表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/193

第二十七話 玉座の告白と王の天啓

王城へと向かう馬車の中は、異様な緊張感と期待感に満ちていた。

ガガルは来るべき「交渉」に備えて戦斧を磨き、アリアは王の魂が救われるようにと祈りを捧げ、リリスはこれから始まる最高のショーに胸を躍らせている。


その中心で、ユウマは一人、覚悟を決めていた。

(もう、演じるのは終わりだ。王様の前で、全部ぶちまけるんだ)


偽物であること。

何の力もない、ただの一般人であること。

全ては勘違いの連鎖でしかないこと。


それで処刑されるなら、それも仕方ない。

このまま、勘違いされた救世主として生きるより、ずっとマシだ。

それは、彼の人生最大にして、最後の賭けだった。


やがて馬車は、巨大な王城の正面玄関に到着した。

重々しい扉が開かれ、一行が足を踏み入れたのは、途方もなく広大な謁見の間だった。天井からは、星々を閉じ込めたかのようなシャンデリアが輝き、磨き上げられた大理石の床には、ずらりと並んだ王国貴族たちの姿が映っている。その視線すべてが、一身にユウマへと突き刺さっていた。


長い、長い絨毯の先。ひときわ高い玉座に、白髪の老王が静かに腰掛けていた。その威厳に満ちた姿は、国の歴史そのものを体現しているようだった。


ユウマたちは、玉座の前まで進み、膝をつく。

老王は、静かに、しかし全てを見透かすような瞳で、ユウマを見据えた。


「面を上げよ、賢者ユウマ」

王の声は、老いてなお、謁見の間に響き渡るほどの張りを持っていた。

「宰相が、貴公を『この国の病を癒す天啓そのもの』と評した。王都の民は、貴公を『我らが救世主』と呼んで、その名を讃えている。…余に、そなたの真の姿を見せてみよ」


真の姿。

ユウマは、ゴクリと喉を鳴らした。

これが、最後のチャンスだ。


彼は、ゆっくりと立ち上がると、謁見の間にいる全ての貴族、騎士、そして王に向かって、震えながらも、はっきりとした声で叫んだ。


「私は、偽物です!」


謁見の間が、水を打ったように静まり返る。貴族たちは顔を見合わせ、宰相セイファート公爵でさえ、驚きに目を見開いていた。


ユウマは続けた。

「賢者でも、聖者でも、救世主でもありません! 僕はただの、何の力もない一般人です! 全ては、何かの間違いで…! 大きな、大きな勘違いなんです!」


そして彼は、その場に勢いよく身を投げ出し、日本古来より伝わる、究極の謝罪と降伏の姿勢――土下座をした。


「ですから、どうか…! もう僕をそっとしておいてください! 故郷へ帰してください!」


完璧な告白。

完璧なまでの、自己否定。

これで、全てが終わるはずだった。


しかし、その瞬間、世界は、ユウマの最後の願いを、最も残酷な形で裏切った。


玉座に座る王の**『真の救いを求める渇望』。

謁見の間にいる全ての者たちの『伝説を目撃したいという欲望』。

それらが、ユウマの『偽物であるという告白』**をトリガーとして、『概念誘導』を、神の奇跡と見紛うレベルで発動させたのだ。


【ユウマの『偽物(無価値)』という概念が、王の『真実への渇望』によって、『本質(真理)』の概念へと反転・昇華される】


静寂の中、老王の口から、感嘆のため息が漏れた。


(…偽物…だと…?)


王の脳裏に、ユウマの言葉が、全く違う意味を持って響き渡っていた。


(この少年は、『私が偽物だ』と言っているのではない。『賢者』や『救世主』という称号こそが偽物なのだと、そう言っているのだ!)

(王、宰相、貴族、聖職者…! 我々が拠り所としている、その全ての権威や身分は、虚飾にすぎない『偽物』なのだと!)

(そして、その全ての『偽物』を脱ぎ捨て、ただの一個の人間としてひれ伏すことで、真の価値は、地位や名誉ではなく、その魂のあり方にあるのだと、その身をもって示している!)


それは、告白ではない。

国の頂点に立つ、全ての権力者たちに向けられた、痛烈な説法。

腐敗した権威を否定し、国家の『本質』を問い直す、革命の狼煙。


「……そうか」


ゆっくりと、老王が玉座から立ち上がった。その瞳には、先ほどまでの疲れの色はなく、若い頃のような、力強い光が宿っていた。


「そうであったか…。余は、王という『偽物』の衣を纏い、国の病から目を背けておった。宰相も、貴族たちも、皆そうだ。そなたの言う通りだ」


王は、玉座から降りると、土下座したままのユウマの前に立ち、その肩に、そっと手を置いた。


「面を上げよ、賢者ユウマ。…いや、我が友よ」

王の声は、慈愛と、そして絶対的な決意に満ちていた。


「そなたの『告白』、確かに受け取った。余は、王という『偽物』を捨て、この国を立て直すことを、今、ここに誓おう。そして、そなたには、そのための道標となってもらいたい」


(……へ?)


土下座したまま顔を上げたユウマが見たのは、何かに目覚めたように、神々しいまでの覇気を放つ老王の姿だった。

そして、その周りで、感極まったように涙を流し、一斉にひれ伏す貴族たちの姿だった。


彼の最後の賭けは、最悪の形で、大成功してしまった。

彼は、処刑されるどころか、この国の王に、革命の思想的指導者として、完全に認められてしまったのだ。


もう、逃げ場も、誤解を解く術も、何も残ってはいない。

ユウマの運命は、彼が最も望まない形で、この国の歴史と、完全に一つになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ