表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/193

第四十四話 古代の森と、賢者の選択

宝玉が示す、古代樹の森。

一行がそこに足を踏み入れた瞬間、背後で感じていた王都の喧騒は、嘘のように掻き消えた。


天を突くほどの巨木が、幾重にも重なって空を覆い尽くし、昼間だというのに、森の中は、まるで夜のように薄暗い。地面には、淡い光を放つ苔やキノコが自生しており、幻想的な雰囲気を醸し出している。

しかし、その美しさとは裏腹に、空気は、濃密な魔力で満たされ、肌をぴりぴりと刺すようだった。


「す、すげえ…。なんだ、この森は…」

ユウマが、その圧倒的な光景に、息を呑む。


「『エルヘイムの大森林』。神代の時代から、人の手が一切入っていない、精霊たちの聖域よ」

アイが、どこか誇らしげに言った。ここでは、彼女が絶対的な専門家だ。

「そこらの魔物なんかより、この森そのものが、一番ヤバいかんね。普通の人間なら、一歩入っただけで、方向感覚狂って、二度と出られないし」


「フン! 我が主君の進む道を、ただの木々が阻むことなどできぬわ!」

ガガルが、自信満々に胸を張る。


アイは、そんなガガルを、鼻で笑った。

「まあ、見てななって。この森の、本当のヤバさを、すぐ思い知るから」


宝玉の光を頼りに、一行は、獣道すらない森の奥深くへと進んでいく。

数時間、歩き続いただろうか。

やがて、彼らの目の前に、二つの分かれ道が現れた。


一つは、木漏れ日が差し込み、美しい花々が咲き乱れる、広く、開けた道。心地よい風が、甘い香りを運んでくる。

もう一つは、茨が絡みつき、ぬかるんだ地面が続く、見るからに険しく、不気味な道。


そして、ユウマの手の中にある『精霊の宝玉』が放つ光は、寸分の迷いもなく、後者の、不気味な道を指し示していた。


「……こっち、か」

ユウマが、げんなりとした顔で呟く。


その選択に、ガガルが、待ったをかけた。

「お待ちください、ユウマ様! これは、どう見ても罠ですぞ! 明らかに、あちらの開けた道が、正解にございます!」


「そうですわ、賢者様」

アリアも、不安げに顔を曇らせる。

「これほど強い魔力に満ちた森です。宝玉の光が、何らかの幻術で、惑わされているのかもしれません…」


「いや、でも、石はこっちだって…」

ユウマが、弱々しく反論するが、二人の剣幕に、声が小さくなる。

どうしよう。もし、本当に宝玉がバグってたら…。こっちの道を進んで、とんでもないことになったら、俺のせいに…。


ユウマの**『決断への恐怖』と『ただ石の言う通りにしてほしいという願い』。

そして、アイの『主のナビは絶対』という揺るぎない信仰**。

それらが、ガガルとアリアの**『賢者に正しい道を選んでほしい』という期待**をトリガーとして、『概念誘導』を発動させた。


ユウマは、パニックのあまり、ただ、宝玉が指し示す、不気味な道を、震える指で、指さした。

「…こっちだ!」


彼が、そう叫んだ、瞬間だった。


広く、美しいはずだった、もう一方の道。

その空間が、一瞬、ぐにゃり、と歪んだ。

咲き乱れていた美しい花々は、人を喰らう巨大な食人植物の顎へと姿を変え、心地よかったはずの風は、魂を凍らせるような、怨嗟の呻き声へと変わった。

それは、一瞬だけ見えた、強力な幻惑魔法の、真の姿だった。


「「なっ…!?」」

ガガルとアリアは、今、自分たちの目の前で起こった、ありえない光景に、絶句した。


幻は、すぐに元の美しい光景に戻った。しかし、二人の額には、脂汗が滲んでいた。もし、あちらの道を選んでいたら、今頃…。


「…も、申し訳ございません、ユウマ様!」

ガガルが、その場にひれ伏した。

「このガガルの浅はかな目では、森が仕掛けた幻術を見抜けませんでした! 全てを見通しておられた、ユウマ様の慧眼、恐れ入ります!」


「わ、わたくしもです…!」

アリアもまた、恥じ入るように、頭を下げた。


アイは、そんな二人を見て、「だから言ったじゃん」と、得意げに鼻を鳴らした。

「主サマのナビは、絶対なんだって。うちらみたいなハンパ者が、口出すとか、マジありえないから」


(…え? 俺、なんかした?)


ユウマは、ただ、石が指した方を、指さしただけだった。

幻が見えたわけでも、見抜いたわけでもない。


しかし、結果として、彼は、またしても、仲間たちの絶対的な信頼を、その身に集めてしまった。

彼は、自分が、とんでもなく幸運な(あるいは、不運な)体質であることに、まだ、気づいていなかった。


一行は、ユウマの(全くの無自覚な)ファインプレーによって、再び、正しい道へと、足を進める。

大森林の試練は、まだ、始まったばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ