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女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


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第四十一話 開戦の狼煙と、賢者の逃亡宣言

居酒屋から、新たな仲間(と思い込んでいるエルフ)のアイを連れて、星見の塔へと戻った翌朝。

ユウマの心労とは裏腹に、塔の中は穏やかな空気に包まれていた。アイは、ユウマの傍らから片時も離れず、まるで聖遺物でも見るかのように、うっとりと彼の懐にある『精霊の宝玉』の気配を感じている。

その、偽りの平穏を破ったのは、執事長のロデリックが、音もなく差し出した一枚の報告書だった。

「大賢者様。宰相閣下が、動かれました」

ロデリックは、淡々と報告を始める。

「昨夜、我々が捕らえた暗殺者の長の『自白』を大義名分とし、ベルフェゴール侯爵、及びその派閥の貴族十数名に、国家反逆罪の容疑で逮捕状が執行されました。すでに、その半数以上が、王宮警備隊によって拘束されたとのことにございます」

「…え」

ユウマの顔から、血の気が引いた。

自分の名前が、血生臭い政治粛清の引き金になってしまった。その事実が、重くのしかかる。

だが、ロデリックの報告は、そこで終わりではなかった。

「しかし、首謀者であるベルフェゴール侯爵は、寸でのところで王都を脱出。手勢の私兵を率いて、東の国境方面へと逃亡した模様です」

「東…? それって…」

「はい。隣国、ヴァルトリア帝国との国境にございます」

その言葉の意味を、ユウマ以外の全員が、瞬時に理解した。

「なるほど。国を売るか」

リリスが、面白そうに呟く。

「ヴァルトリア帝国は、かねてよりこの国を狙う、好戦的な軍事国家。ベルフェゴール侯爵は、帝国に寝返り、その軍勢を国内に引き入れて、王位を簒奪するつもりね」

「…つまり」

ユウマの声が、震えた。

「はい」

ロデリックは、静かに、しかしはっきりと告げた。

「内乱は、避けられませぬ。そして、それは、帝国を巻き込んだ、大規模な戦争へと発展いたしましょう」

戦争。

その一言が、ユウマの思考を完全に停止させた。

人が、国が、殺し合う。そして、その大義名分は、自分。『賢者ユウマ』を奉じる、王と宰相。それに反発し、国を売った貴族。

どちらが勝っても、負けても、流れる血の責任の一端は、自分にある。

(冗談じゃない…!)

その日の午後。

ロデリックが持ってきた、街の掲示板に張り出されたという布告の写しを見て、ユウマの心は、完全に折れた。

そこには、国王の名で、高らかにこう記されていた。

『国賊ベルフェゴールを討て! 王国大賢者ユウマ様の御名のもとに、正義の鉄槌を下すべし! 集え、勇士たちよ! これは、国を救うための聖戦である!』

「聖戦…俺の名前の…」

ユウマは、その紙を、わなわなと震える手で握りしめた。

そして、顔を上げ、仲間たちに向かって、魂の底から、叫んだ。

「もう、知らない!!」

「ゆ、ユウマ様!?」

「こんな国、こっちから願い下げだ! 戦争でも何でも、好きにすればいい! 俺は、逃げる! 絶対に、この国から、逃げ出してやる!!」

それは、王国大賢者でも、救世主でもない。

ただの、佐藤ユウマという、一人の臆病な青年の、心の叫びだった。

この、あまりにも情けない逃亡宣言。

しかし、それを聞いた仲間たちは、またしても、それぞれの壮大な勘違いを繰り広げる。

「な、なるほど…! 我が主君は、この国を見限られたのだ! 人間同士の矮小な争いに関わるまでもないと、次なる舞台へと向かわれるおつもりなのだな!」

ガガルは、ユウマの「逃亡」を「新たなる覇道への転進」と解釈した。

「賢者様…。そうですよね。武力で国を救っても、人々の心に憎しみが残るだけ。貴方様は、もっと大きな、真の平和のための道を探しに、旅立たれるのですね…!」

アリアは、「逃亡」を「高次元の救済活動への移行」と解釈した。

「へえ、面白いじゃない。泥沼の戦争ごっこに付き合うより、よっぽど賢明な判断だわ。で、どこに逃げるっていうの?」

リリスだけは、ユウマの意図を正確に理解し、楽しそうに問いかけた。

「どこでもいい! とにかく、戦争のない、静かな場所に…!」

ユウマが、そう叫んだ、その時。

ずっと黙って話を聞いていた、新入りのエルフ、アイが、静かに口を開いた。

その瞳には、使命感に満ちた、強い光が宿っていた。

「…主よ。一つだけ、いかなる人間の軍隊も、決して辿り着けぬ、聖域がございます」

彼女は、ユウマの懐を、真っ直ぐに見つめて言った。

「貴方様が持つ『精霊の宝玉』。それこそが、道を開く、唯一の鍵。

我が故郷、エルフの隠れ里。そして、そのさらに奥にある、万物の始まりの地――**『精霊の国』**へ」

精霊の国。

その、ファンタジーの王道のような言葉が、絶望の淵にいたユウマの耳に、唯一の希望として、響いた。

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