第百九十三話 未来の否定と崩壊する聖域
『…分かったか過去の僕よこれが僕たちの限界だ』
『だから…もう進むな…』
未来のユウマは冷たい虚無の瞳で金縛りにあったユウマを見据えた
その手はゆっくりとユウマの胸元へ伸ばされる
全ての元凶であるチビすけの宝玉へ
『この力さえなければ…お前は…絶望せずに済んだ…』
(やめろ…!)
ユウマは叫んだ心の中で
未来の自分が見せる絶望のビジョンが脳裏に焼き付く
仲間たちの亡骸
燃え落ちる世界
たった一人虚無の中に立ち尽くす自分自身の姿
(こんな未来…)
(こんなもののために…ガガルさんを助けて…健太郎さんに会って…!)
未来のユウマの手がチビすけに触れようとしたその瞬間
ユウマの心の奥底で何かが弾けた
恐怖でもない悲しみでもない
それは健太郎との修行で掴みかけた彼自身の『理』
『守りたい』というただ一つの想い
(ふざけるな!)
ユウマの心の叫びが概念となって暴発した
【ユウマ(過去)の『守る(未来への希望)』という概念がユウマ(未来)の『終わらせる(過去への絶望)』という概念と激突する】
ズンッ!
金縛りが解けた!
いやユウマ自身が未来のユウマの理を弾き飛ばしたのだ!
未来のユウマが驚愕に目を見開く
「(…馬鹿な…今の僕が…僕の理を…?)」
「俺はあんたにはならない!」
ユウマはチビすけを強く抱きしめ叫んだ
「未来がどうなるかなんて知らない! でも俺はこいつらを守るって決めたんだ!」
「あんたは諦めた俺だ! 俺は諦めない!」
その言葉は未来のユウマの心の核を貫いた
彼が失ってしまったもの
彼が忘れてしまったもの
その眩しさに未来のユウマは苦悶の表情を浮かべた
『ぐ…あああああああああっ!!』
未来のユウマの身体が激しく明滅し始める
二つの相反する『ユウマ』の理がこの狭い空間で衝突し
魂の道の淀みが存在の矛盾に耐えきれず崩壊を始めたのだ!
天井が落ち床が抜け灰色の靄が嵐のように吹き荒れる
「ユウマ様!」
仲間たちも拘束が解け慌ててユウマの元へ駆け寄る
『…そうか…まだお前は…』
未来のユウマは苦痛の中で何かを悟ったように笑った
その瞳には一瞬だけ穏やかな色が戻っていた
『…行け…』
彼は崩れ落ちる祭壇の奥を指さした
そこには灰色の混沌とは異なる確かな『道』が見えていた
『だが…忘れるな…力は…お前を…蝕む…』
その言葉を最後に未来のユウマの姿は光の粒子となって崩れ落ち
崩壊する空間の闇の中へと消えていった
ユウマは呆然とその光景を見つめていた
未来の自分との邂逅そしてその警告
それは彼の心に深く重い楔を打ち込んだ
崩壊は止まらない
遺跡全体が崩れ落ちようとしている
「行くぞ!」
ユウマは仲間たちに叫んだ
未来がどうであれ今は進むしかない
仲間たちと共に
一行は未来のユウマが示した唯一の『道』
崩壊する原初の祭壇から脱出すべく
再び灰色の混沌の中へと駆け出した
未来の自分が残した不吉な言葉を胸に抱きながら




