第百九十一話 忘れられた聖域と未来の枷
チビすけの放つ虹色の光
それを頼りに一行は灰色の靄の中を進んだ
靄が晴れ目の前に現れたのは宙に浮かぶ巨大な石造りの遺跡
『原初の祭壇』だった
一行は恐る恐るその浮遊する遺跡へと足を踏み入れた
空気は澄み切り疲れた身体が癒えていく
遺跡の中心には巨大な祭壇があった
その時
祭壇の奥影の中からゆっくりと一つの人影が現れた
ローブを目深に被った人物
その存在感だけが異常だった
『…何者だ…? 我が冥界の記録にも存在しない…』
エンマの声が警戒を強める
ガガルたちが即座に武器を構える
ローブの人物はゆっくりとフードを外した
その下に現れた顔に一行は息を呑んだ
そこにいたのは
まぎれもないユウマ自身だった
しかし今の彼よりも顔には疲労と苦悩の痕が深く刻まれ
瞳の奥には諦めと虚無の色が宿っている
そしてその全身からは常軌を逸した概念の力が微かに漏れ出ていた
「俺…?」
ユウマは自分の分身と対峙し愕然とする
未来のユウマは今のユウマを真っ直ぐ見つめると
静かに口を開いた
その声は今のユウマよりも数段深く重かった
『ようこそ…そして…止まれ』
『これ以上進んではならない』
未来のユウマはそう告げると
ゆっくりと右手を差し出した
その掌から放たれた無形の概念の力が
まず現在のユウマとチビすけだけを正確に狙った!
「うっ…!」
ユウマの身体が金縛りにあったように動かなくなる
腕の中のチビすけの宝玉もまるで鉛に包まれたかのように光を失った
二人だけが完全に無力化される
『お前たちはまずそこで見ていろ』
未来のユウマは冷徹に言った
『過去の僕よ…お前がこれから失うものの大きさをその目に焼き付けるがいい』
「ユウマ様!」
「主サマ!」
仲間たちがユウマを守ろうと未来のユウマの前に立ちはだかった
その光景を見て
未来のユウマの表情が歪んだ
それは狂気ではない深い悲しみ
その瞳の奥にはわずかに涙が滲んでいた
『…ああそうだ…懐かしいなガガル』
『久しぶりだアリアアイ…そしてリリス』
『変わらないな…お前たちは…まだ…』
未来のユウマは悲痛な表情で
かつての仲間たちとの歪んだ再会を始めようとしていた




