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女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


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第5話:英雄の晩餐は針の筵

ユウマが案内されたのは、村の中央広場に設けられた、盛大な宴の席だった。

村で飼っている家畜を丸焼きにし、ありったけの果物とパン、そして安物だが芳醇な香りのエールが樽で用意されている。村人総出で、伝説の召喚士(という名の、ただの元コンビニ店員)を歓迎してくれていた。


「さあさあ、召喚士様! こちらの上座へ!」


村長に促され、ユウマは一番良い席に座らされた。目の前には、湯気の立つ肉料理の数々。

空腹が限界だったユウマは、他の全てを思考から追い出し、ただ目の前の食事に集中しようと決めた。


(そうだ、今は食うことだけ考えよう。村の悩みとか、魔物とか、勘違いとか、全部後だ。まずは、食うんだ!)


ユウマが震える手でナイフとフォークを握った、その時。

スッ、とアリアが彼の隣に立ち、水差しに手をかざした。


「賢者様。旅の疲れを癒すため、聖なる力で杯を満たします」

「いや、普通の水でいいんだけど…」

ユウマの制止も聞かず、アリアが祈りを捧げると、ただの水が淡い光を放ち始める。ありがたいかもしれないが、今はそういう気分じゃなかった。


さらに、ユウマの背後には、仁王立ちのガガルが控え、周囲に鋭い視線を飛ばしている。村人がユウマに酒を注ごうと近づくだけで、「殺気!」と唸り、村人を震え上がらせていた。


そして、最も厄介なのがリリスだった。

彼女は当然のようにユウマの隣にぴったりと座ると、ユウマの皿から焼きたての肉を一切れつまみ、自分の口に運んだ。


「うん、毒は入ってないわね。美味しいわよ、ユウマ。はい、あーん」

「自分で食えるから!」


リリスはユウマの拒絶を全く意に介さず、彼の世話を焼き続ける。

この奇妙すぎる主従の光景を、村人たちは遠巻きに、ヒソヒソと噂していた。


「見ろ…召喚士様の従者の方々は、一切食事に手を付けられない…」

「きっと、召喚士様の魔力だけで満たされているに違いない…なんと神聖な…」

「あのお嬢さんは、召喚士様の奥方様なのだろうか? それにしては、雰囲気がまるで人間ではないようだが…」

「あの方、召喚士様が気絶なされた時、一瞬だけ姿が変わったように見えたぞ。きっと、高位の精霊か何かに違いない…」


当のユウマは、そんな村人たちの勘違いには気づかず、ただひたすらに食べ続けた。右からはアリアの祈り、左からはリリスの「あーん」、背後からはガガルの殺気を感じながら食べる食事は、最高級の料理のはずなのに、全く味がしなかった。


やがて、宴もたけなわになった頃。酔いの回った村長が、再びユウマに絡んできた。

「召喚士様! 例の鉱山の魔物の件ですが…!」

「……げぷっ」

満腹になったユウマは、眠気と戦いながら、気のない返事をする。


「その魔物は、どうやら『ロックゴーレム』という魔物でしてな。剣も魔法も一切効かん、頑丈なやつでして…」


(ゴーレムかあ…。ゲームでよくいるやつだな…。硬くて面倒なんだよなあ…)

ユウマは、前世のゲーム知識をぼんやりと思い浮かべていた。


「ただ、妙なことに、鉱夫が言うには、ゴーレムがいる広間の中央に、奇妙な水晶が光っているそうで…」


その言葉に、ユウマは無意識に呟いていた。

「……ああ、それ、本体のコアだろ。多分、そっちを壊せば一発だよ」


前世のゲームでは、お約束のパターンだった。ゴーレム本体は無敵だが、どこかにあるコアを破壊すれば、活動を停止する。ただのゲーマーの独り言。深い意味は、何一つない。


しかし。


その言葉を聞いた村長と、周りの村人たちは、息を呑んだ。


「コ…コア…!?」

「なんと! あの魔物の弱点が、本体ではなく別にあると、一瞬で見抜かれたぞ!」

「恐るべき慧眼…! 我々がひと月悩んだ謎を、一瞬で…!」


村長は、わなわなと震えながら、ユウマの手にすがりついた。

「召喚士様! どうか、そのお力で! 明日にでも、鉱山へ…!」


「ええ…」

ユウマは眠かった。面倒な話は、とにかく先延ばしにしたかった。

「明日…そうですね…。まあ、気が向いたら、様子を見るくらいは…しますよ…」


その、あまりにもやる気のない、先延ばしのための返事が。

村人たちの**『英雄への期待』という名のトリガーを引き、『概念誘導』**によって、神託のごとき宣言へと変換された。


村長は立ち上がり、村中へと高らかに宣言した。

「皆の者、聞いたか! 召喚士様は、明日、あの魔物にご裁断を下されるそうだ! まずは『様子を見る』という、なんと冷静で、なんと的確なご判断! 勝利は、もはや我らの手にある!」


「「「うおおおおおおおお!!」」」


村は、その日一番の歓声に包まれた。

ユウマは、エールの杯を呷りながら、明日という日が来なければいいのに、と本気で願うのだった。

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