第百八十五話 地下迷宮と監視の目
隠し通路は長く暗かった
湿った空気とカビの匂い
時折遠くからネズミか何かの鳴き声が聞こえるだけ
一行はリリスの灯す闇の炎を頼りに黙々と進んだ
通路は複雑に入り組みまるで迷宮のようだった
いくつもの分かれ道や行き止まり
壁には意味不明な古代文字や奇妙な紋様が刻まれている
古い罠の残骸らしきものも散見された
「…マジでどこに繋がってんだよここ…」
アイが不安げに呟く
「間違いなく城の地下深くだわ」
リリスは冷静だった
「おそらく旧時代の遺物ねウィルナス王ですら把握していない秘密区画かもしれないわ」
どれくらい歩いただろうか
通路は徐々に下り坂になり
やがて広大な空間へと出た
そこは巨大な地下空洞だった
天井からは鍾乳石のように太い配管やケーブルが何本も垂れ下がり
床にはところどころ水たまりができている
そして奥には巨大な機械のようなものがぼんやりと見えた
まるで忘れられた古代文明の遺跡のよう
「…なんだここは…」
ガガルが警戒しながら周囲を見回す
その時だった
カシャ…カシャ…
複数の金属質な音が空洞に響いた
暗闇の中から赤い光点がいくつも現れる
それは先ほど塔で遭遇したオートマタと同型のものだった!
しかもその数は十体以上
「チッ! まだいたのか!」
ガガルが戦斧を構える
アイも矢をつがえアリアも杖を構える
しかしオートマタたちは攻撃してこなかった
ただ一行を無機質な赤い単眼で見つめているだけ
まるで観察するように
「…様子がおかしいわ」
リリスが眉をひそめる
「あれは警備用じゃない…監視用よ」
リリスの言葉通りオートマタたちは一行を包囲するように距離を取り始めた
逃げ場はない
そして空洞の奥
巨大な機械のようなものが起動する音と共に
その表面に巨大な映像が映し出された
そこに映っていたのは
豪華な寝台に横たわるユウマの姿だった!
彼は眠っているようだがその表情はどこか苦しげだ
そして彼の周りにはローブを着た魔術師たちが何人も立ち
様々な器具を使ってユウマの身体を調べている様子が映し出されていた
「ユウマ様!」
「主サマ!」
仲間たちの声が上がる
映像はユウマの寝顔にズームアップした
そして無機質な合成音声が空洞に響き渡った
「警告スル侵入者諸君」
「対象『賢者ユウマ』ハ現在厳重ナル管理下ニアル」
「彼ノ精神安定ノタメ刺激ヲ与エル行為ハ禁止サレテイル」
「速ヤカニ退去セヨ」
「サモナクバ実力ヲモッテ排除スル」
それはウィルナス王による監視システムだった
ユウマの『破損』状態を解析し同時に外部からの干渉を防ぐための
巧妙で冷徹な檻
「ふざけるな!」
ガガルが叫ぶ
「ユウマ様をモルモットのように扱いおって!」
「どうしましょう…!」
アリアが狼狽える
下手に手を出せばユウマに危険が及ぶかもしれない
一行は再び手詰まりだった
ユウマの居場所は分かった
しかし厳重な監視システムに行く手を阻まれる
彼らはこの地下迷宮でどう動くべきか
決断を迫られていた




