第百九十二話 未来の遊戯と過去の理
『さあ…戦えよ…僕の過去たち』
未来のユウマは心底楽しそうに言った
『お前たちのその浅い理で僕を止められるか見せてみろ』
「貴様何者だ!」
ガガルが戦斧を構え真っ先に突進する!
「ユウマ様を愚弄する痴れ者め!」
『懐かしいなガガル』
未来のユウマは最小限の動きでその突撃をいなす
まるでガガルの次の動き全てが分かっているかのように
そしてガガルの耳元で囁いた
『お前の力はあまりにも直線的すぎる! ベヒーモスの膂力も女王の誇りもただ振り回すだけでは宝の持ち腐れだぞ?』
その言葉はガガルの魂の最も深い部分を揺さぶり動きを鈍らせた
「次は貴女かアリア」
未来のユウマは聖なる光を纏う天使へと視線を移した
『その祈りは美しい…だが本当に世界を救うと信じているのか? それともただの自己満足か?』
「なっ…何を…!」
アリアは動揺しながらも浄化の光を放つ!
しかし未来のユウマはその光に手をかざすだけだった
『貴女の光は優しい…だが優しさだけでは何も守れない…時にはその光ですら誰かを傷つけるのだということをまだ知らないのか?』
光は未来のユウマに届く前に霧散した
アリアの信仰そのものに疑問を投げかける言葉が彼女の力の理を乱したのだ
『アイお前は相変わらず一点しか見ていないな』
未来のユウマは弓を引き絞るエルフの少女を見た
『その目は確かに正確だ…だが世界はもっと広く複雑だろう?』
アイが矢を放つ!それは必中の軌道を描くはずだった
しかし未来のユウマはまるで空間を滑るようにその矢を回避する
『もっと自由になれ縛られるな…まあお前にはまだ早いか』
彼の言葉と動きはアイの集中力を完全に乱し次の矢をつがえさせなかった
最後に未来のユウマはリリスと向き合った
その瞳には初めて明確な敵意にも似た光が宿った
『…リリスお前だけは…少し骨が折れそうだな』
「ふん言ってくれるじゃない未来のボウヤ」
リリスは闇の魔力を凝縮させる
「どれだけ強くなったか見せてみなさいよ!」
闇の刃が未来のユウマに襲いかかる!
しかし彼はそれを片手で受け止めた闇が彼の手に吸い込まれていく
『その闇は浅いな…本当の絶望の色を知らない闇だ』
彼はリリスの耳元で囁いた
『お前が捨てた過去…お前が殺したはずの感情…それがお前の力の限界だ』
「!!」
リリスの表情が初めて凍りついた
未来のユウマは彼女の最も深い秘密を知っているかのような口ぶりだった
ガガルアリアアイリリス
それぞれが持つ力の理戦い方の癖そして心の弱さ
その全てを未来のユウマは完璧に見抜き的確に突き崩していく
それは圧倒的な力による蹂躙ではなかった
かつての仲間への歪んだ愛憎と彼らの限界を知るが故の残酷な遊戯だった
『…どうした? これで終わりか?』
未来のユウMAは無力化された仲間たちを見下ろし心底つまらなそうに言った
そして彼はゆっくりと動けないユウマへと向き直った
その瞳には再びあの冷たい虚無の色が戻っていた
『さあ…過去の僕よお前自身と向き合う時間だ』
ユウマは金縛りにあったまま戦慄していた
未来の自分の圧倒的な力そしてその歪んだ精神
仲間たちが次々と打ちのめされる様をただ見ていることしかできなかった
そして今その矛先が自分自身へと向けられようとしていた




