウマは、思わず叫ぶと、宝玉を近くの苔むした岩の上に、そっと置いた。

「ほら、見ろ! ただの…」


ユウマが言い終わらないうちに、岩の上に置かれたはずの宝玉は、ふわり、と宙に浮き上がった。

そして、まるで、母親を探す雛鳥のように、再び、ユウマの胸へと、ぽすん、と飛び込んできた。

宝玉の中の芽が、甘えるように、ちか、ちか、と光る。


「「「おお…!」」」

仲間たちから、感嘆の声が漏れた。


「赤子が、親を慕うておるのう。微笑ましい光景じゃ」

精霊王ファーンが、好々爺の笑みで、頷いている。


(だめだ…こいつ、俺から離れない気だ…)

ユウマは、完全に、詰んだことを悟った。


その瞬間から、ユウマの、地獄の(そして、傍から見れば、微笑ましい)育児生活が、始まった。

彼の周りでは、さっそく、子育てに関する、第一回の「賢者の育児方針会議」が、勝手に、開催されていた。


「まず、名前を決めないと! 主サマの子供なんだから、超イケてる名前にしなきゃ! 『光宙男ぴかちゅうだん』とか、どお!?」

アイが、キラキラネームを提案する。


「なりません!」

アリアが、きっぱりと、それを却下した。

「聖なる御子には、聖なる御名を捧げるべきです! 例えば、『セラフィム』など、いかがでしょう!」


「フン! 軟弱な! 若君には、強き名が必要だ! 我が魔王軍の、伝説の将軍の名を取り、『破壊神ベルゼアス』! これしかない!」

ガガルが、物騒な名前を提案する。


「くだらないわね」

リリスが、ため息をついた。

「どうせ、ただの光る石ころじゃない。名前なんて、ポチでいいでしょ、ポチで」


「「「却下!!」」」

アイ、アリア、ガガルの声が、綺麗にハモった。


(もう、好きにしてくれ…)

ユウマは、もはや、会話に、参加する気力もなかった。


その、時だった。

ユウマの胸の中にある、宝玉の輝きが、ふっ、と、弱くなった。

中の芽も、先ほどまでの元気な光を失い、心なしか、しおれているように見える。


「やば! なんか、元気なくない!?」

アイの、焦った声。


「大変です! 聖なる光が、弱まっています!」

「若君! いったい、どうなさったのだ!」


仲間たちが、一斉に、慌てふためく。

その様子を、ただ一人、精霊王ファーンだけが、穏やかな目で見つめていた。


「うむ。腹が、減っておるのじゃな」

「「「腹が!?」」」


「どうすればいいんだ、じいちゃん!」

アイが、ファーンに詰め寄る。


「そうじゃのう」と、ファーンは、顎の髭を撫でた。

「生まれたての精霊には、普通の食べ物は、まだ、毒じゃ。魔力や、聖気も、刺激が強すぎる。…必要なのは、もっと、純粋で、根源的な力…」


王は、そこで、言葉を切ると、にっこりと、ユウマに、微笑みかけた。


「親の、生命力そのものが、一番の、ご馳走じゃよ」


「……はい?」

ユウマの、背筋が、凍った。


「やり方は、簡単じゃ」

王は、ユウマに、手本を示すように、自らの胸に、手を当てた。

「宝玉を、心臓の近くに抱きしめ、『元気になれ』と、強く、念じる。それだけで、よい。おぬしの生命力が、自然と、この子に、注がれるじゃろう」


(俺の生命力を、吸わせる!?)

ユウマは、目の前が、真っ暗になった。


「さあ、主サマ、早く!」

「賢者様、御子のために!」

仲間たちに、急かされる。


ユウマは、震える手で、弱々しく光る宝玉を、自分の胸に、ぎゅっと、抱きしめた。

(げ、元気になれ…! 俺は、死にたくないけど、お前は、元気になれ…!)


その、あまりにも、自己中心的で、しかし、偽りのない、親としての(?)願い。

その瞬間、ユウマの身体から、温かい、柔らかな光が、宝玉へと、流れ込んでいくのを感じた。

それは、決して、不快な感覚ではなかった。

むしろ、自分の一部が、新たな命と、繋がっていくような、不思議な、充足感があった。


ユウマの腕の中で、宝玉は、再び、力強い、翠色の輝きを取り戻した。

中の芽も、ぴん、と、元気を取り戻している。


「おお…!」

「光が、戻った…!」


仲間たちの、安堵の声。


ユウマは、腕の中で、満足げに輝く、宝玉(我が子)を、見つめていた。

ふてくされていた、彼の心の中に、ほんの、ほんの少しだけ、今まで感じたことのない、温かい感情が、芽生え始めていた。


それは、もしかしたら、『父性』と呼ばれるものだったのかもしれない。

もちろん、ユウマ本人は、断固として、認めたくはなかったが。

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